本ページでは、国内FX業者と海外FX業者を通じてFXで利益を得た場合における税金の違いについて紹介していきます。
また、それぞれの場合において、会社員を例に税金計算方法とそれによって算出される税額の違いも合わせて紹介します。
なお、本ページは、令和4年度の税法に基づいた内容です。
はじめに、FXで利益を得た場合、取引をしたFX業者が「国内業者」なのか?「海外業者」なのか?によって、税金の取り扱いが全く異なります。
そのため、確定申告で税申告を行う際、これらの違いをあらかじめ知っておくことによって、誤った申告を避けられることにつながります。
目次
【まずは結論】国内FXと海外FXにおける税金計算の違い
まずは、国内FXと海外FXにおける税金計算の違いを簡単に紹介します。
・国内FX業者を通じて利益を得た場合:雑所得(申告分離課税)
・海外FX業者を通じて利益を得た場合:雑所得(総合課税)
FXで得た利益は、国内FXであっても海外FXであっても「雑所得」になることに変わりはありません。
ただし、同じ雑所得であっても国内FXは、申告分離課税、海外FXは、総合課税といったように、税金計算方法に違いがあります。
【会社員を例に紹介】FXの利益にかかる税額の違いと税金計算方法
FXの利益にかかる税額の違いや税金計算方法は、これから紹介する内容を読み進めていただくことでわかります。
なお、例にあげる会社員の状況は、以下の通りとします。
私は、会社員であり、令和4年1月1日から12月31日までの収入金額は600万円でした。
勤務先で年末調整がされており、交付された源泉徴収票に記載されている給与所得控除後の金額は436万円、所得控除の額の合計額は166万円、源泉徴収税額は176,100円です。
出典:国税庁 No.1000 所得税のしくみ 具体例2より一部引用
上記の内容について、重要なポイントのみ源泉徴収票へ反映させると以下のようになります。
では、上記内容を基に、国内FXと海外FXにおける税金計算と税額の違いついて見ていきましょう。
【申告分離課税】国内FXで年間100万円の利益を得た場合の税金計算方法と税額
国内FX業者を通じて、1年間で利益を得た場合、申告分離課税によって税金の計算をすることになります。
したがって、1日の利益や1ヶ月の利益といったことは全く関係ありません。
あくまでも、年末(12月31日)時点で、1年間のトータル収支がプラスだったのか?マイナスだったのか?が重要になります。
ちなみに、国内FX業者を通じて、1年間で利益を得た場合、利益に「20.315%の税率」を乗じた金額が納める税金です。
他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15%(他に地方税5%)の税率で課税されます(申告分離課税)
(注) 平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則として、その年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することになります。
出典:国税庁 No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係 課税関係(1)より引用
上記解説を基に、FXで年間100万円の利益を得た場合の税金計算方法と税額は以下の通りです。
1.所得税:150,000円(100万円×15%)
2.復興特別所得税:3,150円(150,000円×2.1%)
3.住民税:50,000円(100万円×5%)
4.1年間で納付すべき所得税および住民税の合計金額:203,150円(1~3の合計)
【総合課税】海外FXで年間100万円の利益を得た場合の税金計算方法と税額
海外FX業者を通じて、1年間で利益を得た場合、総合課税によって税金の計算をすることになります。
総合課税は、FXで得た利益(雑所得)のほかに、別の所得があった場合、それも合わせて税金計算する方法です。
以下、源泉徴収票の内容を考慮した税金計算方法の流れと税額は以下のようになります。
1.所得金額を確認し合算する
・FXでの年間利益:100万円(雑所得)
・給与所得:436万円(源泉徴収票の赤枠金額)
・合計所得金額:536万円(上記2つの所得を合わせた金額)
2.課税所得金額を計算する
3.所得税額を計算する
2で計算した課税所得金額370万円に税率を乗じて所得税額を計算します。
出典:国税庁 No.2260 所得税の税率より引用
上記、所得税の速算表にあてはめて税額を計算すると以下のようになります。
1.所得税額:370万円×20%-427,500円=312,500円
2.復興特別所得税:312,500円×2.1%=6,562円
3.年間で納めなければならない所得税等:319,062円
4.所得税の確定申告で追徴しなければならない税額
例の会社員の場合、1年間で納めなければならない所得税および復興特別所得税は、合計で319,062円です。
このとき、源泉徴収票を見ると、1年間で納めた所得税および復興特別所得税は、176,100円(源泉徴収税額)であることが確認できます。
つまり、この差額分142,962円(319,062円-176,100円)が足りていません。(納税不足分)
したがって、所得税の確定申告を行い、142,962円を納めなければならないことになります。
【海外FXの住民税】住民税の税額は、所得控除の種類によって変わる
前項で紹介したのは、所得税等の計算です。
そのため、住民税はどのようになるのか?気になる人もおられるはずです。
源泉徴収票を見ると、所得控除の合計金額は「166万円」です。
このとき、仮に、所得控除の内訳が以下の通りであったとします。
・基礎控除:48万円
・配偶者控除:38万円
・社会保険料控除:80万円
・所得税法における所得控除の合計:166万円
住民税の場合、所得控除の金額が以下のように変わります。
・基礎控除:43万円
・配偶者控除:33万円
・社会保険料控除:80万円
・地方税法における所得控除の合計:156万円
ちなみに、例の会社員が納めることになる概算住民税額は以下のように計算されます。
1.所得金額を確認し合算する
・FXでの年間利益:100万円(雑所得)
・給与所得:436万円(源泉徴収票の赤枠金額)
・合計所得金額:536万円(上記2つの所得を合わせた金額)
2.課税標準額を計算する
3.概算住民税額を計算する
2で計算した380万円に税率10%を乗じて住民税を計算します。
380万円×10%=38万円(年間の概算住民税額)
なお、概算住民税額としている理由は、お住いの地域によって、独自の住民税(均等割額)が課されることがあるからです。
ただし、計算した概算住民税額と大差ないことがほとんどですので、さほど気にする必要はありません。
【目先の金額で判断はNG】税金計算と税額の結果から考えられること
まずは、今回の例に基づく税額をまとめて比較します。
なお、住民税の計算における所得控除額の合計は156万円であったとします。
国内FXで年間100万円の利益を得た場合の税額(申告分離課税)
1.給与所得に対してかかる所得税・復興特別所得税:176,100円(源泉徴収票の源泉徴収税額)
2.給与所得に対してかかる住民税:280,000円(436万円-156万円)×10%
3.雑所得(FXの利益)に対してかかる所得税・復興特別所得税:153,150円
4.雑所得(FXの利益)に対してかかる住民税:50,000円
5.合計金額:659,250円(1~4の合計)
海外FXで年間100万円の利益を得た場合の税額(総合課税)
1.給与所得と雑所得(FXの利益)に対してかかる所得税・復興特別所得税:319,062円
2.給与所得と雑所得(FXの利益)に対してかかる住民税:380,000円(536万円-156万円)×10%
3.合計金額:699,062円(1~2の合計)
上記の結果、今回の例では、同じ100万円の利益でも国内FXで取引した方が少ない税額で済む結果となりました。
とはいえ、総合課税による税金計算の特徴を考慮すると、その人の年収や所得金額をはじめ、FXでどのくらいの利益を年間で得たのか?によって大きく変わります。
したがって、それぞれの税金計算の方法を知り、柔軟に使い分けることが望ましいといえます。
【海外FXの注意点】金融庁の注意喚起を紹介
海外FX業者を利用してFXをすることについて、金融庁では以下のような注意喚起を公表しています。
FX取引は、金融商品取引法上のデリバティブ取引に該当します。日本に居住する投資者に対してFX取引を業として行うには、金融商品取引業の登録が必要です。たとえ海外で金融商品取引のライセンスを持つ業者であっても、日本で登録を受けずに日本に居住する者に対して金融商品取引を業として行うことは禁止されています。無登録業者と取引した場合は、トラブルが生じても無登録業者への追及は極めて困難です。取引を始める前に、取引の相手が金融商品取引法の登録を受けている業者であることを必ず確認してください。
出典 金融庁 外国為替証拠金取引について II 取引に対する注意より引用
すべての海外FX業者ではありませんが、利益を得て出金しようとしてもできないなど、トラブルが多い特徴も少なからずあります。
そのため、金融庁の注意喚起にありますように、金融商品取引法の登録を受けている業者を確認してFXをするようにしたいものです。
【節税対策】雑所得の計算式とFXの必要経費について
FXでの利益は、国内FX、海外FXを問わず「雑所得」であることをお伝えしております。
このとき、雑所得の計算式を知り、節税対策を考えることも大切です。
総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得
出典:国税庁 No.1500 雑所得 所得の計算方法(3)より引用
たとえば、FXで年間100万円の利益(総収入金額)を得たものの、必要経費が30万円あった場合、雑所得は70万円となります。
つまり、FXで利益を得られた場合、必要経費を算入して雑所得を計算することが節税対策につながります。
【確定申告で必要経費を算入】FXの必要経費になるもの
FXの必要経費を算入するためには、所得税の確定申告書へ必要経費を記載して申告する必要があります。
なお、FXの必要経費として認められる可能性が高いものは以下の通りです。
・通信費(インターネットプロバイダー料金など)
・FXに関連する書籍の購入費用
・FXに関連するセミナーなどの受講費用
・パソコンの購入代金(ただし、FXに関連する必要がある)
・投資顧問会社に対する年会費や成功報酬
・電気代 など
上記はあくまでも一例です。
特に、通信費や電気代など、日常生活で使うものと混在するような必要経費を算入する場合は支払った全額を入れないように注意が必要です。
【Q&A】当事務所が応じたFXと税金の疑問を紹介
ここでは、当事務所が応じたFXと税金の疑問についてQ&Aで紹介していきます。
Q1.FXで確定申告をしないとどうなるのか?
FXで確定申告をしないとどうなるのかは、実際に得たFXの利益額や損失によって異なります。
たとえば、FXで利益を得たものの確定申告をしなかった場合、後から税務署へ訴求され、本来納めなければならない税金額に加え、無申告加算税などのペナルティーとなる税金も上乗せされます。(マイナンバーによって税務署は把握しています)
なお、FXで年間の収支がマイナス(赤字・損失)であった場合、確定申告をすることで損失(赤字)を翌年以降3年間に渡って繰越控除できるため、利益であろうと損失であろうと毎年確定申告を行った方が望ましいといえます。
Q2.FXで税金を申告する際の確定申告の注意点とは?
FXで税金を申告する際における確定申告の注意点は、確定申告期間中に確定申告を行うことがあげられます。
所得税の確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までの約1ヶ月間となっています。
また、FXで利益を得た人は、節税対策として必要経費の算入を忘れずに行うようにしましょう。
Q3.FXで複数のFX口座を保有している場合における確定申告の注意点とは?
FXで複数のFX口座を保有している場合、それぞれのFX口座で得た利益や損失を合算して1年間の損益を計算する必要があります。
たとえば、国内FX口座「A社」と「B社」の2つのFX口座を持っていたとします。
このとき、A社では30万円、B社では100万円の利益を得たとします。
この場合、A社とB社の利益を合算して130万円が年間で得たFXの利益額(雑所得)となります。
なお、A社で▲40万円の損失、B社で100万円の利益があった場合、A社とB社の損失と利益を相殺できます。
つまり、年間の利益を60万円とすることができ、これを「損益通算」といいます。
損益通算は、国内FX口座同士で行うことは可能ですが、国内FX口座と海外FX口座の損失と利益は損益通算することができませんので注意が必要です。
Q4.FXで生じている含み益やスワップポイントは税金の課税対象になるのか?
ポジションを保有したまま年をまたいだとき、そのポジションで生じている含み益やスワップポイントは、税金の課税対象になりません。
FXにおいて、税金の課税対象となるのは、保有ポジションを決済することによって生じる「確定した利益」や振り替えしたスワップポイントです。
そのため、ポジションを保有し、未確定の含み益や未確定のスワップポイントは税金の課税対象外です。
なお、ポジションを保有し、含み損やマイナスのスワップポイントも同様に、確定した損失ではないため、すでに確定している利益と相殺することができない点にも注意が必要です。
Q5.青色申告を行うことでFXの税金に何かメリットはあるのか?
青色申告を行うことでFXの税金に直接与えるメリットはありません。
そもそも青色申告とは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人が、税務署に対して青色申告の承認申請をすることで適用されるものです。
そのため、個人のFXトレーダーに関係のある制度ではありません。
Q6.FXの利益は、NISAを活用することで非課税となるのか?
FXの利益は、NISAを活用することで非課税になることはありません。
NISA(少額投資非課税制度)で取引できる金融商品は、株式投資信託、国内・海外上場株式、国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)、国内・海外REIT、新株予約権付社債(ワラント債)です。
したがって、FXは、NISAの投資対象にはならないため、NISAを活用して非課税制度の恩恵が受けられることはありません。
なお、NISAではなくつみたてNISAを選んでいる場合もFXの利益が非課税になることはありません。
Q7.FXで税金が生じた場合の納税方法とは?
FXで税金が生じた場合、所得税の確定申告期間中(原則として翌年2月16日から3月15日までの間)に所得税等を納税する必要があります。
なお、FXで生じた利益に対する住民税は、所得税の確定申告を行う際、給与から天引きされる「特別徴収」か自分で納付する「普通徴収」を選択できます。
つまり、どちらを選んだかによって住民税の納付方法が変わります。
ちなみに、所得税の確定申告をしますと、その情報がお住いの市区町村に税務署から伝達されます。
普通徴収を選んだ場合、翌年の6月頃にお住いの市区町村から住民税の納税通知書が届きます。
この納税通知書に基づき、住民税を納付するといった流れになります。
Q8.主婦や大学生などがFXで税金を納める場合の注意点とは?
一般に、主婦や大学生は所得が低いと考えられます。
ただし、これらの人が、仮に、FXで税金を納めることになった場合は「配偶者控除・配偶者特別控除」もしくは「扶養控除」の適用に細心の注意が必要です。
現在、マイナンバー制度によって、誰がどのくらいの利益をFXで得たのか税務署は簡単に把握できています。
そのため、場合によっては、本来ならば、「配偶者控除・配偶者特別控除」または「扶養控除」が適用できないのにも関わらず、適用をしてしまっている懸念も十分予測できます。
このような誤りを防止するため、家族間で配偶者控除や配偶者特別控除をはじめ扶養控除などの関係性がある場合には、注意が必要です。
合わせて、社会保険における扶養といった意味合いも大きく変わってしまう懸念が生じます。
したがって、主婦や大学生などがFXで税金を納める以前に、あらかじめFXをやっていること、利益が発生したことなどを家族間で情報共有するように努めておきたいものです。
おわりに
本ページでは、国内FXと海外FXにおける税金計算の違いについて紹介しました。
国内FXで利益を得た場合、会社員かどうかを問わず、利益に対して20.315%の税率を乗じた税金が課されます。
ただし、海外FXの場合、その人の所得がどのくらいあるのか?所得控除額がどのくらいあるのか?によって、税金額が大きく変化します。
国内FXの場合、レバレッジ規制がされているものの、海外FXの場合は、高いレバレッジをかけて取引することもできます。
そのため、場合によっては、1年間で大きな損失を負ってしまうこともあるかもしれません。
ちなみに、国内FXと海外FXにおける損失と税金に関する取り扱いも大きく異なるところがあります。
また、国内FX・海外FXのどちらにも共通していえることですが、FXで利益を得た場合、納税資金としてあらかじめ普段からお金の管理をすることが大切です。
特に、年末が近くなった時期に大きなお金を失い、納税資金まで無くなるといったことだけは絶対に避けるようにしましょう。
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