本ページでは、節税対策をする上で大切になる「収入」と「所得」の違いをわかりやすく紹介します。
また、収入や所得にならないものにはどのようなものがあるのか?についても、ライフプランやリタイアメントプランを考慮して紹介します。
はじめに、所得税や住民税をできる限り少なくしたいと感じている人は多いと思います。
このとき、節税対策として大切なことは、所得を税法に則っていかに合法的に減らすことができるのか?がポイントです。
目次
【はじめの一歩】収入と所得の違いとは?
まずは、読者さんが気になっている収入と所得の違いについて紹介します。
「収入」と「所得」という言葉は同じ意味のように使われることがありますが、税法上、収入から必要経費を差し引いたもの、つまり「もうけ」のことを「所得」と呼んでいます。
出典:国税庁 No.2011 課税される所得と非課税所得 所得とはより引用
国税庁では、所得について「もうけ」のことだと解説しています。
とはいえ、収入と所得の違いをもっとわかりやすく知りたいと思う人もおられるでしょう。
そこで、次では源泉徴収票を例に収入と所得の違いを紹介します。
【給与をもらっている人】源泉徴収票で収入と所得の違いを確認する方法
会社員や公務員をはじめ、アルバイトやパートの人は、年末調整を終えたり退職すると勤務先から「給与所得の源泉徴収票」をもらいます。
この源泉徴収票を見ると収入と所得の違いを簡単に確認することができます。
・収入:600万円(源泉徴収票の支払金額に記載されている金額)
・所得:436万円(源泉徴収票の給与所得控除後の金額に記載されている金額)
あなたは1年間で給料や賞与(ボーナス)など合計で600万円もらいましたね!
この600万円に対する「もうけ=所得」は436万円です。
ということ
【給与所得者の必要経費?】給与所得控除額と計算方法
前項の例で、収入金額(いわゆる年収)600万円に対して、なぜ所得が436万円になるのか?気になる人もおられるでしょう。
これは、給与所得436万円を導くための計算式が税法で定められているからです。
収入金額(源泉徴収される前の金額) – 給与所得控除額 = 給与所得の金額
出典:国税庁 No.1400 給与所得 計算方法・計算式より引用
なお、上記計算式にある「給与所得控除額」は、収入金額(年収)によって、別途以下の計算式が定められています。
出典:国税庁 No.1410 給与所得控除 令和2年分以降より引用
今回の例では、収入金額(年収)が600万円ですので、上記計算式(赤枠箇所)にあてはめると給与所得控除額は以下のように計算されます。
これを基に、先に紹介した給与所得の計算式にあてはめます。
このように税法で定められている計算方法に基づいて「所得=もうけ」は算出されているわけです。
【掛け持ちの場合の注意点】複数の企業などから給与の支払いを受けている場合の収入金額
給料をもらっている人の中には、本業のほかに副業としてアルバイトやパートも行っている人や複数のアルバイトなどを掛け持ちしている人もいると思います。
このように、複数の企業などから給与の支払いを受けている場合、それぞれの収入金額を合算して給与所得控除額を計算しなければなりません。
以下、簡単なイメージを計算の流れに沿って紹介します。
1.A社から受けた年間の給与:100万円
2.B社から受けた年間の給与:50万円
3.年間の給与(収入金額)合計:150万円(1+2)
4.給与所得控除額:55万円(先に紹介した給与所得控除額の計算式を参照)
5.給与所得:95万円(3-4)
【節税対策で大切なこと】1年間の合計所得金額がいくらなのか?を知る
ここまで収入と所得の違いについて、給与所得者を例に紹介しました。
ちなみに、所得税や住民税を少なくするための節税対策で大切なことは、1年間の合計所得金額(1年間のもうけ)がいくらなのか?を知るところにあります。
なぜ、1年間の合計所得金額を知ることが大切なのか?
それは、税法で認められているさまざまな所得控除(後述します)を受けるための要件に「所得がいくらのか?」といった所得要件が設けられているケースが多いからです。
みなさんに馴染み深い「配偶者控除」「扶養控除」などは、1年間の合計所得金額によって受けられたり、受けられなかったりしますし、「医療費控除」は、合計所得金額によって計算方法が異なるなどさまざまな要件があります。
そのため、受けられる所得控除をより確実に受けるためには、所得がいくらなのか?1年間の合計所得金額はいくらなのか?を知る必要があるわけです。
【所得の種類は10種類】1年間の合計所得金額は、10種類の所得をすべて合算した金額
勤務先から給料や賞与(ボーナス)の支給を受けている人は、給与所得があることになります。
実のところ、所得にはさまざまな種類があり、その種類は全部で10種類に分けられます。
所得税法では、所得の種類を利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得および雑所得の10種類に分類して、それぞれの所得の内容と計算方法を定めています。
出典:国税庁 No.2011 課税される所得と非課税所得 所得とはより引用
上記、国税庁の解説を見ますと、10種類に分けられる所得は、それぞれ計算方法が定められていることがわかります。
つまり、1年間の合計所得金額(1年間のもうけ)を知るためには、その人が1年間でどのようにいくらの収入を得て、いくらの所得があったのか?をそれぞれ判定して計算しなければなりません。
【所得控除の種類は15種類】節税対策に欠かせない所得控除について
所得控除は、それぞれの人が置かれている事情を考慮して税負担が調整される控除のことをいいます。
つまり、人によって受けられる所得控除と受けられない所得控除があることになります。
ただし、本来ならば受けられる所得控除を知らなかったことや忘れていたことが理由で受けなかった場合、所得税や住民税の負担が増加してしまいます。
そのため、所得控除の種類やどのような場合に受けられるのか?を知ることが、節税対策に欠かせません。
所得控除の種類は次のとおりです。
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
出典:国税庁 No.1100 所得控除のあらまし 計算方法・計算式より引用
所得控除で何か気になるものがあれば、控除名を検索して内容確認されるとよいでしょう。
【収入や所得にならないもの】ライフプランやリタイアメントプランを考慮して紹介
所得税や住民税を計算する際、実際に受け取ったお金が収入や所得にならないものがあります。
これを「非課税所得」といいます。
私たちが日常生活を送る中で、実際に得た収入が所得になるのか?気になる場合もあると思います。
このようなことを踏まえ、ここでは、ライフプランやリタイアメントプランを考慮して、特に関係のありそうなものを幅広く紹介していきます。
生活に必要なものを売却したことによって得た収入
私たちが日常生活の中で使用する家電や衣服を買い替えた場合や不要になった場合、これらの物を売却することがあります。
たとえば、リサイクルショップへ売却したり、フリーマーケットやネットオークションで売却したり、個人間で売買するなどがわかりやすいでしょう。
これらの方法で売却して得たお金は、非課税所得に該当し、税金がかかることはありません。
出産手当金や育児休業給付金
女性が妊娠したことによって、産前産後休暇を取得した場合、出産手当金をもらうことがあります。
また、産休が終えますと、引き続き育児休暇を取得し育児休業給付金をもらうこともあります。
これらの受け取ったお金も非課税所得に該当し、税金がかかることはありません。
なお、妊娠や出産をした場合、大きなライフイベントが発生したことによって、節税対策をすることができる場合があります。
具体的には、配偶者控除・配偶者特別控除・医療費控除があげられます。
病気やけがで勤務先を休んで受け取った傷病手当金・医療保険金
大きな病気や大きなけがによって仕事を休みますと、給料の支給がされないことがあります。
このとき、受け取った傷病手当金は非課税所得に該当し、税金がかかることはありません。
また、加入している医療保険やがん保険などがあり、保険金を受け取った場合、この受け取った保険金も非課税所得に該当します。
NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAで得た利益
NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAといった、いわゆる「少額投資非課税制度」を活用して得た利益は、非課税所得に該当します。
そのため、受け取った利益に税金がかかることはないほか、所得税の確定申告をする必要もありません。
配偶者と死別することによって受け取った遺族年金
配偶者と死別することによって受け取った遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金など)は非課税所得に該当します。
特に、両親と一緒に日常生活を送っている人で、遺族年金を受け取っている親がいる場合は、扶養控除に注意が必要です。
当事務所の過去の相談事例において、遺族年金が収入(所得)になると勘違いしていることで扶養控除を受けていなかったというものがあります。
また、世帯が異なるからといった理由で扶養控除を受けていなかったというものもありました。
なお、一緒に住んでいる家族が障害を負ってしまった場合や身体障害者手帳の交付を受けた場合などがあったときは、障害者控除を受けられる可能性が高くなります。
こちらも当事務所の過去の相談事例において多くなっており、心当たりのある人は節税対策につながるため、合わせて以下の記事を確認されることをおすすめします。
自然災害や火災・交通事故などによって損害を受けた場合に受け取った損害保険金や損害賠償金
地震や台風などの自然災害や火災・交通事故などによって損害を受けた場合、これらの理由によって受け取った損害保険金や損害賠償金は非課税所得に該当します。
これらの損害は、偶発的なものではありますが、特に、自然災害や火災による損害を被った場合、雑損控除によって節税対策を図れることがあります。
住宅ローンを抱えている人で、住宅に損害が生じて住宅ローン控除の取り扱いがどのようになるのか?気になる人にとっても合わせて読み進めることをおすすめしたい記事です。
なお、交通事故によって損害を受けた場合は、雑損控除を受けることはできません。
【おわりに】節税対策をファイナンシャルプランニングと考える
本ページでは、収入と所得の違いについて紹介し、ファイナンシャルプランニングを考慮した中で使える節税対策も紹介しました。
私たちが所得税や住民税の節税対策において、大切なことは、1年間の合計所得金額を知り、所得控除をもらさずに受けることです。
特に、普段と異なるライフイベントが発生したときは、節税が図れる可能性は大いに高まります。
10種類の所得や15種類の所得控除を紹介し、ご自身で判断することが不安という人もおられるでしょう。
そのようなときは、将来のライフプランやリタイアメントプランを改めて考えることも含め、当事務所へ一度ご相談されてみることをおすすめします。
節税対策は、その年だけではなく、長く効果を得られるものもあるほか、過去に納めすぎてしまった税金を戻してもらう手続きもあります。
ただ、当事務所としては、実際に相談されるお客様からヒアリングをさせていただき、お客様の基本情報がわからなければ案内することはできません。
当事務所は、税金だけではなくライフプランやリタイアメントプランにかかるさまざまなお金の相談に応じております。
また、お客様にとって役立つ可能性のある情報も発信しておりますので、本ページで紹介した関連記事を含め、いろいろと目通しいただければと思っています。
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