本ページでは、パートやアルバイトでも住宅ローンは組めるのかといった疑問について、現役の独立系ファイナンシャルプランナー(FP)が、考えておくべきポイントをわかりやすく解説していきます。
(本ページは、2017年11月8日に公開した記事を2020年8月に大幅に改編して再掲載しています)
はじめに、パートやアルバイトといった職業を問わず、これから住宅購入を検討されている人にとってみますと、そもそも自分は、住宅ローンを借入することができるのかとても気になると思います。
実際、住宅ローンを借入するには、住宅ローンを申し込んだ金融機関の審査に通過する必要があるのですが、住宅ローンの審査項目は多岐に渡ります。
そのため、住宅ローンを申し込みした人を総合的に勘案した結果、融資の可否が決定されることになるわけですが、今回は、パートやアルバイトといった職業に就いている人に焦点をあて、住宅ローンを組むことができるのかについて、実際に当事務所へメールで届いた内容を相談事例としてポイントの解説を進めていきます。
相談事例【パートでも住宅ローンは組めるのか】
私は、30歳の男の子2人(4歳、1歳)の母親です。
現在は看護師としてパートで働いており、年収は130万弱におさえています。
旦那は32歳会社員です。
旦那の実家建て替え(3年前)時、義理親ではローンが組めないという理由で旦那が住宅ローンを組んでいます。(同居してほしいとのことで建てたそうですが私が同居拒否しました。)
旦那がローンを組んでいるためにマイホームは無理だと言われていたのですが、子供も成長してきたし、私たち夫婦も30歳をこえ、私たちだけのマイホームの夢が捨てきれず…
私単独で住宅ローンは組むことが出来るのでしょうか?
その場合、子供がまだ小さいのでパートで働きたいのですが、勤務日数、時間を伸ばしてギリギリまで働くつもりです。
パートでもローンは組めるのか?
組めるのならば、年収どれくらいは必要か?
勤続年数は関係あるのか?
フラット35であれば組めそうですか?
安い建売住宅でも構いません。
マイホームがほしいので、もし望みがあるならと思い質問いたしました。
お願いします。
出典 ファイナンシャルプランナーjp パートでも住宅ローンは組めるのかより引用(2017年11月8日に質問)
上記の相談内容を一通り読み進めますと、相談者さんが、とにかく自分のマイホームを望まれていることが伺えます。
この相談内容を基に、まずは、それぞれの質問について、筆者個人の見解や考えておくべきポイントを解説していきます。
相談内容1.私単独で住宅ローンは組むことが出来るのでしょうか?
相談内容のみを考慮しますと、相談者さんが単独で住宅ローンを組むのはかなり難しいと考えられます。
この理由として、看護師であるもののパートという身分、年収が130万円弱といった目に見える情報のみを考慮した結果です。
また、この情報のみを考慮しますと、少なくとも民間金融機関が取り扱っている住宅ローンの申し込み要件から外れることが考えられ、相談内容にあるフラット35でなければ住宅ローンの借入が難しいと推測されます。
なお、こちらは筆者個人の主観となる部分ですが、ご主人が実家の建て替えで住宅ローンをすでに抱えていることも気になります。
仮に、相談者さんが住宅ローンを単独で借入することができた場合、世帯単位で考慮しますと、住宅ローンの返済を夫と本人がそれぞれ別々に行う必要があるほか、将来の子供にかかるお金や住宅の維持費など、その他のお金も多くかかることが十分予測されます。
この時、住宅ローンの返済が途中で滞るデフォルトリスクを懸念してしまうのは、おそらく筆者だけではないと思います。
特殊な事情があるだけに、このデフォルトリスクを懸念されないような対策も必要になるのではないかと筆者は感じています。
相談内容2.パートでもローンは組めるのか?
通常、住宅ローンの借入をするためには「申込者に安定かつ継続した収入が見込まれること」があり、これは、民間金融機関をはじめとした住宅ローンの商品説明書にも記載されています。
出典 イオン銀行 イオン銀行住宅ローン 商品概要説明書より引用
上記画像は、イオン銀行の住宅ローン商品概要説明書の一部を抜粋引用したものとなりますが、イオン銀行に限らず、住宅ローンを取り扱っているすべての金融機関では、住宅ローンの申込者に対して、安定かつ継続した収入が見込まれることを融資の条件としていることと理解して差し支えありません。
この時、相談者さんは看護師でありながらもパートといった身分であり、いわゆる「非正規労働者」であることから、はたして安定かつ継続した収入が見込まれるのかどうかには疑問が残ります。
ただし、看護師といった職業を考慮しますと、少なくとも専門性のある職業と見ることもできるため、正社員への登用や転職して正社員として看護師で働くといった対策が行えることで、収入面の懸念はかなり軽減されるのではないかと筆者は考えます。
住宅ローンを融資する側の立場になって考えることも大切
仮に、お金の貸し借りを行う場合で、ご自身がお金を貸す立場であった時、ユーザーの皆さまは、どのような人にお金を貸し、どのような人にお金を貸さないでしょうか?
少なくとも「信用のある人やお金をしっかりと返してくれそうな人」に対してお金を貸すのではないでしょうか?
住宅ローンもこれと全く同じです。
たとえば、相談内容にある「子供が小さいためパートで働きたいですが、勤務日数、時間を伸ばしてギリギリまで働くつもり」といった要望は、はたして住宅ローンを融資する側からしますとどのような印象を持つのでしょう?
もしも、筆者がお金を貸す立場でしたら、以下のように考えます。
・子供が小さいためパートで働きたい:自分本位の考え方であって、お金を融資する側のこっちには全く関係ない
・勤務日数、時間を伸ばしてギリギリまで働くつもり:本当にそれができるのか?あくまでも自分本位の話の段階であり勤務先が確実に認めるのか?ギリギリまで働いてどのくらい収入が変わるのか?継続可能なのか?
上記を見ますと、感じが悪いと思われたユーザーの皆さまもおられるかもしれませんが、これは、慈善事業ではなくビジネスなのです。
したがって、自分本位の主張をする以前に、住宅ローンを融資する側が、お金を貸してもいいと思うような対策を取っておくことが求められます。
相談内容3.組めるのならば、年収どれくらいは必要か?
住宅ローンを借入するためには、申込者の年収や所得金額がどのようになっているのか重要視されることは確かです。
しかしながら、年収や所得金額の高低以前に、住宅ローンの申込者の信用に問題がないかどうかが融資可否の大前提となります。
具体的には、住宅ローンを申し込みする人の「個人信用情報に問題がないかどうか」がまずもって問われるということです。
したがって、そもそも個人信用情報が何なのかわからないといった人は、以下、当事務所が公開している個人信用情報の記事内容を基に、どのようなことが問われるのか必ず知っておく必要があります。
仮に、個人信用情報に何ら問題がない場合、実際に希望する融資金額や融資条件がどのようなものなのかによって、必要な年収金額なども変わってきます。
そのため、住宅ローンは「年収や所得金額が〇万円以上あれば借入できる」といった単純明快なものではないことをまずもって理解しておく必要があります。
相談内容4.勤続年数は関係あるのか?
通常、住宅ローンの審査項目の1つとして「勤続年数がどのくらいなのか」があり、こちらも民間金融機関をはじめとした住宅ローンの商品説明書に記載されています。
出典 イオン銀行 イオン銀行住宅ローン 商品概要説明書より引用
相談者さんの場合、看護師としてパートで働いていることから、給与所得者に該当します。
仮に、イオン銀行の住宅ローンを申し込みするためには、勤続年数が6ヶ月以上あることが求められていることがわかります。
ポイントは、実際に住宅ローンの申し込みを希望している金融機関の住宅ローン商品説明書を閲覧し、勤続年数の条件を満たしているのか確認しておくことが大切です。
勤続年数の虚偽は住宅ローンの融資対象外
こちらは当然のことですが、勤続年数の虚偽は住宅ローンの融資対象から外れることになります。
勤続年数は、住宅ローンの審査を行う上で提出が求められる「源泉徴収票」や「過去3年分の確定申告書」などで、勤務実績や事業実績を容易に確認することができます。
そのため、虚偽を行ったところで簡単にバレるだけに留まらず、結果として住宅ローンの融資が受けられないことにつながります。
ただ、無駄な時間と労力を消費することになるだけですので、絶対に避けるようにしましょう。
相談内容5.フラット35であれば組めそうですか?
今回の相談内容を総合的に考慮しますと、民間金融機関が取り扱っている住宅ローンの申し込みは難しく、フラット35であれば申し込みをすることは可能だと言えます。
ただし、あくまでも申し込みが可能であるだけに留まっており、実際に住宅ローンの融資が受けられるかどうかは全くの別問題となります。
したがって、住宅ローンを組むことができるのかどうかについては、断言することはできないものの、やはり住宅ローンの審査に通過するためのプラスの要素が現状では足りないと筆者は感じています。
なお、多くの金融機関が重視している住宅ローンの審査項目は、以下、当事務所が公開している記事から確認することができるため、自分自身は問題なさそうなのか一度、一通り確認されてみることが望ましいでしょう。
パートやアルバイトで住宅ローンを組むことを長期目線で考える
住宅ローンは、実際に申し込みを行い、審査を経て融資が決定することがゴールではありません。
住宅ローンの返済を滞ることなく継続して完済することが本当のゴールです。
このように考えた時、住宅ローンは、完済までの期間が長く続く借金であるため、パートやアルバイトで住宅ローンを組むのであれば、少なくとも以下の内容について、個別具体的にどのような対応をするのか考えておく必要があります。
購入した住宅を維持するお金はどのように捻出するのか
住宅ローンを借入し念願のマイホームを取得した場合、原則として、取得した土地や建物などの不動産にかかる不動産取得税を納めなければなりません。
また、住宅を取得し所有するということは、毎年、固定資産税や都市計画税も納めなければなりません。(都市計画税はお住いの市区町村によって異なる)
加えて、火災保険の契約更新も行わなければならず、長くても10年後には火災保険を更新するための保険料負担が強いられることになります。(火災保険の最長加入期間は最大で10年間であるため)
このように、住宅ローンの返済のほかにも別途、住宅を維持するためのお金がかかるわけですから、このお金をどのように捻出するのか、毎日の生活と両立できるのか、住宅ローンの申し込みを行う前から明確に決めておかなければなりません。
不測の事態が起こった場合の今後の対策はどのようにするのか
勤務先の倒産・解雇・失業・事故・病気など、住宅ローンを完済するまでの間、時としてこのような不測の事態が起こるかもしれません。
仮に、このような不測の事態が起こった場合、今後の対策はどのようにするのかを住宅ローンの申し込みを行う前から明確に決めておかなければなりません。
また、新型コロナウィルスのような予想もできないようなことが起こった場合、はたして国の補償だけで乗り切ることができるのでしょうか?
少なくとも、ある程度まとまった貯蓄があった状態で住宅ローンの申し込みをされることが望ましいと言えるでしょう。
住宅ローンの完済は、いつで終わるのか
住宅ローンの返済期間は、住宅ローンの申し込みを行う際、ご自身で決めることができます。
この時、住宅ローンの完済時期が老後生活と重なる場合、ローンの返済が滞ることなく継続していけるのかどうかを考えておく必要があります。
一般に、パートやアルバイトといった職業ですと、厚生年金保険に加入していない場合が大半であるため、公的年金支給額は多くならないことが十分予測できます。
加えて、年齢を重ねることで身体にも何かしらの影響が生じていることも十分予測でき、はたして、これまで通りパートやアルバイトで働いていけるのかどうかも疑問が残ります。
ファイナンシャルプランナー(FP)という専門家の立場で総合的に考えてみても、やはり、パートやアルバイトで住宅ローンを組むことはリスクや将来の懸念が大きいという結論に至ります。
おわりに
本ページでは、パートやアルバイトでも住宅ローンは組めるのかといった疑問について、現役の独立系ファイナンシャルプランナー(FP)が、考えておくべきポイントをわかりやすく解説させていただきました。
今回紹介した相談事例のように、パートやアルバイトの職業で住宅ローンを組みたい人には、何かしらの事情があると推測できます。
しかしながら、パートやアルバイトといった一般に収入が低い状態で住宅ローンの借入を行うことは、住宅ローン審査の否決、返済に対するデフォルトリスク(債務不履行)がどうしてもつきまとってしまいます。
そのため、パートやアルバイトで住宅ローンを組むのであれば、一度、専門家にあたるファイナンシャルプランナー(FP)に相談し、住宅ローンの借入から完済までのお金の流れについて明確にしつつ、長期目線の具体的な対策も同時に立てておくことが望ましいと言えるでしょう。