本ページは、2020年9月に一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい)が実施したファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)の金融について、問題・解答・解説を紹介するものになります。

きんざいのFP2級実技試験の内、金融分野についての解説をしていきます。
目次
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2020年4月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第2問の問4から問6のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、金融の分野として、問4から問6までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第2問
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
【第2問】問4
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問4の解答および解説
①「13.01%」、②「3.16%」が、正しい解答です。
①は、ROE(自己資本利益率)を求める問題でしたが、計算式は以下の通りです。
ROE(自己資本利益率)=(当期純利益÷自己資本)×100
この時、問題文より自己資本は49期と50期の平均を用いる指定があることから、自己資本は196万円【(1,920,000+2,000,000)÷2】となるところに注意が必要です。
(255,000÷1,960,000)×100≒13.01%(四捨五入の指定に注意)

②は、配当利回りを求める問題でしたが、計算式は以下の通りです。
配当利回り=(1株あたりの年間配当金額÷1株購入価額)×100
上記計算式にあてはめるため、設例の財務データを基に1株あたりの年間配当金額を計算します。
1株あたりの配当金:96,000,000,000(配当総額)÷800,000,000(発行済株式数)=120円
1株あたりの配当金が120円であることがわかりましたので、後は、先の計算式にあてはめて計算します。
(120円÷3,800円)×100≒3.157→3.16%(四捨五入の指定に注意)

過去問題では、何度も出題されているため、しっかりと加点できるようにしておくことが大切!
【第2問】問5
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問5の解答および解説
①「×」、②「×」、③「×」が、正しい解答です。
①は、誤りです。
ISM(Institute for Supply Management)製造業景況感指数(Manufacturing Report on Business)とは、全米供給管理協会(ISM)が公表しているアメリカの製造業の景況感を示す指数のことをいいます。
300を超える製造業企業に対して「新規受注、生産、雇用、入荷状況、在庫」といった項目に関するアンケートを実施して、回答結果から指数を算出しています。
最新の状況を表し、しかも精度が高いとして信頼度も高いものになっています。
一般に、数値が50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退と判断されます。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集 ISM製造業景況感指数(アイエスエムせいぞうぎょうけいきょうかんしすう)より引用

②は、誤りです。
アメリカの雇用情勢を示す統計で、景気状況を探るうえで最も重要な指標のひとつです。
原則、毎月第1金曜日にアメリカ労働省から発表されます。
政府から最初に発表される前月の指標で、アメリカの景気の実体を表す最新の数値として、外国為替、株式、金利などのマーケットにも影響を与えるため、市場関係者が注視しています。
中でも最も注目される数字は、非農業部門雇用者数と失業率です。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集 米国雇用統計 (べいこくこようとうけい)より引用

米国雇用統計発表時は、為替相場も大きく値動きをします。
③は、誤りです。
2019年度は、3回の利下げを行ったことから問題は誤りです。

【第2問】問6
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問6の解答および解説
①「〇」、②「×」、③「×」が、正しい解答です。
①は、設問の通りです。
・株式購入時:3,800円×100株=380,000円
・株式売却時:4,000円×100株=400,000円
・売却益:20,000円(400,000-380,000円)
税法上、株式の売却益20,000円に対して20.315%の税金がかかります。

試験対策として合わせて押さえておきたいポイント!
②は、誤りです。
権利付最終日とは、株主がその銘柄を保有することで株主権利を得ることができる最終売買日(権利付最終日)を指します。
配当金や株主優待を取得するためには、各企業が定めている権利確定日に株主として株主名簿に掲載されている必要があります。
そのためには、権利確定日を含む3営業日前(権利付最終日)までに株式を購入しなければなりません。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集 権利付最終日(けんりつきさいしゅうび)より引用
上記解説も重要ですが、設例より決算期が2020年11月30日(月)となっており、土日の取り扱いがどのようになるのか?が解答をする上で重要なポイントになります。
結論から申し上げて、土日は日数にカウントしません。
つまり、11月28日(土)および11月29日(日)は、権利確定日を含む3営業日前に含めないことを意味します。
したがって、権利確定日を含む3営業日前とは、2020年11月26日(木)となるため問題は誤りです。

権利確定日を「含む」ところに注意!
③は、誤りです。
PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか、すなわち1株当たり純資産の何倍の値段が付けられているかを見る投資尺度です。
現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して割高か割安かを判断する目安として利用されます。
PBRの数値は、低いほうが割安と判断されます。
なお、PBR=1倍が株価の底値のひとつの目安(株価と資産価値が同じ)とされてきましたが、近年は長い間1倍を下回ったままの銘柄も多くなり、必ずしもPBRの1倍割れだけを底値の判断基準とすることはできなくなっています。
出典 SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集 PBR/株価純資産倍率(ピービーアール/かぶかじゅんしさんばいりつ)より引用
問題文では、「PBRが高い方が株価は割安」と記載されているため誤りです。

ただし、試験対策として、PBRの計算もできるようにしておくようにすることは言うまでもありません。
PBR(倍):株価÷1株あたりの純資産
1株あたりの純資産の計算は、以下の通りですが、桁が大きいので、発行済株式数は、100万円単位の数値に置き換えて計算しています。
(8億株÷100万=800)
・1株あたりの純資産:2,000,000(純資産の部合計)÷800(発行済株式数)=2,500円
・3,800円÷2,500円=1.52倍
参考までに、計算式と計算過程も紹介しました。
試験内容全体を見ての当事務所の勝手な見解
今回の試験では、金融業務に携わっている人とそうではない人で、出来が大きく左右する内容であったと思われます。
特に、問5については、株式や為替に携わっていないとわからない場合が多かったと推測され、かつ、過去問題で出題されたこともありませんでした。
そのため、問4および問6でいかに加点することができたかが大きなポイントになったのではないかと筆者は感じています。
ただし、FP資格試験では法改正や昨今の経済情勢なども出題されることがあるのは当然のことです。
したがって、出題頻度が高い問題をしっかりと解けるようにしておくことが合格への最重要ポイントであることを改めて感じさせる出題であったと思っています。

なお、2020年9月試験における税金分野につきましては、以下、当事務所のリンクから合わせて確認することができます。