奨学金は、経済的な理由が原因で大学、短大、専門学校などへの進学が困難な優れた学生に対して学資金の貸与を行うことで、これらの学生が安心して学問を学べるようにするための制度のことをいいます。

つまり、奨学金を借りた学生は、いわば、お金を借り入れした「債務者」にあたり、大学などを卒業した後に、社会人として働き始めてから一定期間が経過した後、奨学金の返済が開始されることになります。

昨今、日本の経済事情によって世帯の収入が上がらず、夫婦共働きの世帯が、専業主婦世帯よりも増加している統計が厚生労働省で公開されておりますが、このような厳しい中で子どもの教育資金を十分に用意することは、とても厳しくなってきています。

実際のところ、奨学金を借りたものの、借りた本人や親族も弁済できずに自己破産をしている方も増加傾向にあるという実態を考慮しますと、当事務所と致しましては、これから奨学金を借りる予定のある本人や両親も含め、いま一度、よく話し合って考えてみることを強く推奨しておきたいといった率直な想いでいっぱいです。

ある意味、とても下世話な話ではありますが、そもそもお金を借りるということは、借りたお金を必ず返済しなければならない義務が生じるわけでありますから、奨学金は、進学して学ぶための学資金であるといった側面がある一方、借入金であるといった部分が、奨学金を借りる本人および両親の皆さんに「希薄」になっているような気がしてなりません。

こちらは、私個人の勝手な主観になってしまうのですが、進学したいけれども、十分なお金が無いからとりあえず奨学金を借りて進学しようといった軽率な考えで借りた結果が、このような破産といった事態を少なからず招いているような気がします。

このような考えは、たとえて言うなれば、クレジットカードのキャッシングやフリーローン、サラ金からの借り入れを無計画で借りているのと何ら変わらず、非常に危険な行為であると考えます。

将来、就職して返済するから、今はお金もないし後々何とかなるさといった、その場しのぎのお金の借り方と考えることもでき、就職も確実に決まるとは限らないといった、いわば、返済できるあても確実にない上でお金を借りていることと考えることもできます。

これってはたして本当に正しいお金の借り方なのでしょうか？

奨学金を借りる本人としての自覚を肝に銘じる教育を

奨学金は、高校生が将来の進学のために借りる場合がほとんどだと思われますが、高校生ともなると、法律上は未成年としての取り扱いである一方で大人と同等の考え方を理解できる年ごろであると私は考えます。

したがって、高校生に対する奨学金の教育といったものに今後、ますます力を入れていかなければならないことは言うまでもありませんが、自分の将来を考えるライフプランや奨学金の返済計画などを立てるところまで「具現化」していくことが確実に求められます。

その上で、両親と話し合い、自身の将来像をしっかりと考えることで、進学をする意義や目的をより明確なものにしておく必要があるでしょう。

そのためには、ＦＰや日本学生支援機構のスカラシップアドバイザーといった専門家の協力が必要不可欠であると考えられる一方で、学校側の真摯な対応や奨学金を借りる本人の自覚をもっと持たせることも必要になってきます。

高校1年生になってから、これらの知識を徐々に有して上げることが大切であり、本人の将来像や目的に合わせて、今後のモチベーションにも大きく影響することになると思われ、早い内から教育の一環として取り組むべき課題であり、これらの教育があたりまえになるような流れを構築していかなければならないでしょう。

親としての責任を肝に銘じる対策を

子どもが誕生した時に、将来の子どもの教育資金を考えて学資保険に加入している親御さんも多いと思いますが、実際、不十分だと感じている方もおそらく多いのではないでしょうか？

とはいえ、そのように感じているのであれば、尚更、親としての責任を再度肝に銘じる必要があり、教育資金の対策をさらに取っておく必要があると考えます。

子どもは、家計の状況なんて知る由もないわけですから。

ただ、今置かれている状況の中で勉学に励んでいる子どもの努力を無駄にしないためにも、いま一度、自分達にとって何ができるか模索しておく必要性はあるでしょう。

奨学金の返済を滞るリスクを知ろう

奨学金は、借入金である以上、必ず返済しなければならないものでありますが、奨学金の返済が滞ってしまうことで、将来に渡る大きなリスクを抱えてしまうことを知っておくことが大切です。

たとえば、奨学金の返済が長く滞ったことによって、個人信用情報にその履歴が載ってしまいますと、一定期間が経過して、履歴が消えるまで、自動車ローンや住宅ローンといった借入は行うことができず、クレジットカードを持つこともできなくなってしまいます。

社会人になって、将来、結婚し子どもが誕生したことによって、自動車購入や住宅購入といった大きなライフイベントが起こると十分予測される中で、このような事情があったことに伴って、各種ローンが借りられないことは、人生を送る上で大きなハンデを抱えてしまうリスクが将来あることを知っておかなければなりません。

特に、自己破産は、債務整理と呼ばれる現在抱えている借金などを法的に整理する1つの方法にあたりますが、大きく、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産と4つの方法がある中で、最終的に取られる方法となり、いわば、どうしようもない場合に陥っている時になります。

これらの判断は、弁護士や認定司法書士といった専門家が判断するべきことではありますが、自己破産を申し立てた場合、ローンが借りれるようになるまでの期間がさらに長くなってしまうリスクも生じることから、時として結婚生活や子どもの将来に大きな影響を生じさせてしまう懸念も否めません。

先々のことを考えて奨学金を借りなければ、思いがけない落とし穴にはまることを奨学金を借りる本人および両親が肝に銘じておく必要があるのです。

おわりに

奨学金の問題は、学生である本人と両親の両方の大きな問題であることは確かです。

そのため、お互いがそれぞれの課題に対して真剣に考え、真摯に取り組むことが大切です。

こんなでかいことを口にしている私も子を持つ親であり十分な子どもの教育資金の確保に向けての対策を取らせていただいておりますが、まだまだ課題は山積みだと思っています。

とても下世話な話ではありますが、本ブログを通じて、1人でも多くの学生や親御さんが個々の責任について再確認し、実りのあるライフプランを実現していただければ幸いです。