本ページは、2020年9月に一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい)が実施したファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)のライフプランニング・リタイアメントプランニングについて、問題・解答・解説を紹介するものになります。
きんざいのFP2級実技試験(個人資産相談業務)の内、ライフプランニング・リタイアメントプランニングの分野について解説していきます。
目次
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2020年4月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第1問の問1から問3のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、ライフ・リタイアメントプランニングの分野として、問1から問3までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第1問
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
【第1問】問1
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問1の解答および解説
①「781,700円」、②「961,229円」、③「650円」、④「961,879円」が、正しい解答です。
①は、老齢基礎年金を計算するいつもの定番問題です。
今回出題された設例において、老齢基礎年金を計算する上で注意すべきポイントはありませんでした。
つまり、過去問題をしっかりと解いていれば確実に加点できる「サービス問題」と言えます。
なお、設例よりAさんは、20歳から60歳までの40年間に渡って、すべて国民年金保険料を納めていると仮定されることから、解答を導き出すための計算式は以下のようになります。
781,700円×480月/480月=781,700円
②、③、④は、老齢厚生年金を計算する問題であり、こちらもいつもの定番問題です。
与えられた資料の計算式にあてはめて計算することで容易に解答をすることができます。
a:167,580円(280,000円×7.125/1000×84月)
b:793,649円(400,000円×5.481/1000×362月)四捨五入を忘れない
i:報酬比例部分の額=a+b 961,229円
ⅱ:経過的加算額=650円(1,626円×446月-781,700円×446月/480月)四捨五入を忘れない
老齢厚生年金の額=ⅰ+ⅱ(961,229円+650円=961,879円)
なお、今回の設例において、老齢厚生年金に加給年金は加算されません。
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます。
対象者 | 加給年金額 | 年齢制限 |
配偶者 | 受給権者の生年月日が昭和18年4月2日以後 390,900円(特別加算額含む) | 65歳未満であること (大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません) |
1人目・2人目の子 | 各224,900円 | 18歳到達年度の末日までの間の子 または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子 |
3人目以降の子 | 各75,000円 | 18歳到達年度の末日までの間の子 または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子 |
出典 日本年金機構 加給年金額と振替加算 加給年金(定額部分が支給されている場合に限ります)より一部引用
設例よりAさん(47歳)の配偶者であるBさんは48歳です。
仮に、Aさんの年齢が65歳に達した時、Bさんは66歳になっていることが考えられ、上記表の加給年金が支給される配偶者の条件に該当しません。
また、長女Cさんはすでに19歳であることから、同様に該当することはありません。
これらの理由から老齢厚生年金に加給年金が加算されることはないと判断することができます。
忘れた場合は、曖昧にせず、テキストでもう一度振り返るほか、日本年金機構のWEBサイトで確認しておきましょう。
【第1問】問2
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問2の解答および解説
①「ホ」、②「ロ」、③「チ」が、正しい解答です。
問2は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に関する問題でした。
①は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する場合における掛金上限の問題です。
設例より、妻Bさんは会社員で、勤務先では確定拠出年金の企業型年金およびほかの企業年金を実施していないことから、以下のように判定することができます。
出典 iDeCo公式サイト iDeCoをはじめよう【ステップ2】掛金を決める!より引用
上記画像より、妻Bさんの場合、iDeCoの掛金上限は「月額23,000円」、「年額276,000円」となります。
②は、iDeCoで資産形成したお金を受け取る年齢に関する問題です。
受給開始年齢:60歳から年金資産を受け取るには、個人型確定拠出年金に加入していた期間等(通算加入者等期間)が10年以上、必要です。通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始年齢が繰り下げられます。
出典 iDeCo公式サイト 加入者の方へ 年金資産の受け取り(給付)についてより引用
問題では、Aさんおよび妻Bさんが60歳到達時に・・・となっていることから、10年以上にあたる「ロ」が正しい解答となります。
③は、以下の通りです。
iDeCoの最大の特徴は、以下の3つの税制優遇メリットがあることです。
① 掛金が全額所得控除されます。
確定拠出年金の掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、課税所得額から差し引かれることで所得税・住民税が軽減されます。② 確定拠出年金制度内での運用益が非課税となります。
金融商品の運用益は課税(源泉分離課税20.315%)対象となりますが、確定拠出年金内の運用商品の運用益については、非課税扱いとされています。③ 受給時に所得控除を受けられます。
受給年齢に到達して確定拠出年金を一時金で受給する場合は「退職所得控除」、年金で受給する場合は「公的年金等控除」の対象となります。
出典 iDeCo公式サイト iDeCoってなに?よくあるご質問 iDeCoにはどのようなメリットがありますか。より引用
1月1日から12月31日までに支払ったiDeCoの掛金は、その全額が、小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、所得税および住民税の税負担を軽減できる効果が期待できます。
なお、FP試験対策としては、iDeCoで資産形成したお金を受け取る場合における、上記③のポイントも合わせて押さえておきたいものです。
・一括で受け取る場合:退職所得の取り扱い(退職所得控除が適用できる)
・年金(分割)で受け取る場合:雑所得の取り扱い(公的年金等控除が適用できる)
そのため、金額や取り扱いは要チェックです。
【第1問】問3
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問3の解答および解説
①「〇」、②「×」、③「×」が、正しい解答です。
①は、設問の通りです。
特別支給の老齢厚生年金を受け取るためには、以下の条件を満たしていなければなりません。
・男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
・女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
・厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
・60歳以上であること。
出典 日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金 特別支給の老齢厚生年金についてより引用
設例よりAさんおよびBさんは、上記の内、生年月日の要件が該当しないため、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることはできません。
昭和36年、昭和41年は要チェックです。
②は、誤りです。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、原則として、60歳まで資産を引き出すことができないため、任意に中途脱退することはできません。
この時、お金を途中で引き出せないことが大原則となることをお客様へ必ず伝えておくことが極めて重要!
③は、誤りです。
日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務づけられていますが、学生については、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
本人の所得が一定以下の学生が対象となります。
なお、家族の方の所得の多寡は問いません。
出典 日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度 1.対象者より引用
国民年金の学生納付特例は、本人の所得が一定金額以下であることが求められています。(FPの試験において、一定金額についてまで問われることはありません)
問題文では、両親にあたるAさんおよびBさんの所得が一定額以下とされていることから、誤りであると判断することができます。
試験問題全体から見た当事務所の勝手な見解
試験問題全体を見て、本ページを作成した時に感じたことがあります。
それは、FPの実務上、重要な分野が集中して問われてきているという点です。
たとえば、2020年1月試験では、老後資金対策として、国民年金基金や小規模企業共済が出題されました。
一方、2020年6月は、新型コロナウィルスの影響で試験が中止となりましたが、2020年9月試験では、iDeCo(個人型確定拠出年金)が出題されました。
FPの実務上、いずれも、将来の老後資金対策として欠かすことができない知識です。
また、相談する相手によって、適用することができる制度と適用することができない制度もあるため、これらについても知っておくことが試験対策にもなり得るのではないかと筆者は感じています。
個人的には、上記問題を受験する人に対して問うてみたいですし、FPの実務上、良いプランニングをするための重要なポイントになります。
実技試験と呼ばれる試験だけに、FP実務に関することや実務上、あたりまえに知っておいてほしいことを問われることが多くなっている試験です。
とはいえ、試験問題はパターン化されているため、過去問題を何度も繰り返し解くことで、合格を十分掴み取れる試験であることは確かです。
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なお、2020年9月試験の金融分野における解答解説は、以下、当事務所のリンクより合わせて確認することができます。