トップページ > 生命保険・損害保険 > 高額療養費制度とは?医療保険などの生命保険の見直しにも役立つ高額療養費制度のポイントを紹介
高額療養費制度とは?医療保険などの生命保険の見直しにも役立つ高額療養費制度のポイントを紹介

高額療養費制度とは、病気やけがで入院した場合やその他の事情によって医療費の家計負担が重くならないようにするための制度で、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月(歴月:1日から末日まで)で上限金額を超えた場合、その超えた金額が後日、払い戻される(還付される)仕組みになっています。

高額療養費制度は、高額な医療費を1ヶ月に負担することになった場合に、私たちが加入している健康保険、国民健康保険などといった公的健康保険からお金が支払われる制度なのですが、実のところ、高額療養費制度を活用して実際に支払った多くの医療費を払い戻してもらうためには、所定の手続きを行う必要があります。

また、高額療養費制度は、多くの方が気になる生命保険の見直しをする上で、とても大切な医療制度であるため、将来のライフプランや生命保険の見直しを検討する上において、直接的なお金に関わってくると言っても決して過言ではありません。

そこで本記事では、高額療養費制度に焦点をあて、将来のライフプランや生命保険の見直しにも役立つ高額療養費制度のポイントについて紹介していきます。

スポンサーリンク

高額療養費制度とは

冒頭でも触れましたが、改めて高額療養費制度とは、どのような制度であるのか、以下、厚生労働省のWEBサイトから引用してポイントを紹介します。

医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」(こうがくりょうようひせいど)があります。

上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減するしくみも設けられています。

全ての方が安心して医療を受けられる社会を維持するために、高齢者と若者の間での世代間公平が図られるよう、負担能力に応じたご負担をいただく必要があります。

そのため、平成29年8月から、70歳以上の皆さまの高額療養費の上限額について、段階的に見直しを行っています。

出典 厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ 高額療養費制度についてより引用

高額療養費制度が適用になる高額な医療費というのは、毎月1日から末日までの1ヶ月単位で計算・判定されること、そして、高額療養費制度は、年齢や所得に応じて適用される上限金額が異なることの2つが大きなポイントになります。

ここで気になるのは、高額療養費制度を活用した場合に年齢や所得に応じて適用される上限金額とはいくらなのか?といったことだと思います。

高額療養費制度の上限額とは

高額療養費制度で適用される年齢や所得に応じた上限金額とは、具体的に年齢が70歳未満なのか、70歳以上75歳未満なのかによって、以下のように区分がわかれています。(平成31年1月現在)

なお、75歳以上は、後期高齢者医療保険に加入することになりますが、本記事の解説におきましては、70歳未満と70歳以上75歳未満の2つの高額療養費制度について紹介していきます。

70歳未満の場合

出典 協会けんぽ 高額な医療費を支払ったときは高額療養費で払い戻しが受けられます。自己負担限度額とはより引用

年齢が70歳未満の場合、高額療養費制度で適用される上限金額は、大きく5つの区分に分かれていることがわかります。

この時、自分がどの区分に当てはまるのかわからない方もおられると思いますので、そのような場合は、勤務先から支給を受けている給与明細書を見ると確認することができます。

仮に、勤務先から手渡される給与明細書に標準報酬月額が記載されている場合は、記載されている標準報酬月額を上記表に当てはめて上限金額を確認します。

逆に、標準報酬月額が給与明細書に記載されていない場合は、勤務先の担当者に標準報酬月額がいくらなのか尋ねるか、ご自身で確認してみる必要があります。

出典 協会けんぽ 平成30年度保険料額表(平成30年4月分から)秋田県より一部引用

たとえば、年齢が30歳の方で支給された給与から健康保険料が10,130円天引きされている場合、介護保険の第2号被保険者に該当しませんので、表をたどっていきますと、17等級であることがわかります。

一方で、年齢が40歳以上になりますと、公的介護保険に強制加入となり、介護保険の第2号被保険者になりますので、同じ17等級であったとしても、給与から天引きされる健康保険料は11,700円となります。

なお、上記の方法は、ご自身で標準報酬月額を確認する上での注意点があり、加入している健康保険が協会けんぽであるかどうか、都道府県による保険料の違いがあるなどがポイントになりますので、わからない場合は、勤務先の担当者に聞いてみるのが望ましいでしょう。

70歳以上75歳未満の場合

出典 協会けんぽ 高額な医療費を支払ったときは高額療養費で払い戻しが受けられます。自己負担限度額とはより引用

高額療養費制度の計算方法

高額療養費制度の上限額についてわかったところで、実際に高額療養費制度を活用した場合に払い戻される金額の計算方法を紹介していきます。

なお、計算における前提条件として、年齢が70歳未満の方で、区分は「ウ」に該当するものとし、1ヶ月にかかった医療費の総額が100万円であったものとします。

病院の窓口で支払うお金 100万円×3割=30万円

高額療養費制度の上限額(自己負担限度額) 80,100円+(100万円-26万7,000円)×1%=87,430円

高額療養費(還付金額) 30万円-87,430円=21万2,570円

上記の場合、一時的に病院の窓口で30万円を支払った後に高額療養費制度の申請をすることで、後日、212,570円が高額療養費として指定した口座へ還付されることになります。

では、高額療養費制度の申請をするためには、どのような手続きが必要になってくるのか次項から確認していきましょう。

高額療養費制度の手続方法

高額療養費制度の手続方法には大きく2つの方法があり、事後に手続きする方法(高額療養費を支給申請する方法)事前に手続きする方法 (限度額適用認定証の交付を受ける方法)があります。

これまで紹介した方法は、事後に手続きする方法にあたりますが、ここで言う事後とは、高額な医療費を支払った後と考えるとわかりやすいでしょう。

なお、高額療養費制度の支給申請手続きにつきまして、厚生労働省のWEBサイトでは、以下のように案内をしています。

Q1.高額療養費の支給申請はどのように行えば良いですか。

A1.ご自身が加入している公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など。以下単に「医療保険」といいます。)に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受けられます。病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。ご加入の医療保険によっては、「支給対象となります」と支給申請を勧めたり、さらには自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれたりするところもあります。なお、どの医療保険に加入しているかは、保険証(正式には被保険者証)の表面にてご確認ください。

出典 厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)より引用

高額療養費制度の支給申請手続きをするためには、加入している公的保険の保険者(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など)に高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受けられることがわかります。

この時、手続きに必要な書類としては、医療費の領収書、保険証、印鑑、振込口座のわかるものなどを準備しておくと良いでしょう。

限度額適用認定証と効果

高額療養費制度を事前に手続きする方法 (限度額適用認定証の交付を受ける方法)は、あらかじめ加入している公的保険の保険者(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など)に対して、限度額適用認定証の交付を受ける方法をいいます。

限度額適用認定証の交付を受けましたら、これを病院の窓口へあらかじめ提出しておくことで、実際に病院の窓口で支払う医療費の金額が、高額療養費制度を適用された後の金額となります。

ちょっと意味がよくわからないと思いますので、先の例を基に、高額療養費制度を事後に手続きする方法と高額療養費制度を事前に手続きする方法のお金の流れをそれぞれ紹介しておきます。

高額療養費制度を事後に手続きする方法 (高額療養費を支給申請する方法)

病院の窓口で支払うお金 100万円×3割=30万円

高額療養費制度の上限額(自己負担限度額) 80,100円+(100万円-26万7,000円)×1%=87,430円

高額療養費(還付金額) 30万円-87,430円=21万2,570円

高額療養費制度を事前に手続きする方法 (限度額適用認定証の交付を受ける方法)

病院の窓口で支払うお金 高額療養費制度の上限額(自己負担限度額)=87,430円

限度額適用認定証の交付をあらかじめ受けていると、窓口で高額療養費制度が適用された後の金額である87,430円を支払うことで医療費の支払いが完了します。

そのため、後からわざわざ高額療養費制度の申請をする手間や一時的に大きな医療費を負担する必要がないメリットが得られることになります。

すでにお気づきのように、高額療養費制度を事後に手続きする方法も高額療養費制度を事前に手続きする方法も、いずれも、実際に支払った医療費は87,430円と同じ金額となっていることから、手間や時間を考えますと、高額療養費制度を事前に手続きする方法がおすすめです。

高額療養費制度における自己負担限度額には計算ルールがある

こちらは、高額療養費制度を活用するための注意点とも言えますが、実のところ、高額療養費制度の自己負担金額を計算する上において、以下のような計算ルールがあるため、こちらについても押さえておくことが大切です。

歴月ごとに計算します(月の1日から末日まで)

同じ医療機関ごとに計算します(たとえば、同じ医療機関でも内科と歯科、入院と外来のような場合は、別々に計算します)

自己負担限度額は、保険適用となる範囲が計算対象です(いわゆる保険適用外のものは含めません)

2つ以上の医療機関で受診をした場合は、それぞれの医療機関で別計算となります(ただし、院外処方による薬剤費などは、処方箋を発行した医療機関の分と合算することが可能です)

上記の注意点を確認しますと、たとえば、1ヶ月の間で入院と外来があった場合、時として医療費の負担が重くなってしまうことも十分に考えられます。

そのため、必ずしも適用になるとは限りませんが、毎月の治療費負担を軽くする仕組みである、高額療養費の世帯合算多数回該当といった2つの仕組みも押さえておきたいポイントです。

高額療養費の世帯合算とは

高額療養費の世帯合算とは、世帯の中で医療費の自己負担金額が21,000円以上となる場合、その分も高額療養費に合算して自己負担限度額を計算できることを言います。

たとえば、令和元年7月3日から12日まで入院した後に退院し、17日、20日、24日、27日に外来を同じ医療機関で受診したとします。

この時、入院時の総医療費が100万円、外来時の総医療費が20万円だった場合、1ヶ月に負担した自己負担医療費は以下のようにまとめられます。

治療を受けた人総医療費自己負担金額(3割負担)
佐藤 元宣100万円(入院)30万円
佐藤 元宣20万円(外来)6万円

仮に、佐藤元宣さんが、区分ウの所得区分に該当していた場合、高額療養費制度適用後における7月分の自己負担金額は、以下のようにまとめられます。

入院分の自己負担金額:80,100円+(100万円-26.7万円)×1%=87,430円

通院分(外来)の自己負担金額:20万円×3割=60,000円

7月分合計:147,430円

1ヶ月の自己負担医療費が147,430円と高額になっておりますが、高額療養費の世帯合算は、医療費の自己負担金額が21,000円以上となる場合に適用できるものでありますから、外来時に負担した総医療費20万円(自己負担6万円)も高額療養費の計算に含めて計算することができるわけです。

ちなみに、高額療養費の世帯合算を知り、適用すると以下のような効果が得られます。

高額療養費の世帯合算:80,100円+(100万円+20万円-26.7万円)×1%=89,430円

世帯合算を適用しない場合:147,430円

差額:58,000円(147,430円-89,430円)

高額療養費の世帯合算を活用することによって、実際に自己負担した医療費の内、58,000円のロスを抑えられていることがわかります。

なお、高額療養費の世帯合算を適用するには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

高額療養費の世帯合算は、同じ月内であること

高額療養費の世帯合算は、同じ世帯であること

高額療養費の世帯合算は、自己負担金額が21,000円以上あること

高額療養費の世帯合算における注意点

一般的な世帯と言えば、同居をしている家族のイメージがあると思われますが、高額療養費の世帯合算における世帯と言うのは、意味が異なる点に要注意です。

ちなみに、高額療養費の世帯とは、同じ公的医療保険に加入している本人と被扶養者のことを言い、同じ公的医療保険の記号番号で管理されている家族のことを指しています。

たとえば、夫が会社員で、妻や子供が夫の被扶養者である場合は、条件を満たせば、高額療養費の世帯合算が可能です。

一方、同居をしている父親や母親がいたとし、後期高齢者医療保険など、他の公的医療保険に加入していた場合、高額療養費の世帯にはあたらないため、合算することができません。

世帯と見聞きしますと、同居の家族であれば良いイメージを持ってしまいますが、この部分には注意が必要と言えます。

高額療養費の多数回該当とは

高額療養費の多数回該当とは、過去1年間に3回以上、高額療養費に該当した場合、4回目からは自己負担金額が少なくなる制度のことを言います。

たとえば、先の例の場合ですと、佐藤元宣は、令和元年7月に高額療養費制度を適用していますが、過去1年間とは、令和元年7月からさかのぼった1年間にあたり、令和元年7月から平成30年8月までの1年間といったイメージになります。

したがって、令和元年7月の高額療養費が4回目以降である場合、佐藤元宣の自己負担限度額は、44,400円になるといった見方になるわけです。

高額療養費の世帯合算や多数回該当には請求の時効がある

高額療養費の世帯合算や多数回該当は、活用できる機会が少ないかもしれませんが、知っていることでお金のロスを減らせる可能性が高まることは確かです。

ちなみに、これらの制度は、親切に自動的に適用されるものではなく、基本的には、ご自身で請求手続きをしなければなりません。

また、請求手続きは、いつまでも有効なわけではなく、いずれの制度も請求の時効が2年間となっているため、請求もれが無いように努める必要があります。

高額療養費制度は、なぜ、医療保険など生命保険の見直しにも役立つのか?

これまで高額療養費制度の押さえておきたいポイントについて紹介してきましたが、高額療養費制度は、生命保険の新規加入や見直しする際にも考えておく必要性があります。

ちなみに、高額療養費制度が、生命保険の新規加入や見直しに役立つ理由は、過剰な保障を付けすぎることによって無駄な保険料を支払うことを防止できる効果があるためです。

ざっくり言ってしまいますと、高額療養費制度が適用された後に支払うことになる医療費の自己負担金額を生命保険でまかなうことができれば、手持ちのお金を支出する必要は無くなります。

そのため、生命保険の見直しを考える上で高額療養費制度を考えることは必要不可欠なわけです。

なお、解説が重複しますが、重要なポイントとして、高額療養費制度の適用になる医療費とは、公的医療保険制度の対象になった医療費のみである点には注意が必要です。

たとえば、先進医療にかかった医療費、入院した場合の食事代、差額ベッド代などは、保険対象外の支出となり、いわば、すべて自費扱いとなります。

そのため、これらのことも考慮した生命保険の見直しを考えていくことがとても大切なのです。

おわりに

高額療養費制度と生命保険の見直しにも役立つ高額療養費制度のポイントについて紹介させていただきました。

高額療養費制度は、私たちが加入している公的保険から支給されるものにあたり、健康保険や国民健康保険などの種類が問われることはありません。

ただし、健康保険や国民健康保険には、生命保険の新規加入や見直しを考える上で考慮しなければならない制度がほかにもあることから、それぞれの方が置かれている立場や家族構成などによっても考え方が大きく変わることも確かです。

そのため、現在加入している公的保険がどのようなもので、どのような社会保障が受けられるのか、本記事をきっかけに一度再確認されてみるのも良いでしょう。

特に、生命保険の見直しを検討する上では、本記事で紹介した高額療養費制度をはじめ、私たちが加入している公的年金制度も考慮することで、さらに質の高い生命保険に加入できるきっかけにもなります。

本記事が、目通しいただいた方にとって、有益なものになれば幸いです。


スポンサーリンク
スポンサーリンク