本ページでは、交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金・保険金などを受け取ったときの税金と取り扱いについて紹介していきます。
本ページは、令和4年7月5日に作成・公開しておりますが、先日、自賠責保険料が2023年度から値上げされることを受け、これまで公開していた自賠責保険に関する記事を大幅に加筆・修正し再度公開しました。
関連記事:佐藤元宣FP事務所 【保険料値上げ確定】自賠責保険の特徴・補償内容・自賠責保険料などの基本を改めておさらいしてみよう
これを行い終えたとき「交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金・保険金などを受け取ったときの税金と取り扱い」も関連する内容の1つして挙げられると感じました。
そこで本ページでは、各種ポイントの紹介はもちろん、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)として知っておいて損はないと思われることも合わせて紹介していきます。
目次
交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金などを受け取ったときの税金と取り扱い
はじめに、交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金などを受け取った場合、これらのお金に対して税金がかかることはありません。
交通事故などのために、被害者が次のような治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となります。
出典:国税庁 No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき 概要より一部引用
具体的なイメージとしては、以下のようなお金があげられます。
・交通事故の加害者から受け取った治療費、慰謝料、損害賠償金、見舞金
・交通事故などによって車両(自動車など)が破損したことによる加害者からの損害賠償金
ここまでの内容を読み進めますと、たとえば、自分が掛けていた保険の保険金を受け取った場合はどうなるのか?について気になる人もおられるのではないでしょうか?
交通事故などで保険金を受け取ったときの税金と取り扱い
交通事故などで、自分が掛けていた保険の保険金を受け取る場合もあります。
このような場合、結論から申し上げて、これらの保険金に対しても税金がかかることはありません。
たとえば、ご自身が加入している自動車保険から受け取る保険金や医療保険から受け取る保険金をイメージするとわかりやすいでしょう。
損害保険金を受け取る場合も、保険料の負担者や支払原因によって課税関係が異なってきますが、保険を掛けていた方が建物の焼失や身体の傷害・疾病を原因として受け取る保険金には、原則として課税されません。
出典:国税庁 保険と税 損害保険より引用
税金がかからない非課税のイメージとは
こちらは参考情報となりますが、税金がかからない非課税のイメージを簡単に紹介しておきます。
一例として、年収500万円の会社員が交通事故によって損害を受けて入院したイメージを想定します。
・給与年収:500万円(課税)
・事故相手からの損害賠償金など:300万円(非課税)
・自身が加入している自動車保険からの保険金:100万円(非課税)
・自身が加入している医療保険からの保険金:50万円(非課税)
・健康保険から支給された傷病手当金:20万円(非課税)
まず、上記の受け取ったお金すべてを含めて税金計算がされることはありません。
今回の例の場合、給与年収のみが税金計算するための根拠金額となります。
したがいまして、それ以外に受け取ったお金(総額470万円)を給与年収に合わせて計算し、結果として税負担が重くなるといったことはありません。
特殊な事情について
ここでは、交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金・保険金などを受け取ったときの税金について、特殊な事情がある場合の取り扱いを簡単に触れておきます。
事業を営んでいる場合は注意が必要
1つ目の特殊事情は、事業を営んでいる場合です。
・商品の配送中の事故で使いものにならなくなった商品について、損害賠償金などを受け取った場合
・車両が店舗に飛び込んで損害を受けた場合で、その店舗の補修期間中に仮店舗を賃借するときの賃借料の補償として損害賠償金などを受け取った場合
・事故により事業用の車両を廃車とする場合で、その車両の損害について損害賠償金などを受け取った場合
たとえば、事業を営んでいる場合で、上記のようなケースにあてはまる場合、精査・確認が必要と前置きし「非課税扱いにはならない」ことがあります。
事業を営んでいない人にとっては無関係な内容になり得る一方、事業を営んでいる人の場合は注意が必要といえます。
火災などの損害も考え方は基本的に同じ
交通事故に限らず、何かしらの損害を一生涯のうちに被ることがあるかもしれません。
たとえば、火災によって損害を受けた場合など、交通事故に限らず何かしらの損害を受けた場合の考え方は、これまで紹介したものと基本的に同じです。
医療保険金は所得税および住民税だけでなく贈与税の対象にもならない
交通事故などで、加入している生命保険や損害保険で受け取った医療保険金は、所得税および住民税だけでなく贈与税の対象にもなりません。
・保険契約者(保険料を支払っている人):本人
・被保険者(保険の対象となる人):配偶者
・保険金受取人(保険金を受け取る人):配偶者
上記の保険契約のように、実際に保険料を支払っている人(保険契約者)と保険金を受け取る人(保険金受取人)が異なる場合、受け取った保険金は、原則として贈与税の課税対象です。
ただし、上記のような保険契約であったとしても、医療保険金の場合は贈与税が課されることはありません。
保険料を負担していない人が、満期や解約または被保険者の死亡により、生命保険金を受け取った場合には、保険料を負担した人からその生命保険金の贈与があったものとされます。しかし、けがや病気などによるものは除かれます。
出典:国税庁 No.4417 贈与税の対象になる生命保険金 概要より引用
交通事故などによって医療費控除の適用を受ける場合の注意点
交通事故などによって損害を受け、治療のために入院することもあると思います。
このような場合、医療費の負担が多くなることによって、医療費控除の適用を受けられることも考えられます。
そこで、ここでは交通事故などによって医療費控除の適用を受ける場合の注意点を簡単に紹介しておきます。
医療費から補填された金額は医療費控除の計算をする際、差し引く必要がある
交通事故などによって損害を受け、医療費控除の適用を受ける場合、「加害者から受け取った治療費」や「自身が受け取った保険金」は、実際に支払った医療費から差し引かなければなりません。
具体的なイメージは、以下の通りです。
・実際に支払った医療費:50万円
・加害者から受け取った治療費:30万円
・自身が受け取った保険金:15万円
・医療費控除の対象となる医療費:5万円(50万円-30万円-15万円)
受け取った傷病手当金は医療費控除から差し引く必要はない
健康保険に加入している会社員などが、交通事故などによって損害を受け、治療のために入院することもあると思います。
このとき、傷病手当金の申請を会社が行い、傷病手当金の支給を受ける場合も考えられます。
このような場合、実際に受け取った傷病手当金は、医療費控除の計算に含める必要はありません。
本ページのまとめとあわせておすすめしたい記事の紹介
本ページで紹介した交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金・保険金などを受け取ったときの税金と取り扱いについてまとめます。
・交通事故などで治療費・慰謝料・損害賠償金・保険金などを受け取ったときの税金はかからない(非課税)
・事業を営んでいるような特殊事情がある場合は注意が必要
・医療費控除の適用を受ける場合は、計算上、差し引かなければならないものがあるため注意が必要
今回は、交通事故など偶発的な損害によって生じた税金の取り扱いについて紹介しました。
ただ、ファイナンシャルプランニングを長期に考えたとき、特に医療費控除は、世帯の税負担を軽減させられる効果が得られます。
加えて、毎年適用できる可能性もあるため、私(独立系ファイナンシャルプランナー)としては、医療費控除のポイントは押さえておくことをおすすめしたいと感じています。
このような理由から、以下、当事務所で公開している医療費控除の記事も合わせて読み進めてみることをおすすめします。
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