本ページでは、日本学生支援機構の奨学金を申し込みする前に親子で情報共有し確認しておかなければならないことについて紹介していきます。
はじめに、日本学生支援機構の奨学金には、学費としてのお金が給付される「給付奨学金」と一時的に借入する「貸与奨学金」があります。
また、貸与奨学金には、利息が付かない「第一種奨学金」と利息が付く「第二種奨学金」にわけられます。
実際のところ、人によってこれらの奨学金は、活用することができるもの、活用することができないものにわけられる特徴があります。
ここだけを見ていきますと、複雑な印象を持ってしまう人が多いのは確かです。
ただし、複雑であるからこそあらかじめ再確認しておかなければならないこともあります。
そこで本ページでは、日本学生支援機構の奨学金を申し込みする前に親子で情報共有し確認しておかなければならないことについて紹介していきます。
目次
【重要】日本学生支援機構の貸与奨学金は「子ども(生徒)」に返還義務がある
学費を一時的に借入する日本学生支援機構の「貸与奨学金」は、後で必ず返還しなければなりません。
この返還義務がある人は、親ではなく「子ども(生徒)」です。
なお、奨学金の返還が始まる時期は、学校を卒業した年の秋ごろとイメージするとわかりやすいです。
ちなみに、日本学生支援機構では、奨学金の返還開始月について以下のように解説しています。
奨学金の返還は、貸与が終了した月の翌月から数えて7か月目から返還が始まります。
(例)3月で貸与が終了した場合
【月賦返還の場合】
10月(27日)が初回の振替日となります。
出典:日本学生支援機構 定額返還方式(月々の返還額が一定の返還方式)3.返還開始月より一部引用
学校を3月に卒業し、4月から社会人として働き始めることを想定してみます。
このとき、奨学金の返還は、10月(27日)が初回の振替日となり、ご自身が指定した預金口座から引き落とされることになります。(預金口座の残高不足に注意)
【奨学金の金利】貸与奨学金を申し込む前に2種類の金利を再確認
日本学生支援機構の貸与奨学金を借入した場合、毎月いくらのお金をどのくらいの期間で返還しなければならないのか?気になる人も多いはずです。
しかし、この答えを知る前に、まずは、奨学金の金利を再確認しておかなくてはなりません。
この選んだ金利によって、多少なりとも将来の返還金額や返還計画が変わることになります。
そのため、それぞれの金利がどのような特徴があるのか?再確認しておくことが大切なのです。
【いわゆる固定金利】利率固定方式の特徴
奨学金の金利の1つ目は、利率固定方式です。
名前がややこしいですが、いわゆる「固定金利」をイメージするとわかりやすくなります。
貸与終了時に決定した利率が、返還完了まで適用されます。将来、市場金利が変動した場合も、利率は変わりません。
出典:日本学生支援機構 第二種奨学金の利率の算定方法の選択 利率固定方式より引用
上記、日本学生支援機構の解説より、利率固定方式の金利(利率)は、奨学金の借入が終了したときに決定されることがわかります。
たとえば、4年制大学へ進学した場合、奨学金の金利(利率)が決定されるのは「4年後になる」とイメージするとわかりやすいでしょう。
利率固定方式は、長期に渡って奨学金の返還をする際、利率が変わらないメリットがあります。
そのため、毎月の返還金額が返還完了まで変わらないため、返還計画が立てやすい特徴があります。
【いわゆる変動金利】利率見直し方式の特徴
奨学金の金利の2つ目は、利率見直し方式です。
こちらも名前がややこしいですが、いわゆる「変動金利」をイメージするとわかりやすくなります。
貸与終了時に決定した利率を、おおむね5年ごとに見直します。将来、市場金利が変動した場合は、それに伴い利率も変わります。
(将来、市場金利が上昇(下降)した場合は、貸与終了時の利率より高い(低い)利率が適用されます。)
出典:日本学生支援機構 第二種奨学金の利率の算定方法の選択 利率見直し方式より引用
上記、日本学生支援機構の解説より、利率見直し方式の金利(利率)も、奨学金の借入が終了したときに決定されることがわかります。
ただし、金利名称の通り、5年ごとに金利が見直しされる特徴があります。
つまり、金利が変動し高くなった場合、返還する奨学金も増加するデメリットがあります。
一方、金利が変動し低くなった場合、返還する奨学金は減少するメリットもあることになります。
いずれにしましても、利率見直し方式は、金利が変わるため「利率固定方式」に比べて返還計画が立てにくくなることは確かです。
【金利差はどのくらい?】利率固定方式と利率見直し方式の金利
利率固定方式(固定金利)と利率見直し方式(変動金利)の特徴を紹介しました。
これらの特徴を知りますと、それぞれの金利がどのくらいの利率なのか?気になる人も多いはずです。
そこで以下、日本学生支援機構のWEBサイトより利率一覧の一部を紹介します。
出典:日本学生支援機構 平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率 令和4年度 貸与利率一覧(年利%)より引用
上記画像の赤枠が利率固定方式(固定金利)で、緑枠が利率見直し方式(変動金利)です。
たとえば、令和4年4月の金利を比較すると、利率固定方式(固定金利)は「0.468%」で利率見直し方式(変動金利)は「0.020%」です。
利率見直し方式(変動金利)の方が利率固定方式(固定金利)よりも利率が低いことを確認できます。
ただし、目に見える金利だけで金利選びをしないようにしてください。
【毎月の返還金額】貸与奨学金の返還金額は申し込みをした金額によって変わる
ここまでの解説で、貸与奨学金の返還時期や金利の種類についてわかりました。
ここからは、いよいよ多くの皆さんが気になっている、毎月いくらのお金を返還することになるのか?どのくらいの期間に渡って返還する必要があるのか?について紹介していきます。
つまり、利息のない「第一種奨学金」と利息のある「第二種奨学金」の違いだけでなく、そもそもいくらのお金を借入したのか?によって変わることを意味します。
順序立てて解説する必要性を考慮し、まずは、どのくらいの期間に渡って奨学金を返還する必要があるのか?について解説します。
【奨学金の返還期間には計算方法がある】奨学金の返還期間はどのように算出されるのか?
毎月返還する奨学金の返還期間は、以下の計算方法に則って決まります。
貸与総額(借用金額)を「奨学金返還年数算出表」に定める割賦金の基礎額で割って得た返還年数(小数点以下切り捨て)の12倍した回数となります。
出典:日本学生支援機構 返還期間と割賦金 2.定額返還方式の場合 ア.月賦返還より引用
上記の計算方法だけでは全く意味がわかりません。
そのため、一例(以下)をあげながら返還期間を計算してみます。
・4年生大学へ進学することになり、毎月5万円の奨学金を4年間(48ヶ月)に渡って借入することにした。
・奨学金の総額:240万円(月5万円×12ヶ月×4年)
4年間で総額240万円の奨学金を何年かけて返還することになるのか?
まずは、以下、奨学金返還年数算出表から借入した金額240万円があてはまるところを確認します。
出典:日本学生支援機構 返還期間と割賦金 2.定額返還方式の場合 【奨学金返還年数算出表】より引用
奨学金返還年数算出表を見て、借入総額240万円のところを確認すると「割賦金の基準額16万円」になっていることがわかります。
この金額と計算式を基に計算します。
240万円(奨学金総額)÷16万円(割賦金の基準額)=15年(計算結果で端数が生じた場合は、小数点以下切り捨て)
返還回数:15年×12ヶ月=180回で返還
計算の結果、4年間に渡って240万円の奨学金を借入した場合、15年間(180回)で奨学金の返還をする必要があるとわかりました。
では、240万円の奨学金を15年間(180回)で返還する場合、毎月の返還金額はいくらになるのか?
【第二種奨学金で計算】毎月返還する奨学金はいくらになる?
ここでは、240万円の奨学金を15年間(180回)で返還する場合、毎月の返還金額はいくらになるのか?紹介していきます。
まず、すでに紹介しましたように、奨学金の申し込みをする際、利率固定方式(固定金利)を選んだのか?利率見直し方式(変動金利)を選んだのか?によって返還金額が変わります。
金額の計算にあたり、それぞれの利率は、令和4年4月に適用された以下の金利でシミュレーションし、その他の条件は加味しないものとします。
・利率固定方式(固定金利)=0.468%
・利率見直し方式(変動金利)=0.020%
はたしてどのくらいの違いが生じるのでしょう?
利率固定方式(固定金利)を選んだ場合の毎月返還金額
利率固定方式(固定金利)の場合、毎月の返還金額は「13,839円」という結果になりました。
最終(180回目)の返還金額のみ「13,928円」となっています。
利率見直し方式(変動金利)を選んだ場合の毎月返還金額
利率見直し方式(変動金利)の場合、毎月の返還金額は「13,354円」という結果になりました。
最終(180回目)の返還金額のみ「13,409円」となっています。
これらの結果より、親子が再確認しておくべきことをまとめます。
【親子で再確認!】本当に大丈夫?目に見える利率だけの金利選び
まずは、前項で紹介した内容を流れに沿ってまとめます。
・4年生大学へ進学することになり、毎月5万円の奨学金を4年間(48ヶ月)に渡って借入することにした(総額240万円)
・奨学金の返還期間は「15年間」と計算された
・利率固定方式(固定金利)=0.468%、毎月の返還金額13,839円
・利率見直し方式(変動金利)=0.020%、毎月の返還金額13,354円
上記の結果より、目に見える利率は、利率見直し方式(変動金利)の方が低いことは確かです。
しかしながら、毎月の返還金額を比較すると、その差は485円しか違いがありません。
長い目で考えると、小さな差額であったとしても、実際に返還することになる総返還金額(返還した奨学金と支払利息を合わせた金額)は大きな金額の差になることも確かです。
ただし、利率見直し方式の特徴をもう一度再確認します。
利率見直し方式は、5年ごとに金利が見直しされる特徴がありました。
そして、金利が変動し高くなった場合、返還する奨学金も増加するデメリットがあります。
つまり、将来の金利動向がどのようになるか不確かな金利上昇リスクを完済までの長い期間に渡って負うことになるのを忘れてはなりません。
結果として、利率固定方式よりも多くの奨学金を返還しなければならなくなる可能性があることも視野に、どちらの金利を選ぶか?親子で再確認することが大切なのです。
【第二種奨学金の返還方法】元利均等返済について
利息のある第二種奨学金の返還方法は「元利均等返済」です。
元利均等返済とは、毎月の返還金額(返還する奨学金と支払利息を合わせた金額)が同じ金額になる返済方法のことをいいます。
たとえば、先の例で利率固定方式(固定金利)の利率が「0.468%」の場合、毎月の返還金額は「13,839円」でした。
これが、返還期間15年の間、変わることがない返済方法が元利均等返済と考えるとイメージしやすいでしょう。
なお、利率見直し方式は、5年ごとに金利が見直されるため、5年ごとに返還金額が変わることになります。
【おわりに】親子で奨学金について話し合っておきたいこと
日本学生支援機構の奨学金について、実際に借入した金額を返還するまでの期間や金額の計算方法を紹介しました。
この方法を知ると、自分がいくらの奨学金を借入すると将来、いつまでにどのくらいの奨学金を返還しなければならないのかを再確認することができます。
この結果、少なくとも、不安を抱えたままではなく、多少なりとも安心して奨学金の申し込みをできるきっかけになるはずです。
本ページの最初の方でお伝えしましたように、奨学金の返還義務があるのは、子ども(生徒)です。
社会に出て働き始めてから、自分で得た給料(収入)から毎月奨学金の返還をしていかなくてはなりません。
奨学金の返還は、借入金額にもよりますが、完済までの期間はとても長いです。
もしかしたら、長い返還期間の間で失業や病気など不測の事態があるかもしれません。
そのようなときは、奨学金の返還を勝手に滞らせてしまったりしてはいけません。
なぜならば、個人信用情報の信用履歴に問題が登録されてしまい、ローンが組めなかったり、クレジットカードが持てなかったりさまざまな弊害が生じてしまうからです。
そのため、奨学金の返還に困ったときは、親と相談したり、日本学生支援機構へ問い合わせをすることで何かしらの措置を受けられることもあります。
つまり、奨学金を返還する解決策が見つけられることを意味します。
将来、どのような仕事に就いてどのくらいの収入を得ることになるのか予想することはできません。
しかしながら、毎月負担にならないような奨学金の返還金額を親子で話し合っていただき、双方が納得できる奨学金の申し込みをするようにしてください。
親子で時間をかけてじっくりと話し合いを重ねることで、きっと良い奨学金の申し込みができる結果につながることでしょう。
なお、親御さんの中で、子どもの進学にあたり、奨学金の申し込みだけなく、国の教育ローンの借入を検討している人もおられると思います。
そのような人は、上記、当事務所が公開している関連記事も合わせて読み進めていただくことで、幅が広がるきっかけになるのではないか?と感じます。
最後に、日本学生支援機構では、奨学金の返還シミュレーションを行うことができるページがあります。
これを行うことで、簡単に奨学金の返還シミュレーションを行うことが可能です。
ただし、実際にシミュレーションを進める際、迷ったり、これでよいのか?悩んでしまうこともあると思います。
そのような人を対象に、以下、当事務所では図解と用語解説を交えて奨学金の返還シミュレーションを行える関連ページを公開しています。
気になる人、興味のある人は、ぜひ合わせてご確認いただき、親子で返還シミュレーションをやってみてください。
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