本ページでは、国の教育ローンである日本政策金融公庫の教育ローンについて、申し込みをする人が知っておきたいポイントを紹介します。
なお、本ページは、2018年10月30日に初めて公開したものを2022年8月15日に大幅に加筆・修正しています。
はじめに、子どもが進学をする予定の人やすでに進学をしている人にとって、教育費にかかるお金は心配だと思います。
そのため、できる限り教育費を抑える方法を知りたかったり、教育ローンの金利が低いところを知りたい人もおられることでしょう。
そこで本ページでは、教育ローンの金利が低く返済負担を軽くしやすい国の教育ローンのポイントをまとめて紹介していきます。
目次
【国の教育ローン】日本政策金融公庫の教育ローンとは
日本政策金融公庫のWEBサイトでは、国の教育ローンについて、以下のように解説しています。
高校、大学、専修学校などに入学又は在学される方の保護者に対して、入学金、学校納付金などの入学費用や、授業料、通学費などの在学費用をご融資する制度です。
出典:日本政策金融公庫 よくあるご質問 Q1-1「国の教育ローン」とはどのような制度ですか。より引用
日本政策金融公庫の教育ローンは、高校・大学・専門学校などに入学する子どもや在学している子どもがいる親などに教育費を融資する制度です。
親(保護者)に対してお金を融資するわけですから、債務者は「親(保護者)」になり、借りたお金を返済する義務があるのも「親(保護者)」となります。
なお、教育ローンに限らず、ローンを申し込みするためには、必ず申し込みするための条件があります。
【進学する学校と世帯年収】日本政策金融公庫の教育ローンを申し込みするための2つの条件
日本政策金融公庫の教育ローンを申し込みするためには、以下、2つの条件をいずれも満たしていなければなりません。
1.修業年限が6ヵ月以上(外国の教育施設は3ヵ月以上)で、中学校卒業以上の方を対象とする教育施設であること
2.定められている世帯年収(所得)の上限額の範囲内にあてはまっていること
具体的にどのようなことなのか?次項でそれぞれ解説を進めます。
【1つ目の条件】日本政策金融公庫の教育ローンで融資の対象となる学校について
日本政策金融公庫では、教育ローンの融資対象となる学校について以下のように解説しています。
修業年限が6ヵ月以上(外国の教育施設は3ヵ月以上※)で、中学校卒業以上の方を対象とする次の教育施設です。ただし、大学等であっても在籍する課程や学校教育法によらない学校については、対象とならない場合があります(参照)。ご不明な点がある場合は、教育ローンコールセンターにお問い合わせください。
※外国において教育を行う施設が対象となります。
出典:日本政策金融公庫 ご利用条件 ご融資の対象となる学校より引用
日本政策金融公庫の教育ローンは、ほとんどの学校で利用できる特徴があります。
ただし、子どもが進学する学校の中には、解説にもありますように、在籍する課程や学校教育法によらない学校にあてはまってしまっている場合があります。
そのため、進学する学校が対象になるのかどうか?不安な場合は、教育ローンコールセンターへ直接確認されることが最も望ましいでしょう。
【2つ目の条件】日本政策金融公庫の教育ローンで融資の対象となる世帯年収について
日本政策金融公庫の教育ローンに申し込みするためには、扶養している子どもの人数に即した世帯年収になっていなければならない条件があります。
世帯年収の具体的な金額は、以下の通りです。
出典:日本政策金融公庫 ご利用条件 ご利用いただける方(世帯年収(所得)の上限額について)より引用
上記画像にある金額は「世帯年収(所得)の上限額」であるため、世帯主だけなく配偶者など日常生活を一緒にしている人の収入も合わせた金額であることに留意しなければなりません。
ちなみに、上記画像にある所得金額(かっこ書きされている金額)は、自営業者のような「事業所得」がある人の所得上限額になっています。
つまり、会社員や公務員などのように給与所得がある人は、かっこ書きされていない方の金額(年収=額面金額)にあてはまっていれば良いことになります。
【世帯年収の確認】源泉徴収票や確定申告書で確認する方法
日本政策金融公庫の教育ローンは、融資を受けるための条件として、扶養している子どもの人数と世帯年収が関係していることがわかりました。
しかし、実際に自分はどうなのか?何を見て、どこの金額を確認すれば良いのか?わからない人もおられると思います。
そこで、ここでは世帯年収の確認方法を簡単に紹介します。
【給与所得者の人】源泉徴収票の「支払金額」に記載されている金額で年収確認
給与所得者の人で、勤務先から源泉徴収票を受け取っている人は、源泉徴収票の「支払金額」に記載されている金額で年収を確認します。
なお、源泉徴収票で年収確認をする年度は、原則として「前年のもの」です。
Q4-2 源泉徴収票はいつの分を提出すればいいのでしょうか。
年収(所得)は、原則として前年1年間について確認させていただきますので、前年のものをお願いいたします。
ただし、お申込み時点で勤務先から前年のものを受領していない場合は、前々年のもので構いません。
源泉徴収票を紛失してしまった場合は、勤務先から再交付を受けてご提出いただくようお願いいたします。
なお、お申込みいただいた後、別途年収(所得)のわかる書類を追加でご提出いただくこともございます。
出典:日本政策金融公庫 よくあるご質問 4. 必要書類に関すること Q4-2 源泉徴収票はいつの分を提出すればいいのでしょうか。より引用
たとえば、夫婦がいずれも会社員で共働きだったとし、扶養している子どもが3人いたとします。
このとき、まずは夫婦それぞれの源泉徴収票(前年分)を確認します。
そして、夫婦の年収を合算した結果、990万円以下であれば、日本政策金融公庫の教育ローンを申し込みするための条件を満たしていることになります。
【事業所得がある人】確定申告書の「所得金額等」に記載されている金額で所得確認
事業所得がある人は、所得税の確定申告書で所得金額を確認します。
一般的な事業を営んでいる人であれば「営業等」に記載された金額が事業所得の金額となります。
一方、農家などで農業所得がある人の場合は「農業」に記載された金額が事業所得の金額です。
なお、世帯年収(所得)を確認した結果、条件を満たしていなかったからといって諦めないでください。
【扶養している子どもが2人以内】世帯年収(所得)上限額の緩和条件について
日本政策金融公庫の教育ローンは、扶養している子どもが2人以内の場合、後述する9つの条件のうち、いずれかにあてはまっていれば、世帯年収990万円(所得790万円)まで上限額が緩和されることになっています。
1. 勤続(営業)年数が3年未満である場合
2. 居住年数が1年未満である場合
3. 世帯のいずれかの方が自宅外通学(予定)者である場合
4. 借入を申し込みした人またはその配偶者が単身赴任である場合
5. 子どもが海外留学をするための海外留学資金を目的として申し込みをした場合
6. 借入を申し込みした人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超である場合
7. 親族などに「要介護(要支援)認定」を受けている人がおり、その介護に関する費用を負担している場合
8. 大規模な災害により被災された人である場合(詳細確認)
9. 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて世帯の収入または所得が減少した人である場合(詳細確認)
上記9つの条件のうち、「8」または「9」の条件にあてはまりそうな場合、詳細確認をクリックして定められている条件をご確認ください。
ちなみに、広く多くの人にあてはまる可能性があるのは「3」の条件だと思われます。
たとえば、大学などへ子どもが進学することになり、いわゆる「県外の学校」へ進学する場合、3の条件にあてはまることになります。
【返済負担率の計算】「6」の条件について
返済負担率は、1年間で返済する借入金が年収(所得)に対してどのくらいなのかを見るための割合です。
一般に、返済負担率が高くなればなるほど、きつい返済をすることになると解され、これは教育ローンだけでなく住宅ローンの融資判断の1つとしても使われます。
なお、「6」の条件にかかる返済負担率は、以下のように行います。
たとえば、住宅ローンの返済が年間で120万円あったとし、ローンの申し込みをした人(給与所得者)の年収が500万円だったとします。
これに加え、日本政策金融公庫の教育ローンで借入したお金を年間で20万円返済することになったとしましょう。
このときの返済負担率は上記計算式にあてはめると以下のように計算されます。
計算の結果、返済負担率は「28%」になりました。(この例では「6」の条件を満たしていない)
あくまでも独立系FPとしての話となりますが、返済負担率が28%ですと少々厳しい返済生活を送ることになると感じます。
なお、返済負担率が「30%」を超えるような場合、かなり厳しい返済生活を強いられるものと思われます。
ちなみに、日本政策金融公庫の教育ローンは、子どもが大学などへ在学している間は、利息の支払いのみを行うことも可能です。
つまり、返済元金を据え置いて利息のみ支払うことになるため、お金にゆとりを持った返済をすることもできます。
【借入条件】融資可能額・金利・保証関係・返済期間・返済方法・返済措置について
ここからは、多くの人が知りたい借入条件を個別に紹介していきます。
【350万円以内または450万円以内】融資限度額について
日本政策金融公庫の教育ローンは、融資限度額について、子ども1人あたり350万円以内となっています。
ただし、以下4つの条件のどれか1つにあてはまる場合は、450万円以内で借入が可能です。
(1) 自宅外通学
(2) 修業年限5年以上の大学(昼間部)
(3) 大学院
(4) 海外留学(修業年限3ヵ月以上の外国教育施設に留学する場合)
出典:日本政策金融公庫 金利・ご返済方法 融資限度額より引用
まず、先に紹介した世帯年収(所得)上限額の緩和条件にもありましたが、いわゆる「県外の学校」へ進学する場合、「1」の条件にあてはまることになります。
そのため、このような場合、子ども1人あたり450万円まで借入することが可能です。
ちなみに、融資限度額は「子ども1人あたり」です。
そのため、たとえば、上の子と下の子がそれぞれ大学へ進学している場合などは、どちらもそれぞれ融資限度額まで借入できることになります。
【固定金利のみ】金利と利率について
日本政策金融公庫の教育ローンは、令和4年5月2日現在において、年1.80%(固定金利・保証料別)で融資をしています。
この金利は、金融情勢によって変動するため、実際に申し込みを行い、融資が実行された時点での金利と異なる場合がある点にあらかじめ留意しておく必要があります。
なお、以下の1から5にあるいずれかの条件にあてはまる場合は、年1.40%(固定金利・保証料別)で融資が受けられます。
1.交通遺児家庭(交通事故によって親が死亡したり親が重度の障害を負ったりした家庭)
2.母子家庭
3.父子家庭
4.世帯年収200万円(所得132万円)以内の人
5.子ども3人以上の世帯かつ世帯年収500万円(所得356万円)以内の人
なお、こちらの金利も金利情勢によって変動する注意点は、あらかじめ留意しておく必要があります。
【お金がかかる保証とかからない保証】保証関係について
日本政策金融公庫の教育ローンを借入する場合、お金がかかる保証かお金がかからない保証を選ぶ必要があります。
お金がかかる保証は、保証料を支払って(公財)教育資金融資保証基金に融資の保証をしてもらう方法になります。
一方、お金がかからない保証は、借入にかかる連帯保証人を立てる方法です。
連帯保証人は、進学者・在学者の4親等以内の親族(進学者・在学者の配偶者を除きます)をお立てください。また、連帯保証人は、お申込みいただく方と別居・別生計の方をご検討ください。その場合、予定連帯保証人の方の源泉徴収票または確定申告書(控)が必要となります。
出典:日本政策金融公庫 金利・ご返済方法 保証 連帯保証人より引用
親族で連帯保証人を引き受けてくれる人がいれば、保証料がかからない分、連帯保証人を立てた方が良いといえます。
その一方で、連帯保証人を頼みづらい場合や連帯保証人を引き受けてくれる人がいない場合は、保証料を支払って(公財)教育資金融資保証基金に融資の保証をしてもらう方法を選ぶ必要があるでしょう。
なお、保証料がどのくらいかかるのか?気になる人も多いと思います。
こちらにつきましては、以下、日本政策金融公庫のWEBサイトで保証料の目安を紹介しておりますので、そちらを参照ください。
【18年以内で完済】返済期間について
日本政策金融公庫の教育ローンの返済期間は、最長で18年間です。
Q6-4 何年間で返済すればよいのでしょうか。
ご返済期間は18年以内となっております。ご希望により、3年払い、5年払い、7年払いなど、自由に設定することができます。
出典:日本政策金融公庫 よくあるご質問 6. ご返済に関すること Q6-4 何年間で返済すればよいのでしょうか。より引用
上記解説にもありますように、あくまでも返済期間は最長18年間であり、返済期間は自由に設定することができます。
返済期間が長いと月々の返済金額は少なくて済みます。
ただし、長い期間に渡って借入するため、支払利息の負担が多くなってしまうデメリットがあります。
次項の解説で、日本政策金融公庫から教育ローンを350万円借入し、固定金利1.80%、返済期間18年間、元利均等返済(ボーナス払いなし)でシミュレーションをしたものを画像付きで紹介しております。これを見ることで、どのくらいの利息を支払うことになるのかわかります。
【毎月の返済額が同じ】返済方法について
日本政策金融公庫の教育ローンの返済方法は、元利均等返済です。
元利均等返済とは、返済元金と利息を合わせた金額が毎月一定金額になる返済方法のことをいいます。
上記画像は、日本政策金融公庫から教育ローンを350万円借入し、固定金利1.80%、返済期間18年間、元利均等返済(ボーナス払いなし)でシミュレーションをしたものです。
元利均等返済は、毎月の返済金額が同じ金額になる返済方法であり、画像を見ると、毎月の返済金額が18,982円(赤枠箇所)になっていることを確認できます。
つまり、今回のシミュレーションの場合、18年間(216ヶ月)に渡り18,982円ずつ返済することで完済となります。
【返済元金据え置き】返済措置について
日本政策金融公庫の教育ローンは、子どもの在学期間中に返済元金を据え置いて利息のみを支払することができます。
出典:日本政策金融公庫 金利・ご返済方法 返済方法 2. 在学期間中は利息のみのお支払が可能(元金据置)より引用
上記画像を見ますと、大学在学中の4年間は、元金据置していることがわかります。
この4年間は、毎月の利息1,500円のみ支払っています。(借入元金100万円)
そして、卒業後に元金と利息を合わせて毎月14,900円返済することになります。
【結びと予告】返済シミュレーションから無理のない返済と完済を考える
本ページでは、国の教育ローンである日本政策金融公庫の教育ローンについてポイントを幅広く紹介しました。
率直なところ、あまりにも内容が膨大になってしまい、返済シミュレーションと返済シミュレーションから無理のない返済と完済の考え方は次回に持ち越しすることにしました。
上記、関連記事は、本ページの2ページ目としての位置づけで公開しております。
そのため、合わせて読み進めていただくことをおすすめします。
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