本ページでは、子どもの奨学金を一括返済したい親が知っておくべきことについて紹介していきます。
はじめに、奨学金を借入している子どもがいる親からしますと、子どもが長い期間に渡って返済する奨学金の負担を減らしたいと思う人は多いでしょう。
そのために、奨学金の一括返済を考えたり、少しでも資金援助としてできることはないか?を考える親もいるはずです。
その一方で、奨学金の一括返済や資金援助をする前にあらかじめ知っておかなければならない注意点があります。
これらを踏まえ本ページでは、子どもの奨学金を一括返済したい親が知っておくべきこと、資金援助をするための簡単なお金の貯め方について紹介します。
目次
【借金の肩代わり】親が子どもの奨学金を一括返済することは贈与税の対象になる
親が子どもの奨学金を一括返済することは、贈与税の対象になります。
そのため、親が一括返済した金額にもよるものの、今回の場合、子どもが国に対して贈与税を納めなければならない可能性がある点にまずは注意が必要です。
通常、親が子どもの学費を負担することは贈与税の対象にはなりません。
しかし、今回の場合、子どもの学費ではなく、子どもが抱えている借金(奨学金)を親が代わりに返済しています。
このような場合、子どもは親からの贈与によって「奨学金を返済しなくて済んだ」といった経済的利益を得たことになります。
【1年間で110万円以下】贈与税がかかる場合とかからない場合の基準額(基礎控除額)
贈与税は、贈与を受けた人が必ずかかる税金ではありません。
具体的に「1年間で110万円以下の贈与」であれば贈与税がかかりません。
これを「贈与税の基礎控除額」といいます。
注意点として、1年間で贈与を受けた金額が合計110万円以下でなければなりません。
【具体例1】贈与税がかかる場合
・奨学金の一括返済を目的として両親から合計50万円を現金でもらった
・奨学金の一括返済と就職祝いを目的として祖父母から合計200万円が本人名義の口座(子ども)へ振り込まれた
・いずれも同じ年に行われたものとします
すでに紹介しましたように、1年間で贈与を受けた金額が合計110万円以下であれば贈与税がかかることはありません。
しかし、この具体例では、同じ年に両親と祖父母から合計250万円の贈与を受けていることが確認できます。
結果として、1年間で110万円を超える贈与を受けているため、子どもは国に対して贈与税の申告をして贈与税を納めなければならないことになります。
1人ひとり個別に贈与を受けた金額で判断するのではなく「年間合計」で判断するところが重要です。
【具体例2】贈与税がかからない場合
・奨学金の一部繰り上げ返済を目的として父親から20万円、母親から10万円を現金でもらった
・奨学金の一部繰り上げ返済を目的として父方の祖父母から30万円、母方の祖父母から30万円を現金でもらった
・いずれも同じ年に行われたものとします
この具体例では、同じ年に両親のほか、父方の祖父母、母方の祖父母といった多くの人から贈与を受けていることが確認できます。
しかし、多くの人から贈与を受けたとしても年間合計は90万円で110万円以下です。
したがって、具体例の場合、お金をもらった子どもに贈与税がかかることはなく、贈与税の申告をする必要もありません。
【事前確認必須の注意点あり】相続時精算課税制度で奨学金の一括返済を資金援助することもできる
子どもの奨学金を一括返済したい親の中には、贈与税がかからないようにまとめて贈与できる方法がないか?気になる人もおられると思います。
結論から申し上げて、そのような希望を叶える方法はあります。
具体的には「相続時精算課税制度」と呼ばれる方法を使うことで、この希望を叶えることが可能です。
奨学金制度を考慮しますと、いくら奨学金を多く借入したとしても2,500万円を超えることは通常考えられません。
つまり、相続時精算課税制度を使えば、子どもが抱えている奨学金を親が一括返済し、さらに贈与税が子どもにかからなくて済むわけです。
【今回のケースのみを踏まえて】相続時精算課税制度の注意点
ここでは、親または祖父母が子ども(孫)の奨学金を一括返済するものとして、相続時精算課税制度の注意点を簡単に紹介します。
1.相続時精算課税制度を使うためには、両親または祖父母が60歳以上でなければならない
2.贈与を受けた子どもまたは孫は18歳以上でなければならない
3.贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与を受けた子どもまたは孫は贈与税の申告をしなければならない(贈与税が0円であっても必要)
4.相続時精算課税制度を選択して贈与税を申告した場合、後から元に戻すことはできない(暦年課税制度への変更不可)
5.贈与をした両親または祖父母が死亡し、相続が開始した場合、財産金額によっては相続税の負担が多くなってしまう可能性がある
まだまだ相続時精算課税制度の注意点はあります。
ただし、親または祖父母が子ども(孫)の奨学金を代わりに一括返済する場合、少なくとも上記5つの内容をすべて理解しておかなくてはなりません。
相続時精算課税制度は、後から元に戻すことができない特徴があります。
だからこそ、制度を使う前は税理士や独立系FPなど専門家の協力を得ながら今回の贈与だけでなく、将来の相続対策も考えることが極めて重要になるのです。
【資金援助対策】無理なくお金を貯める方法
子どもが抱えている奨学金の返済義務を親がどうにかしてあげたいと思う人は多いでしょう。
そこでここでは、資金援助対策として無理なくお金を貯める方法を簡単に紹介します。
【簡単・手軽でお金が貯まりやすい】投資信託を長期間に渡って積立投資する
まとまったお金を無理なく簡単に貯めたいと思う人は多いはずです。
このとき、投資信託を長期間に渡って積立投資する方法は、簡単・手軽でお金が貯まりやすいためおすすめです。
投資信託を積立投資することは、投資であり貯金ではないと思われる人もいるでしょう。
しかし、以下、当事務所で公開している関連記事を合わせて読み進めていただくと、私がおすすめできる理由に納得できると思います。
【目標金額・目標期間などが決まっている場合】シミュレーターを使って計画的な資金援助対策を実行
投資信託を長期間に渡って積立投資する方法は、無理なくまとまったお金を貯めやすいです。
このとき、重要なことは「とにかく継続して積立すること」です。
積立金額が多い、少ないといったことよりも前に、長い時間をかけてとにかく継続して積立することがまとまったお金を貯めるために大切なポイントです。
ちなみに、資金援助について、具体的な目標金額や目標期間などが決まっている場合、シミュレーターを使って計画的な資金援助対策を実行しましょう。
たとえば、100万円を5年間で貯めることを決めていたとします。
参考:金融庁 資産運用シミュレーション 毎月いくら積立てる?より
このとき、毎月14,705円分以上の投資信託を買付して積立投資を行うことで、5年後に目標としている100万円を準備できるだろうといった試算結果が得られます。
後は、5年間に渡って継続して積立を行うことで、資金援助を目的としたまとまったお金が準備しやすくなるといったわけです。
安定志向で効率的にお金を貯めたい人ほど、投資信託の積立投資を活用してお金を貯めてみてください。
【おわりに】資金援助とファイナンシャルプランニングを考える
親にとってみますと、奨学金の返済をしなければならない子の債務を一括返済してあげられるような資金援助をしたいと思う人は多いはずです。
ただし、決して無理をしないようにできるところから始めてみることがとても大切です。
また、今回は奨学金の一括返済という資金援助での内容でしたが、親が子に対してできる資金援助は奨学金の一括返済に限ったことではありません。
たとえば、住宅取得資金を援助したり、結婚資金を援助したり、孫にかかるさまざまなお金を援助したり多種多様です。
つまり、奨学金の資金援助をするのが、時間的・経済的に難しいのであれば、上記のような別の目的で資金援助を考えてもよいはずです。
今回紹介した、積立投資を活用したお金の貯め方は、積立金額が少額であっても長い時間をかけて継続することでまとまった大きなお金を準備しやすくなります。
この特徴と資金援助の目的を代替することによって、親が負担を抱えずに子に対する資金援助を実行しやすくなるはずです。
せっかくですから、奨学金の一括返済に固執せず、子どもにとって喜んでもらえそうな資金援助を改めて考え、実行してみてはいかがでしょうか?
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