本ページは、2020年1月に一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい)が実施したファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)のライフプランニング・リタイアメントプランニングについて、問題・解答・解説を紹介するものになります。
きんざいのFP2級実技試験の内、ライフプランニング・リタイアメントプランニングの分野について解説していきます。
目次
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2019年10月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第1問の問1から問3のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、ライフプランニング・リタイアメントプランニングの分野として、問1から問3までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第1問
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
【第1問】問1
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問1の解答および解説
①「731,344円」、②「265,637円」、③「20年」が、正しい解答です。
①は、老齢基礎年金を計算するいつもの定番問題です。
今回のポイントは、20歳から22歳までの30月に渡って適用を受けている「国民年金学生納付特例」が、老齢基礎年金を計算する上でどのような取り扱いになるのか?になります。
なお、国民年金学生納付特例における老齢基礎年金の取り扱いは、以下の通りです。
老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料の納付済期間等が10年以上必要ですが、学生納付特例制度の承認を受けた期間は、この10年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれることとなります。
ただし、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。
(注:満額の老齢基礎年金を受け取るためには、40年の保険料納付済期間が必要です。)
出典 日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度 4.老齢基礎年金との関係より一部引用
上記、日本年金機構の解説より、20歳から22歳までの30月は、老齢基礎年金の支給を受けるための受給資格期間に含まれます。
その一方で、老齢基礎年金を計算する上において、年金額の計算には含められません。
したがって、20歳から22歳までの30月を除く450月(173月+277月)が、老齢基礎年金を計算する上で含めることになる月数となります。
780,100円×450月/480月≒731343.75円
問題文より、年金額の端数処理は、円未満四捨五入の指定があるため、731,344円が正しい解答となります。
②は、老齢厚生年金を計算する問題であり、こちらもいつもの定番問題です。
与えられた資料の計算式にあてはめて計算することで容易に解答をすることができます。
a:0円(年金加入履歴より、2003年3月以前の厚生年金加入期間がないため)
b:265,500円(280,000円×5.481/1000×173月)四捨五入を忘れない
i:報酬比例部分の額=a+b 265,500円
ⅱ:経過的加算額=137円(1,626円×173月-780,100円×173月/480月)四捨五入を忘れない
老齢厚生年金の額=ⅰ+ⅱ(265,500円+137円=265,637円)
忘れた場合は、曖昧にせず、テキストでもう一度振り返るほか、日本年金機構のWEBサイトで確認しておきましょう。
③は、加給年金の問題であり、こちらもいつもの定番問題です。
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます。
出典 日本年金機構 加給年金額と振替加算 加給年金(定額部分が支給されている場合に限ります)より一部引用
確実に加点できるような試験対策を行いましょう。
【第1問】問2
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問2の解答および解説
①「ニ」、②「ヘ」、③「ヌ」、④「ト」が、正しい解答です。
①は、付加年金の問題です。
付加年金は、1ヶ月あたりの付加保険料が「400円」で、付加年金額は、「200円×付加保険料納付済月数」といった重要ポイントを押さえておくことで解ける問題です。
したがって、「200円×180月=36,000円」となるため、「ニ」が正しい解答になります。
②と③は、国民年金基金の問題です。
解答における解説は、以下の通りです。
掛金の上限は、月額6万8,000円です。
給付の型及び加入口数は、掛金月額6万8,000円以内で選択できます。
(ただし、個人型確定拠出年金にも加入している場合は、その掛金と合わせて6万8,000円以内となります。)確定年金の年金額が終身年金の年金額をこえる選択はできません。
出典 国民年金基金 掛金についてより一部引用
この68,000円という数字はしっかりと押さえておきましょう。
④は、小規模企業共済にかかる問題です。
解答における解説は、以下の通りです。
掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
出典 中小機構 小規模企業共済 掛金について 掛金月額より引用
この70,000円も試験対策上、重要な数字です!
【第1問】問3
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問3の解答および解説
①「〇」、②「×」、③「×」が、正しい解答です。
①は、設問の通りです。
①は、年金の繰り上げ支給に関する問題ですが、試験対策で押さえておくべき数字(キーワード)は、年金を繰り上げ支給した場合の減額率および年金を繰り下げした時の増額率です。
加えて、年金の繰り上げは何歳から行うことができるのか、年金の繰り下げは何歳まで行うことができるのかといったことも試験対策で押さえておくべき数字(キーワード)だと当事務所では考えています。
こちらはテキストで確認しておいて下さいって言いたいのが本音ですが、学習効率も考えて、ここでお伝えしておきます。
年金を繰り上げ支給した場合の減額率=1ヶ月あたり0.5% 60歳から64歳まで行うことができる
年金を繰り下げ支給した場合の増額率=1ヶ月あたり0.7% 66歳から70歳まで行うことができる
出典 日本年金機構 老齢基礎年金の繰上げ受給 繰上げ減額率早見表より引用
上記図の赤枠部分が解答となりますが、年金の繰り上げ支給の問題を解く場合、押さえておくべきポイントは「60歳0ヶ月で、年金の繰り上げを行った場合、年金が30%減額になる」ところにあります。
後は、そこから1ヶ月経過するごとに0.5%ずつ減額率が減っていくことを押さえておけば、62歳0ヶ月での減額率は、18%になると導き出すことができるわけです。
その時の解説をそのまま使っています!
②は、誤りです。
国民年金の付加保険料や国民年金基金の掛金には前納による割引制度があり、以下を参考にして下さい。
出典 日本年金機構 国民年金付加年金制度のお知らせより引用
【4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると掛金が割引されます】
4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると0.1か月分の掛金が割引されます。
出典 国民年金基金 掛金について 4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると掛金が割引されます より一部引用
③は、誤りです。
小規模企業共済の掛金は、事業所得の必要経費にはならず、小規模企業共済等掛金控除として1月1日から12月31日までの1年間で支払った掛金の全額が所得控除の対象になります。
掛金は税法上、全額を小規模企業共済等掛金控除として、課税対象となる所得から控除できます。
また、1年以内の前納掛金も同様に控除できます。
なお、掛金は、共済契約者ご自身の収入の中から払い込んでいただきますので、事業上の損金または必要経費には算入できません。
出典 中小機構 掛金について 税法上の取扱いより引用
そのため、高い節税効果を得ながら将来の退職金を積立できるメリットがある。
試験問題全体から見た当事務所の勝手な見解
率直に感じたのが、例年通りの問題という印象です。
決して、難しくはなく、過去問題をしっかりとこなしていれば容易に解答ができるものが多いと感じます。
今回は、相談者が会社員ではなく個人事業主ということもあり、会社員では加入できない「付加年金」、「国民年金基金」、「小規模企業共済」の問題が多く出題されました。
FP実務においても、相談者の職業や家族構成などによって、プランニングの仕方やアドバイスが異なってきます。
ただし、今回出題された問題は、FP実務においても当たり前に活用する知識であるため、試験対策上だけではなく、資格試験に合格した後も見据えてしっかりと理解しておきたいものです。
なお、2020年1月の金融分野における解答・解説は、以下、当事務所のリンクから合わせて確認することができます。
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