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【FXの損失と税金】国内FXと海外FXにおける損失と税金の取り扱い。損失の繰越控除の違いも紹介
税金・年金・介護

本ページでは、国内FX業者を通じてFXで損失を被った場合と海外FX業者を通じてFXで損失を被った場合における税金の取り扱いについて紹介します。

合わせて、FXの損失を翌年以降に繰り越しする繰越控除の取り扱いにかかる違いも紹介します。

なお、本ページは令和4年度の税法に基づいた内容となっています。

はじめに、国内FXと海外FXでは、税金計算の方法が大きく異なります。

関連記事:佐藤元宣FP事務所【FXと税金】国内FXと海外FXにおける税金計算の違いについて。会社員を例に確定申告での税金計算方法や税額の違いも紹介

今回紹介するFXでの損失の取り扱いは、国内FXと海外FXで共通しているところと違うところがあります。

佐藤 元宣
佐藤 元宣

早速、それぞれの違いを確認していきましょう。

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【共通しています】国内FXと海外FXにおける損失と税金の取り扱い

FXにかかる税金は、国内FXや海外FXを問わず、1年間のトータル収支がプラス(利益)でなければ税金がかかることはありません。

ここで言う「1年間」とは、1月1日から12月31日までの1年間です。

つまり、1年間を通じてFXで損失を被った場合、国内FXであっても海外FXであっても税金がかかることはありません。

ただし、FXの損失を翌年以降に繰り越しする繰越控除の取り扱いは、国内FXと海外FXでは大きく異なります。

【国内OK!海外NG】FXの損失を繰り越しする繰越控除とは

所得税法では、国内FX業者を通じてFXで損失を被った場合、その損失を繰越控除できる制度が設けられています。

先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除とは、「先物取引に係る雑所得等の金額」の計算上生じた損失がある場合に、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等の金額」を限度として、一定の方法により、「先物取引に係る雑所得等の金額」の計算上その損失の金額を差し引くことです。

出典:国税庁 No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除 概要より引用

上記、国税庁の解説だけではよくわからない人も多いと思います。

そのため、以下、簡単なイメージで繰越控除の特徴を確認していきましょう。

佐藤 元宣
佐藤 元宣
まずは、FXの繰越控除がある場合の税金計算イメージです。

・令和4年度のFX収支:▲100万円 → 損失であるため税金なし

・令和5年度のFX収支:+100万円 → 本来ならば203,150円(利益に対して20.315%)の税金がかかる

・ただし、繰越控除によって、昨年の損失と本年の利益を相殺できる → ▲100万円+100万円=0円

よって、令和5年度の利益100万円に対して税金がかからない

佐藤 元宣
佐藤 元宣
次は、FXの繰越控除がない場合の税金計算イメージです。

・令和4年度のFX収支:▲100万円 → 損失であるため税金なし

・令和5年度のFX収支:+100万円 → 203,150円(利益に対して20.315%)の税金がかかる

繰越控除がないことによって、昨年の損失100万円と本年の利益100万円を相殺できない

よって、令和5年度の利益100万円に対して税金がかかるため、お金のロスが生じる

繰越控除がある場合とない場合を比較しますと、効果の違いがよくわかると思います。

なお、FXの繰越控除について、1年間で生じた国内FXでの損失はOKですが、海外FXでの損失は認められません。

国内FXと海外FXでは、税金計算の方法が大きく異なりますが、損失の繰越控除についても大きく異なる特徴があります。

【確定申告必須】FXの損失を繰越するための手続きについて

国内FXで生じた損失を繰越するためには、以下3つの要件をすべて満たしていなければなりません。

先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を受けるためには、次の手続が必要となります。

(1) 先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の所得税につき、当該事項を記載した「平成・令和   年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)(PDF/821KB)」および「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書(PDF/240KB)」を添付した確定申告書を提出すること。

(2) その後において連続して上記の申告書付表を添付した確定申告書を提出すること。

(3) この繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、上記の申告書付表および計算明細書を添付した確定申告書を提出すること。

出典:国税庁 No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除 申告等の方法より引用

上記3つの要件を簡単にまとめます。

1.国内FXで損失が生じた年に、繰越控除を受けるためには、以下3つの書類を作成して税務署へ提出する必要がある

(1)平成・令和〇年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)

(2)先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書

(3)作成した所得税の確定申告書

2.国内FXでの損失について繰越控除を受けるためには、翌年の収支が利益・損失を問わず「連続して」1で紹介した3つの書類を作成して所得税の確定申告をする必要がある

3.繰越控除を受けたい年は、1で紹介した3つの書類を作成して所得税の確定申告をする必要がある

佐藤 元宣
佐藤 元宣
簡単にまとめると、FXの損失を繰越控除したいのであれば、毎年、3つの書類を作成して所得税の確定申告をしてくださいってことです。
繰越控除をしなくてよい人や面倒な人は、確定申告をしなくてもよいです。
でも、繰越控除は受けられませんのでということです。

なお、etax(イータックス)でFXの損失にかかる確定申告書を作成した場合、これら3つの書類をすべて記載もれなく作成し申告することができます。

【連続の損失】国内FXで損失でも毎年所得税の確定申告を行った方が良い理由

国内FX業者を通じてFXを行い、年間収支がマイナスですと、残念な気持ちになると思います。

また、毎年FXで損失を被りますと、FXを止めようと考えたり、繰越控除が受けられるとはいえ、確定申告をする気持ちが無くなるとも思います。

しかし、連続でFXの損失を被ったとしても、引き続きFXをやって成功しようという意志があるのであれば、毎年、所得税の確定申告を行った方が良いといえます。

佐藤 元宣
佐藤 元宣

この理由は、FXの繰越控除がどのように行われるのか?を知ることで納得できます。

先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除は、次の順序により行います。

先物取引の差金等決済に係る損失の金額が前年以前3年以内の2以上の年分に生じたものである場合には、これらの年のうち最も古い年分に生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額から順次差し引きます。

出典:国税庁 No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の方法より引用

上記の解説を以下、大まかなイメージで考えてみます。

・令和2年度における国内FXでの収支:▲100万円

・令和3年度における国内FXでの収支:▲50万円

・令和4年度における国内FXでの収支:+120万円

国税庁の解説より「損失の金額が前年以前3年以内の2以上の年分に生じたもの」は、上記例でいうところの「令和2年度」と「令和3年度」の損失にあたります。

次に、「これらの年のうち最も古い年分に生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額から順次差し引きます」とあります。

つまり、令和4年度の利益120万円を繰越控除する場合、まず、令和2年度の損失と相殺します。

120万円(令和4年度の利益)-100万円(令和2年度の損失)=20万円

ただし、令和3年度も損失であったため、順次差し引きします。

20万円-50万円(令和3年度の損失)=▲30万円(残っている損失の繰越控除分)

この結果、令和4年度に得た120万円の利益に対して税金がかかることはありません。

このような結果が得られた理由は、令和2年度と令和3年度に連続で損失を被ったとしても損失の繰越控除をするために確定申告をしたからといえます。

佐藤 元宣
佐藤 元宣
2年後、3年後を見据えたとき、結果として節税できるようにするためには、連続でFXの損失を被ったとしても、毎年、所得税の確定申告を行った方が良いといえるわけです。

【損益通算の注意点】国内FXの損失は国内FXの利益以外と損益通算できない

損益通算とは、プラスとマイナスを相殺することをいいます。

これを踏まえ、国税庁ではFXの損失にかかる損益通算について以下のように解説しています。

先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失が生じたときは、他の先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。

出典:国税庁 No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例 先物取引に係る雑所得等の金額の計算上、損失が生じた場合より引用

上記、国税庁の解説からポイントを簡単にまとめます。

1.複数の国内FX業者を通じて取引したものがあった場合、それぞれの年間収支を損益通算してもよい。

2.FXの損失は、給与所得や事業所得など、ほかの所得と損益通算することはできない

3.国内FXと海外FXの収支は、税金計算方法が異なるため、損益通算することはできない

佐藤 元宣
佐藤 元宣
上記1のポイントにかかるイメージは、以下の通りです。

・国内FXA社:年間収支が+100万円

・国内FXB社:年間収支が▲50万円

・国内FXC社:年間収支が▲30万円

損益通算によって、年間収支は20万円(100万円-50万円-30万円)と計算しても良いということです。

佐藤 元宣
佐藤 元宣
上記2のポイントにかかるイメージは、以下の通りです。

・年間給与所得:500万円

・国内FXA社:年間収支が▲100万円

損益通算によって、給与所得500万円から雑所得100万円を差し引いて400万円とすることはできないということです。

佐藤 元宣
佐藤 元宣
上記3のポイントにかかるイメージは、以下の通りです。

国内FXA社:年間収支が+100万円

海外FXB社:年間収支が▲70万円

損益通算によって、100万円から70万円を差し引いて30万円とすることはできないということです。

佐藤 元宣
佐藤 元宣
国内FXの利益と損失同士、海外FXの利益と損失同士であれば損益通算ができますが、それ以外は基本的にNGのため注意です。

FXをしている人の中には、国内・海外を問わず複数のFX口座を開設して取引している人も多いです。

ただし、国内FXと海外FXでは、税金計算方法が異なるだけでなく損失の取り扱いも異なるため、確定申告の際は注意が必要といえます。

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おわりに

国内FXと海外FXでは、どちらも年間で損失を負った場合、税金がかかることはありません。

しかし、翌年以降の損失の繰越控除においては、国内FXはできるものの、海外FXは繰越控除することができません。

そのため、節税対策で考えたとき、翌年以降3年間で利益を得た場合の税負担に大きな違いが生じることになります。

また、国内FXと海外FXを併用して取引を行っている場合も損益通算ができないため、こちらも節税対策といった面で不利になることがあります。

海外FXは、国内FXと異なり、大きなレバレッジをかけて取引できる特徴があります。

そのため、1年間で大きな利益を得られる可能性がある一方、損失も大きくなる可能性も否めません。

長い目でFX取引を考えたとき、どちらが自分にとって望ましいのか?個々の考え方による違いもあることは確かです。

ただし、FXの利益にかかる税金計算方法の違いや本ページで紹介した損失にかかる違いを総合的に考え、自分にとって最も望ましい方法で取引を行うことが良いといえそうです。

佐藤 元宣
佐藤 元宣
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