本ページでは、学資保険の満期保険金や祝い金を受け取った場合における税金の取り扱いを紹介します。
はじめに、学資保険に加入している人が、学資保険の満期保険金や祝い金を受け取りしたとき、税金がかかるのか気になる人も多いと思います。
学資保険の満期保険金や祝い金は、税金がかかる対象ではあるものの、以下のようなさまざまな条件によって税金の取り扱いが全く異なります。
・学資保険の「保険契約」はどのようになっているのか?
・学資保険の満期保険金は「どのように」受け取ったのか?
・学資保険の満期保険金や祝い金は「いくら」受け取ったのか?
・学資保険の保険料は「どのくらい」支払っていたのか?など
これらを踏まえ、本ページでは、学資保険の満期保険金や祝い金を例に、これらを受け取った場合における税金の取り扱いを紹介していきます。
目次
【保険契約の確認】学資保険の保険契約によって「所得税」か「贈与税」がかかる
学資保険の場合、保険契約がどのようになっているのか?によって、受け取った満期保険金や祝い金に「所得税」か「贈与税」がかかります。
・所得税がかかる場合:保険契約者(学資保険料を支払っている人)と保険金受取人(満期保険金や祝い金を受け取る人)が同じ保険契約
・贈与税がかかる場合:保険契約者(学資保険料を支払っている人)と保険金受取人が(満期保険金や祝い金を受け取る人)が異なる保険契約
これから紹介する内容は、所得税がかかるのか?贈与税がかかるのか?が明確になっていないといけません。
そのため、あらかじめ保険契約を確認して、どちらの税金がかかるのか?確認しておくことが大切です。
ほとんどが「所得税」の対象だと思われますが、念のため自分の保険契約を保険証券などで確認してください。
なお、保険証券を見ても所得税がかかるのか?贈与税がかかるのか?検討がつかないといった人もおられるかもしれません。
そこで次項では、所得税と贈与税のどちらがかかるのか?学資保険の保険契約イメージを簡単に紹介します。
【所得税】の対象となる学資保険の保険契約イメージ
学資保険の満期保険金や祝い金に所得税がかかる保険契約のイメージは以下の通りです。
子どもの教育資金準備のために加入する学資保険は、親が子どものために加入する場合がほとんどです。
このとき、保険契約者(学資保険料を支払っている人)と保険金受取人が(満期保険金や祝い金を受け取る人)自分である場合、満期保険金や祝い金は所得税の対象です。
【贈与税】の対象となる学資保険の保険契約イメージ
学資保険の満期保険金や祝い金に贈与税がかかる保険契約のイメージは以下の通りです。
・保険契約者(学資保険料を支払っている人)は「自分」だが、保険金受取人(満期保険金や祝い金を受け取る人)は「配偶者」や「子ども」である
・保険契約者(学資保険料を支払っている人)は「祖父母」だが、保険金受取人(満期保険金や祝い金を受け取る人)は「自分」や「子ども」である
学資保険の満期保険金や祝い金に贈与税がかかる保険契約は、保険契約者と保険金受取人が違う人である場合です。
たとえば、おじいちゃんやおばあちゃんが、孫のために学資保険へ加入し、保険金受取人を子ども(自分)や孫にしていた場合はイメージがしやすいでしょう。
このように、保険契約者と保険金受取人が同じなのか?違うのか?によって、かかる税金の種類が変わる点に注意が必要です。
【受け取り方が重要!】学資保険の満期保険金と祝い金にかかる所得税の取り扱い
ここでは、学資保険の保険契約を確認した結果、所得税がかかる保険契約であったものとして話を進めていきます。
はじめに、学資保険の満期保険金や祝い金を受け取った場合、このお金は「一時所得」または「雑所得」として所得税の課税対象となります。
ただし、満期保険金の受け取り方によって「一時所得」になるのか「雑所得」になるのかが異なります。
また、実際に受け取った金額によっては、税金がかからない場合もあります。
学資保険の祝い金も含め、どのような違いがあるのか?次項から解説を進めます。
【まとめて受け取りした場合】学資保険の満期保険金や祝い金は「一時所得」になる
学資保険の満期保険金を一括でまとめて受け取りした場合や祝い金を受け取った場合、その受け取ったお金は一時所得となります。
(1)満期保険金等を一時金で受領した場合
満期保険金等を一時金で受領した場合には、一時所得になります。
出典:国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき 所得税が課税される場合より引用
ただし、実際に受け取った満期保険金とこれまで支払った学資保険料との差額が「50万円以下」の場合、税金がかかりません。
【なぜ、50万円以下?】一時所得の計算方法と具体例
一時所得は、以下の計算式によって計算します。
総収入金額-収入を得るために支出した金額(注)-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
(注) その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。
出典:国税庁 No.1490 一時所得 所得の計算方法より引用
上記の計算式を基に、学資保険の満期保険金を受け取った具体例で一時所得を確認してみましょう。
・毎月の学資保険料は1万円とします。
・18年間に渡って、毎月学資保険料を払い込んだものとします。
・満期保険金は、250万円とし、一括でまとめて受け取ったものとします。
上記の前提条件を基に、国税庁の解説にある一時所得の計算式で計算すると以下のようになります。
250万円-216万円(1万円×12ヶ月×18年間)-50万円=▲16万円
計算結果がマイナス16万円となりました。
一時所得の計算において、計算結果がマイナスとなった場合、一時所得は「0円」となります。
つまり、受け取った250万円の満期保険金に対して所得税がかかることはないわけです。
【分割(年金)で受け取りした場合】学資保険の満期保険金は「雑所得」になる
学資保険の満期保険金を分割で受け取りした場合、その受け取ったお金は雑所得となります。
(2)満期保険金等を年金で受領した場合
満期保険金等を年金で受領した場合には、公的年金等以外の雑所得になります。
出典:国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき 所得税が課税される場合より引用
国税庁では、学資保険の満期保険金を分割(年金)で受け取った場合、公的年金等以外の雑所得になると解説しています。
公的年金等以外の雑所得にも、計算方法が設けられており、次項で具体例を交えて紹介します。
【同じ前提条件なのに】公的年金等以外の雑所得の計算方法と具体例
今回の場合、学資保険でありますから、受け取りした保険金にかかる公的年金等以外の雑所得は、以下のように計算されます。
計算式だけではイメージがわかないため、具体例で雑所得を確認してみましょう。
・毎月の学資保険料は1万円とします。
・18年間に渡って、毎月学資保険料を払い込んだものとします。【払込保険料総額216万円(1万円×12ヶ月×18年間)】
・満期保険金(総支給見込額)は、250万円とし、4年間に渡って分割(1年間あたりの受け取り金額は62.5万円)で受け取りするものとします。
上記の前提条件を基に、公的年金等以外の雑所得の計算式で計算すると以下のようになります。
計算結果が、85,000円となりました。
一時所得・雑所得といった2つの計算から重要なポイントを次項でまとめて紹介します。
【学資保険の受け取り方で税金が異なる!】具体例の計算結果からまとめられること
ここまで紹介した同じ前提条件で学資保険の満期保険金を受け取りした場合の所得計算結果をまとめます。
・まとめて満期保険金を受け取りした場合:▲16万円(一時所得)
・分割で満期保険金を受け取りした場合:85,000円(雑所得)
学資保険の満期保険金は、お金の受け取り方法によって、税金がかかる場合と税金がかからない場合があることを確認できます。
保険会社との保険契約にもよりますが、学資保険は、分割で保険金を受け取った方が、より多くのお金を受け取りできる場合があります。
しかしながら、所得税や住民税の税負担を考えたとき、結果として税負担のロスが多くなったことにより、実際に受け取ったお金が少なくなったということがないようにしなければなりません。
これは、実際に学資保険の満期保険金を受け取った人の所得や所得控除額がどうなのか?によって変わります。
そのため、どちらの方法で受け取った方が確実に得策になるのか?については、当事務所のような独立系FPや税理士など専門家の判断を求めた方がよいでしょう。
【重要】所得税の確定申告が必要な場合と不要な場合
学資保険の満期保険金を受け取りした場合において、所得税の確定申告が必要な場合は、以下のいずれかにあてはまった場合です。
・一時所得が発生した場合(一時所得の計算結果がプラスだった場合)
・雑所得が発生した場合(雑所得の計算結果がプラスだった場合)
学資保険の満期保険金を受け取りした人は、一般に給与所得や事業所得など、何かしらの仕事によって継続した収入があるはずです。
これらの所得のほかに、一時所得や雑所得があった場合、所得税の確定申告を行って税金の再計算と精算を行わなければなりません。
なお、一時所得や雑所得が発生し、所得税の確定申告を行った場合、住民税の申告を行う必要はありません。(税務署から役所へ情報伝達される)
ちなみに、一時所得を計算した結果、マイナスだった場合のように所得が0円となる場合も所得税や住民税の確定申告は必要ありません。
【年間110万円以下がポイント】学資保険の満期保険金にかかる贈与税の取り扱い
ここでは、学資保険の保険契約を確認した結果、贈与税がかかる保険契約であったものとして話を進めていきます。
はじめに、学資保険の保険契約において、保険契約者と保険金受取人が異なる場合、贈与税の課税対象となります。
そのため、学資保険の満期保険金を受け取った人(受贈者といいます)は、贈与税の申告をして贈与税を納めなければなりません。
ただし、年間で110万円以下の満期保険金であった場合は、贈与税がかかることはなく、贈与税の申告もする必要がありません。
【年間110万円を超える場合】簡単な贈与税対策と贈与税がかからないポイント
学資保険の満期保険金が年間110万円を超える場合は多いと思います。
そのため、贈与税がかかる保険契約で、かつ、満期保険金が年間110万円を超える場合は、贈与税の対策を行っておく必要があります。
学資保険の保険契約者は、保険契約をしている保険会社に対して「保険金受取人の変更」を申し出て変更をすることができます。
具体的には、保険金受取人を自分自身にして、所得税がかかる対象にします。
そして、一括で満期保険金を受け取るようにすることで、贈与税も所得税も納めなくてもよくなる可能性は大いに高まるでしょう。
もう1つ贈与税対策として有効なポイントがあります。
【贈与税のポイント】必要な教育費に贈与税がかからない
贈与税は、すべての贈与に対してかかる税金ではありません。
つまり、贈与であっても、贈与税がかからない贈与があるということです。
2 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
出典:国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合 贈与税がかからない財産より引用
上記、国税庁の解説より、親などが負担した子どもの教育費は、子どもに対して贈与税がかからないことがわかります。
親が子どもの教育費を負担するのは、ごく当たり前のことですから、それに対して贈与税をかけるのは常識的に考えておかしいですよね?
したがいまして、親が学資保険の保険金を自分自身で受け取った後に、子どもの教育費を負担することで、贈与税の負担を避けられることになります。
つまり、先に紹介した保険金受取人を自分自身へ変更することは、贈与税対策として有効な対策方法であるといえます。
【贈与のしかたが重要】必要な生活費や教育費のみ負担(贈与)することが大切
親が子どもの教育費を負担することは、子どもに対して贈与税がかかることはありません。
ただし、国税庁では以下のような注意喚起をしています。
なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。
出典:国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合 贈与税がかからない財産より引用
上記、国税庁の解説を読み進めますと、生活費や教育費で贈与税がかからないものは「必要な都度」これらの費用として充てるお金の場合としています。
つまり、親が子どもに対して生活費や教育費目的でまとまったお金を贈与した場合は注意が必要です。
たとえば、大学へ進学している子どもに対して、生活費や教育費目的で年間200万円をまとめて送金したとしましょう。
このとき、子どもはそのお金を預金したり、遊興費に充ててしまうことも十分考えられます。
このような場合、親が生活費や教育費のために贈与したお金が、これらの目的以外に使われていますよね?
このようになってしまいますと、名目上は生活費や教育費であったとしても、実際は異なっているため、贈与税がかかる対象になるということです。
面倒かもしれませんが、毎月の生活費や教育費のように「都度」贈与することが大切です。
【おわりに】学資保険の満期保険金とファイナンシャルプランニングを考える
学資保険の満期保険金は、まとめて受け取りするのか?分割で少しずつ受け取りするのか?によって、税金が変わることを確認できました。
また、学資保険の保険契約によって、かかる税金の種類が異なることも確認できました。
学資保険の満期保険金は、親が子どもの将来を考えて準備してきた大切なお金です。
そのため、少しでも無駄な税金を払わないように注意をしておく必要があります。
ちなみに、これから実家を離れて進学する子どもがいる場合、社会勉強の一環として勉学に励みながらアルバイトをすることもあるでしょう。
このような場合、扶養控除の関係で親も子どもも注意しておくべきことがあります。
上記の関連記事を合わせて読み進めていただき、親と子が情報共有することは、税負担を避けられるきっかけにもつながります。
なお、学資保険の満期保険金を受け取る時期は、子どもが高校や大学などへ進学する時期が近くなっていることを意味します。
親御さんの中には、学資保険で足りない教育費をどのように捻出しようか?頭を悩ませている人も多いことでしょう。
たとえば、教育ローンの借入、奨学金の活用などがわかりやすい対策方法としてあげられます。
上記の関連記事は、国の教育ローンである日本政策金融公庫の教育ローンについて幅広く解説した記事になります。
学資保険の満期保険金を受け取った人、受け取る予定のある人で、教育ローンの借入を検討している人は合わせて読み進めてみることをおすすめします。
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