本ページは、2020年9月に一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい)が実施したファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)の相続・贈与について、問題・解答・解説を紹介するものになります。
きんざいのFP2級実技試験の内、相続・贈与分野についての解説をしていきます。
目次
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2020年4月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第5問の問13から問15のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、相続・贈与の分野として、問13から問15までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第5問
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
【第5問】問13
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問13の解答および解説
①「×」、②「〇」、③「〇」が、正しい解答です。
①は、誤りです。
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
平成31年4月1日~令和2年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
令和2年4月1日~令和3年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
令和3年4月1日~令和3年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
出典 国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 2 非課税限度額 ロ 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合より引用
「解答にあたっての注意事項」より、2020年4月1日現在の法令等に基づいて解答することから、上記表の赤色部分が正しい解答となります。
問題では、省エネ等住宅で最高3,000万円、一般住宅で最高2,000万円と記載されていることから誤りです。
今後、出題頻度が高くなる可能性もあるため、要チェックされることをおすすめします。
②は、設問の通りです。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度には、「受贈者の要件」や「住宅にかかる要件」をいずれも満たしている必要があります。
問題文に記載されている要件は、一部となりますが、いずれも正しい所定の要件です。
なお、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度の試験対策として、やはり、数字やキーワードをしっかりと押さえておきたいものです。
・直系尊属
・贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上
・合計所得金額が2,000万円以下
・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること
・50㎡以上240㎡以下
③は、設問の通りです。
ただし、相続時精算課税制度の適用を受ける場合において、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」の適用を受ける場合には、同特例適用後の住宅取得等資金について贈与税の課税価格に算入される住宅取得等資金がある場合に限り、この特例の適用がある点に注意が必要です。
【第5問】問14
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問14の解答および解説
①「4,800万円」、②「6,885万円」、③「30,870万円」が、正しい解答です。
①は、相続税の基礎控除額を計算する問題です。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
設例より、Aさんが死亡した場合における法定相続人は、配偶者である妻Bさん、子供にあたる長男Cさん、二男Dさんの3人です。
したがって、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が正しい解答となります。
②は、それぞれの法定相続人に対して課される相続税の計算問題です。
解答までの計算過程は、以下の通りです。
・課税遺産総額:8億5,200万円(9億円-4,800万円)
・妻Bさんの相続財産:8億5,200万円×1/2=4億2,600万円
・長男Cさんの相続財産:8億5,200万円×1/4=2億1,300万円
・二男Dさんの相続財産:8億5,200万円×1/4=2億1,300万円
課税遺産総額を法定相続分で分けてから、相続税の速算表にあてはめて相続税の計算をします。
・妻Bさんの相続税:4億2,600万円×50%-4,200万円=1億7,100万円
・長男Cさんの相続税:2億1,300万円×45%-2,700万円=6,885万円
・二男Dさんの相続税:2億1,300万円×45%-2,700万円=6,885万円
②の解答は、上記計算結果の通りです。
相続税の総額:1億7,100万円+6,885万円+6,885万円=3億870万円(30,870万円)
③の解答は、上記計算結果の通りです。
法定相続人の数を間違えてしまいますと、ドミノ式で間違えることになるため、代襲相続や養子縁組をしている場合といった特殊な事情もしっかりと計算できるようにしておきましょう。
【第5問】問15
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問15の解答および解説
①「ニ」、②「チ」、③「ロ」、④「ヌ」が、正しい解答です。
①は、遺留分の金額を計算する問題です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人のために、法律で保障されている一定割合の相続分のことです。
遺言によって、この遺留分より少ない相続分しか与えられなかった相続人は、遺留分減殺請求をすることにより、遺言の中で遺留分を侵害している部分の効果を覆すことができます。
遺留分の割合は、相続人が直系尊属(父母または祖父母)のみの場合は3分の1、その他の場合は2分の1です。
各相続人の遺留分は、法定相続分にこれらの割合(2分の1または3分の1)を掛けたものになります。
なお、この、その他の場合とは、①子又はその代襲者(子が死亡している場合の孫等)だけが相続人である場合、②配偶者だけが相続人である場合、③配偶者と子又はその代襲者(子が死亡している場合の孫等)が相続人である場合、④配偶者と直系尊属が相続人である場合のことを言います。
出典 茨城司法書士会 よくある質問 遺留分とはなんですか?より引用
上記解説より、今回の問題(財産9億円)の場合、法定相続人は、配偶者と子供になることから、遺留分は、法定相続分に2分の1を乗じた金額となります。
・妻Bさんの相続財産:9億円×1/2=4億5,000万円
・長男Cさんの相続財産:9億円×1/4=2億2,500万円
・二男Dさんの相続財産:9億円×1/4=2億2,500万円
上記の相続財産に2分の1を乗じた金額が遺留分です。
・妻Bさんの遺留分:4億5,000万円×1/2=2億2,500万円
・長男Cさんの遺留分:2億2,500万円×1/2=1億1,250万円
・二男Dさんの遺留分:2億2,500万円×1/2=1億1,250万円
②は、公正証書遺言に関する問題です。
民法第974条では、遺言の証人について以下のように定めています。
第974条次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
1.未成年者
2.推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
3.公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
上記の理由より、妻Bさんや長男Cさんは、遺言の証人になることはできません。
③および④は、小規模宅地の特例に関する問題です。
設例よりX社本社敷地は、500㎡であり、特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地の特例は、400㎡まで80%が減額されます。
9,000万円×400㎡/500㎡×80%=5,760万円(減額される金額)
9,000万円-5,760万円=3,240万円(課税価格に算入される金額)
なお、自宅敷地とX社本社敷地について、いずれも小規模宅地の特例の適用を受けることができます。
ただし、それぞれの宅地の適用対象の限度面積までとなるため、先に解説した按分計算をしなければならない場合がある点に注意が必要です。
試験内容全体を見ての当事務所の勝手な見解
今回の試験問題は、過去問題でも度々、出題された問題が多かった印象を受けます。
そのため、さほど難しい問題であったとは言い切れないと筆者は感じています。
特に、相続税の計算、遺留分、小規模宅地の特例は、出題される頻度もかなり高いことから、過去問題をしっかりと繰り返し解くことによって、容易に加点できたことが伺えます。