本ページでは、医療費控除で節税対策をするにあたり、知っておきたいポイントを独立系FPの相談経験と主観を踏まえて紹介します。
なお、本ページの内容は令和4年度の税法に基づいております。
はじめに、国税庁が公開しているタックスアンサーや質疑応答集には、ファイナンシャルプランニングに役立つ情報が多く公開されています。
これらに目通ししたとき、広く多くの人が使える医療費控除について、現実的で有意義な情報があると感じました。
そこで本ページでは、医療費控除で節税対策をするために知っておきたいポイントを私自身のFP相談対応経験や主観を踏まえて幅広く紹介していきます。
目次
【注意点】本ページの見出しで留意していただきたいこと
本ページを読み進めるにあたり、まずは本ページの見出しで留意していただきたいことは以下の通りです。
・医療費控除の対象になる医療費には「対象になるもの」と「対象にならないもの」があります
・見出し内容がすべて医療費控除の対象になるものではありません
薬局・スーパー・コンビニなどで購入した「かぜ薬」の購入費用
私たちが日常生活をする中で、かぜをひいて体調を崩すこともあります。
このとき、薬局・スーパー・コンビニなどで購入した「かぜ薬」の購入費用は医療費控除の対象になるのでしょうか?
【照会要旨】
薬局や薬店などで市販されているかぜ薬は、医療費控除の対象になりますか。医師の処方や指示がある場合に限られますか。
【回答要旨】
医師の処方や指示がなくても医療費控除の対象となります。
出典:国税庁 かぜ薬の購入費用より引用
FP相談でよくあること
当事務所で相談されるお客様の中には、薬局やスーパーなどで市販されているかぜ薬が医療費控除の対象にならないと思われている人も多いです。
そのため、これらの店舗で購入したかぜ薬のレシートや領収書を破棄しているケースが多く見受けられています。
薬局・スーパー・コンビニなどで購入した「漢方薬やビタミン剤」の購入費用
かぜ薬の購入費用は医療費控除の対象でしたが、漢方薬やビタミン剤の購入費用は医療費控除の対象になるのでしょうか?
【照会要旨】
漢方薬やビタミン剤の購入費用は、医療費控除の対象になりますか。
【回答要旨】
治療又は療養に必要な場合には、医療費控除の対象となります。
医薬品の購入費用で医療費控除の対象となるものは、治療又は療養に必要なものであることが必要です(所得税法施行令第207条)
漢方薬やビタミン剤は、治療又は療養のために効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があり、これらの購入費用について医療費控除を受けるためには、その漢方薬やビタミン剤が医薬品であることに加え、その費用が治療又は療養に必要なものであることが必要となります。
出典:国税庁 漢方薬やビタミン剤の購入費用より引用
漢方薬やビタミン剤の購入費用は、すべて医療費控除の対象になるわけではない点にまずは注意が必要です。
これは、国税庁が解説しておりますように、購入した漢方薬やビタミン剤が「治療または療養に必要」でなければならないからです。
したがって、予防や健康増進の目的で購入した漢方薬やビタミン剤は、医療費控除の対象にならない点に注意が必要になります。
FP相談でよくあること
漢方薬やビタミン剤について、国税庁では「治療又は療養のために効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があり」と解説しています。
同じようなものとして、当事務所の相談であることに「湿布の購入」や「目薬の購入」があります。
これらの購入は、考え方によっては、国税庁の解説と同じように捉えられます。
わかりやすい例としては、整形外科や整骨院で診察を受けて湿布が処方された、眼科で診察を受けて目薬を処方されたといった場合です。
これらの場合、医学的な観点から治療のために必要なものと考えられ、医療費控除の対象になると判断できます。
一方、ご自身で市販されているものを購入した場合、治療や療養目的であることを証明するのが難しいことも確かです。
【出産に関連するお金】妊婦定期健診・分娩費用・出産育児一時金・出産手当金
女性が、妊娠・出産した場合、これらに関連するお金と医療費控除には深い関係があります。
たとえば、妊婦定期健診・分娩費用・出産育児一時金・出産手当金は、医療費控除とどのような関係があるのでしょう?
・妊婦定期健診:医療費控除の対象になる
・分娩費用:医療費控除の対象になる(正常分娩・異常分娩を問いません)
・出産育児一時金:医療費控除の計算で差し引きする必要がある
・出産手当金:医療費控除の対象にならない
これらのお金と医療費控除については、以下、当事務所が公開している関連記事ですべて紹介しております。
そのため、妊娠・出産する予定がある人など、詳細に興味がある人は、合わせて読み進めていただければと思います。
不妊症の治療費や人工授精にかかる費用
結婚し子どもを産み育てたいと考えている夫婦のなかには、長い期間に渡ってなかなか子どもに恵まれないといった人もいます。
このとき、自己負担で高額ではあるものの、不妊症の治療や人工授精をされる人もおられるでしょう。
これらにかかる費用は、医療費控除の対象となります。
【照会要旨】
不妊症の治療費や人工授精の費用は、医療費控除の対象になりますか。
【回答要旨】
医師による診療等の対価として支払われる不妊症の治療費及び人工授精の費用は、医療費控除の対象となります。
出典:国税庁 不妊症の治療費・人工授精の費用より引用
なお、不妊症の治療や人工授精などにあたり助成金を受け取った場合は注意が必要です。
具体的には、前項の出産に関連するお金(出産育児一時金)でお伝えしましたように、この助成金は医療費控除の計算で差し引きしなければなりません。
【歯に関連する医療費】歯の治療費・歯科矯正・インプラント
私たちが日常生活をする中で、歯の治療をするために歯医者へ行くこともあります。
また、小さな子どもが歯科矯正をした場合や審美歯科による歯科矯正のほか、インプラントをする中高齢者もおられると思います。
これらの治療費と医療費控除にはどのような関係があるのでしょう?
・歯の治療費:医療費控除の対象になる
・子どもの歯科矯正:医療費控除の対象になる
・審美歯科:医療費控除の対象にならない
・インプラント:医療費控除の対象になる
こちらにつきましても、以下、当事務所が公開している関連記事ですべて紹介しております。
そのため、歯に関連する医療費について、詳細に興味がある人は、合わせて読み進めていただければと思います。
【注意が必要】インフルエンザの予防接種や人間ドック・健康診断にかかる費用
医療費控除の対象になる医療費は、支払った医療費が「治療や療養を目的」としているものでなければなりません。
そのため、インフルエンザの予防接種の場合、予防目的であることから医療費控除の対象にはなりません。
また、人間ドックや健康診断(メタボリックシンドロームにかかる特定健康診査費用も含みます)も同じ考え方によって医療費控除の対象外です。
健康診断等の結果、重大な疾病が発見され、かつ、その診断等に引き続きその疾病の治療を行った場合には、その健康診断等は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その健康診断等のための費用も医療費控除の対象になります。
出典:国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費 人間ドック・健康診断等の費用 A1より一部引用
人間ドックや健康診断によって、重大な病気が見つかり、引き続き治療を行った場合は、この人間ドックや健康診断の費用も医療費控除の対象になります。
なお、メタボリックシンドロームにかかる特定健康診査費用については、以下のように解説しています。
特定健康診査の結果、高血圧症、脂質異常症又は糖尿病と同等の状態であると認められる基準に該当すると診断され、かつ、引き続きその特定健康診査を行った医師の指示に基づき特定健康指導が行われた場合には、その特定健康診査の費用(自己負担額)も、医療費控除の対象となります。
出典:国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費 メタボリックシンドロームに係る特定健康診査の費用 A2より一部引用
解説を一通り読み進めていきますと、先の考え方と同じであることがわかります。
【高齢者を扶養している人は要チェック】介護にかかるお金
両親や祖父母など、高齢者を扶養している人は、扶養控除のほか、場合によっては「医療費控除」や「障害者控除」など税金を少なくできる控除を数多く受けられる場合があります。
このとき、扶養している親族にかかる「介護のお金」は、基本的に医療費控除の対象になります。
・在宅療養の世話の費用(親族に支払う費用は対象外です)
・訪問介護の居宅サービス費
・介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額 など
なお、介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額には注意点があります。
【注意点】介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額
注意点を紹介する前に、まずは、国税庁の解説を確認していきましょう。
【照会要旨】
介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額は、医療費控除の対象になりますか。
【回答要旨】
介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額は、原則として医療費控除の対象となります。
介護老人保健施設は、要介護者(病状が安定期にあり、次の①~③のサービスを受ける必要があると主治医が認めたものに限ります。)に対し、施設サービス計画に基づいて、①看護、②医学的管理の下における介護、③機能訓練その他必要な医療及び④日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、都道府県知事の許可を受けたものです(介護保険法第8条第28項)。
出典:国税庁 介護老人保健施設の施設サービス費より引用
国税庁の解説を見ますと、介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額は「原則として」医療費控除の対象になることがわかります。
ただし、介護認定を受けた要介護者で「主治医が認めたもの」でなければ、介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額は医療費控除の対象になりません。
つまり、単に介護施設に入所しているからといって、その施設費用にかかる費用は医療費控除の対象になるわけではありません。
この点に注意が必要です。
当事務所が行った過去のFP相談対応において、介護施設に扶養親族が入所しているものの、主治医が認めたものではないといったものがありました。
ちなみに、忘れがちな「障害者控除」は、しっかりと受けられていることを源泉徴収票から確認しました。
【おむつ使用証明書の添付でOK】寝たきりの人にかかるおむつ代
介護が必要な人の中には、寝たきりの状態である人もおられます。
このような場合、寝たきりの人に使用するおむつ代は、医療費控除の対象になります。
ただし、このおむつ代が医療費控除の対象になるためには、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。
したがって、確定申告で医療費控除を受ける際、このおむつ代を医療費控除に加えるためには、おむつ使用証明書を提出する確定申告書と一緒に提出する必要があります。
【おわりに】ライフイベントの変化と医療費控除を考える
本ページの見出しは、ファイナンシャルプランニングにかかるライフイベントの発生を考慮して組み立ててみました。
つまり、年齢を重ねるにつれて、受けられる可能性のある医療費控除の内容も変化することになります。
本ページは、広く多くの人が使える医療費控除について、現実的で使いやすいものを独立系FP独自の主観でまとめています。
したがいまして、読者のみなさんにとってみますと、すでに知っている情報だけだったという人もいれば、新たな発見があったという人もおられるでしょう。
私個人としては、本ページで紹介した内容は簡単に要点をまとめたものに過ぎないと思っています。
そのため、特に関連記事の紹介があるものは、合わせて読み進めていただくことによって新たな発見や気づきが得られるのではないか?と思います。
私たちは、さまざまな理由によってライフイベントが大きく変化することがあります。
このようなとき、本ページの内容がきっかけ・気づきとしてみなさんの役にたてばいいなと感じています。
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ご相談も随時受付しておりますので、ご検討をよろしくお願いいたします。