本ページは、2019年5月に一般社団法人金融財政事情研究会が実施したファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)の不動産について、問題・解答・解説を紹介するものになります。
目次
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2018年10月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第4問の問10から問12のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、不動産の分野として、問10から問12までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第4問 問10
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問10の解答および解説
①「20(㎡)」②「100(%)」③「360(%)」④「1,656(㎡)」が、正しい解答です。
①について、設例の甲土地が接している幅員2mの市道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路となっていることから、いわゆる2項道路(みなし道路)であることが確認できます。
この時、2項道路に建物を建てる場合、道路幅を4mにする必要があるため、甲土地の一部を道路として提供し、後退させて建物を建築しなければなりません。
これをセットバックと言い、セットバックにおける後退面積を求めるには、以下の計算式で行います。
セットバックによる後退距離(m)÷ 2 × 評価対象地の間口(m)= セットバック面積
(4m-2m)÷ 2 × 20m= 20㎡
なお、計算式にある評価対象地の間口は、セットバックが必要な方の道路に面している間口であるため、6m市道に面した24mの間口ではなく、2m市道に面した20mの間口を計算の基礎にする点に注意が必要と言えます。
②は、建蔽率の割合が問われておりますが、設例より指定建蔽率は80%で、防火地域に該当していることがわかります。
問10の問題文より、「甲土地に耐火建築物を建築する場合」と問われているため、建蔽率の緩和が適用されます。
建蔽率が80%の地域で防火地域内に耐火建築物を建築する場合=建蔽率の制限がない=100%で計算する
したがって、②は100%となります。
なお、こちらは問題に問われておりませんが、甲土地に建てることができる建築面積は、460㎡となります。(480㎡-20㎡)×100%=460㎡
③は、前面道路幅員による容積率の制限を求める問題ですが、甲土地のように2つ以上の道路に接している場合は、幅員の広い方の道路を前面道路として扱うことができます。
したがって、前面道路幅員を6mとし、設例にある計算式にあてはめて計算します。
6m × 6/10 = 3.6
3.6 × 100 = 360%
指定容積率400%と前面道路幅員による容積率の制限(360%)の内、小さいほうになるため 360%<400% → 360%となります
④は、与えられた計算式にあてはめて計算します。
(480㎡-20㎡)× 360% = 1,656㎡
第4問 問11
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問11の解答および解説
①「〇」、②「〇」、③「×」が、正しい解答です。
①および②は設問の通りです。
③について、建設協力金方式は、次項で解説する事業用定期借地権のように、契約が満了になった後に更地で返還する必要はありません。
建設協力金方式は、土地を所有している、いわゆる地主が所有している土地に、コンビニやレストランなどの店舗を建築します。
この時、コンビニやレストランといったテナント側が、地主に対して建設協力金といった名目で、いわゆる保証金や敷金を差し入れます。
地主は、そのお金を基に建物を建築し、テナント側に対してリース(長期貸付)を行います。
一般に、建物の賃貸借契約を行った場合、アパートや貸家に住んでいるように、毎月賃料を支払わなければなりませんが、テナント側は、地主に対して建設協力金をあらかじめ支払っています。
そのため、賃料の代わりに、すでに支払った建設協力金と賃料を相殺(差し引き)される仕組みが建設協力金方式となります。
建設協力金方式を活用するメリットおよびデメリットは、それぞれあることは確かですが、FP試験対策を行う上におきましては、最低限、仕組みを押さえておくことが大切と言えます。
第4問 問12
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問12の解答および解説
①「ホ」、②「ハ」、③「ヘ」が、正しい解答です。
事業用定期借地権につきましては、テキストでポイントを再度復習しておくことが大切ですが、以下、試験対策に活用できる事業用定期借地権のポイント(キーワード)をまとめておきます。
事業用定期借地権における建物の用途:事業用に限ります。居住用が一部でもある場合は不可となります。
事業用定期借地権の設定契約:公正証書に限られます
事業用定期借地権の存続期間:10年以上50年未満(区別は、10年以上30年未満と30年以上50年未満に分けられる)
事業用定期借地権の更新の有無:なし
その他:原則として更地で返還します
上記のキーワードを試験対策として押さえておくことが合格への近道です。
当事務所の勝手な見解
今回の試験でも問われましたように、建築基準法における建蔽率や容積率の計算問題は、試験の頻出度が高く、かつ、FP2級実技試験の税金分野のように、最初の数値を間違えてしまいますとドミノ形式で減点されてしまいます。
FP試験に限らず、どのような試験にも言えることではありますが、過去問題を反復学習し、試験に頻出されている問題は確実に解けるような試験対策をしておくことが合格への近道となります。
また、定期借地権の問題も頻出が高いとも言え、数値やキーワードを試験対策として押さえておくように心がけておきたいものです。
なお、建設協力金のように、過去問題ではあまり問われない問題が問われることもありますが、60点取っても100点取っても合格は合格なのです。
試験に合格するためには、加点しやすい効果的な学習(過去問題の繰り返しと頻出問題の確実な加点)が肝になることをご理解いただき、割り切り学習をすることも大切と言えます。
学習時間に余裕がない場合は、特に意識したいポイントですし、試験が迫っている時期であればあるほど、この辺は意識しておきたいものです。