本ページは、2020年9月に一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい)が実施したFP技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)の税金について、問題・解答・解説を紹介するものになります。
きんざいのFP2級実技試験の内、税金分野についての解説をしていきます。
目次
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2020年4月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第3問の問7から問9のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、税金の分野として、問7から問9までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第3問
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
【第3問】問7
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問7の解答および解説
①「ヘ」、②「イ」、③「ホ」が、正しい解答です。
通常の医療費控除額の算式は、以下の通りです。
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額(1) 保険金などで補てんされる金額
(例) 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注) 保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
(2) 10万円
(注) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
出典 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)3 医療費控除の対象となる金額より引用
セルフメディケーション税制は、以下の通りです。
平成29年1月1日以後に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、自己がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときは、通常の医療費控除との選択により、その年中の特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金等により補填される部分の金額を除きます。)のうち、1万2千円を超える部分の金額(8万8千円を限度)を控除額とするセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の適用を受けることができます。
出典 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)5 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)より引用
1月1日から12月31日までにおける1年間の医療費を集計し、有利な方を選択して適用することで節税対策になります。
【第3問】問8
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問8の解答および解説
①「×」、②「〇」、③「〇」が、正しい解答です。
①は、誤りです。
設例よりAさんは、白色申告者であることが確認できるため、不動産所得で損失が生じたとしても、その損失を繰越控除することはできません。
②は、設問の通りです。
妻Bさんは、専業主婦であり、無収入であることが設問から確認できるため、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。
③は、設問の通りです。
医療費控除の適用を受けるには、確定申告をしなければならず、年末調整で適用を受けることはできません。
【第3問】問9
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問9の解答および解説
①「5,300,000円」、②「630,000円」、③「480,000円」が、正しい解答です。
①は、Aさんの総所得金額を計算する問題です。
設例より、Aさんは会社員ですが、収入は、給与収入と不動産所得の2つの収入があり、それぞれの所得金額を計算します。
・Aさんの給与所得控除額:800万円×10%+120万円=190万円(資料の給与所得控除額にあてはめて計算)
・Aさんの給与所得:800万円-190万円=610万円
・Aさんの不動産所得:▲80万円(解説します)
・総所得金額=530万円(610万円-80万円)
設例より、不動産所得は、▲100万円ですが、土地等の取得に係る負債の利子20万円が含まれています。
この時、土地等の取得に係る負債の利子20万円は、不動産所得を計算する上で必要経費に算入されないため、除外する必要があります。
▲100万円+20万円=▲80万円
なお、給与所得と損失が生じた不動産所得は、損益通算することができるため、この計算の結果、Aさんの総所得金額は、530万円となります。
②は、扶養控除を計算する問題です。
設例より、長女Cさんは20歳で無収入のため、扶養控除の対象です。
ただし、Cさんは、年齢が20歳であることから特定扶養親族に該当し、扶養控除の金額は63万円です。
・「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
・特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
出典 国税庁 No.1180 扶養控除 4 扶養控除額の金額より引用
こちらも過去問題をしっかりと繰り返し解いていた人は、すんなり解けているはず。
③は、基礎控除を計算する問題です。
問題文より、Aさんの2020年分の所得税における・・・とあることから、2020年(令和2年)12月31日時点における基礎控除がいくら適用されるのか?が問われています。
[令和2年4月1日現在法令等]
確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる控除の一つに基礎控除があります。
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。
出典 国税庁 No.1199 基礎控除より引用
Aさんの合計所得金額は530万円ですから、上記画像にあてはめますと基礎控除の金額は48万円になることがわかります。
法改正による出題がなされましたが、こちらにつきましては、容易に解けた人も多かったと思われます。
試験内容を全体的に見た当事務所の勝手な見解
法改正によって変更になった基礎控除の問題が出題されたものの、全体的にかなり解きやすい問題であったと感じています。
当事務所が推奨している、過去3年分の過去問題を3回繰り返して解くことをしっかりと行っていれば、何ら難しいところはなかったのではないかと率直に感じています。
これまで出題された過去問題と比較しても、全体的にやさしい問題が多く、加点しやすいサービス問題が多い印象です。