本ページでは、祭祀財産(さいしざいさん)とはどのような財産なのかを解説し、合わせて祭祀財産を購入する相続税対策や注意点も解説していきます。
はじめに、祭祀財産とは、墓地や墓石のほか、仏壇、仏具、神を祭る道具などを指し、日常的に礼拝している物のことをいいます。
これらの祭祀財産の購入する時期(タイミング)は、人それぞれであり、たとえば、死亡した後に祭祀財産を購入する場合、死亡する前に祭祀財産を購入しておく場合、すでに祭祀財産があるため購入しない場合に大きく分けられます。
この時、仮に、祭祀財産をいずれは購入する予定があるのであれば、死亡する前に祭祀財産を購入しておくことが相続税対策となります。
そこで本ページでは、祭祀財産とはどのような財産なのかをもう少し細かく解説し、合わせて祭祀財産を死亡する前に購入しておくことが相続税対策になる理由や注意点も合わせて解説していきます。
目次
祭祀財産とは
祭祀財産とは、墓地や墓石のほか、仏壇、仏具、神を祭る道具などを指し、日常的に礼拝している物であることを本ページの冒頭でお伝えしております。
上記も含め、以下、祭祀財産に含まれるものを紹介します。
・墓地・墓石・おたまや・庭内神し・神棚・神体・神具・仏壇・位牌・仏像・仏具・古墳など
日本では、神様や仏様を崇拝するイメージがありますが、これらを崇拝する上で関係のある物が祭祀財産であることをご理解いただけると思います。
お墓などの祭祀財産は相続税がかからない
祭祀財産とはどのような財産であるのかについて紹介しましたが、基本的に祭祀財産は換金性がないとされているほか、祖先を崇拝するといった慣習や一般常識的な観点から相続をする上で、祭祀財産は相続税の計算をする上で非課税財産とされています。
相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。
1.墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物。ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります
出典 国税庁 No.4108 相続税がかからない財産より一部引用
上記、国税庁の解説でも祭祀財産は相続税がかからない財産であることを説明しておりますが、骨董的な価値がある財産など、売却をすることで利益が得られるようなものをはじめ、祭祀財産を販売して営利を営んでいるような法人や個人が所有するいわゆる商品は、相続税がかからない非課税財産にはあたらないことも説明しています。
そのため、たとえば、ご自身の自宅や実家などにある仏壇や仏具などを相続したとしても、それらの祭祀財産に対して相続税がかかることはないといった意味になります。
祭祀財産を購入する相続税対策と注意点
前項では、祭祀財産を相続したとしても、祭祀財産が投資の対象や商品としての性質がない場合、相続税がかからないことを紹介しました。
ちなみに、本ページの冒頭では、祭祀財産の購入する時期(タイミング)は、人それぞれであり、たとえば、死亡した後に祭祀財産を購入する場合、死亡する前に祭祀財産を購入しておく場合、すでに祭祀財産があるため購入しない場合に大きく分けられることをお伝えし、合わせて、仮に、祭祀財産をいずれは購入する予定があるのであれば、死亡する前に祭祀財産を購入しておくことが相続税対策となることもお伝えしております。
本項では、この理由について解説を進めていきます。
祭祀財産は死亡する前に購入しておくことが相続税対策になる理由
祭祀財産は、死亡する前に購入しておくことが相続税対策になる理由は、大きく2つあります。
1つ目の理由は、すでに紹介をさせていただきましたように、祭祀財産は相続税の非課税財産とされている理由があげられます。
つまり、生前中に祭祀財産を購入しておき、その後、死亡した場合、相続人が引き継いだ祭祀財産は相続税の計算から除外されることになるため、相続税の金額を少なくすることができる効果が得られます。
こちらにつきましては、後程紹介する「祭祀財産の非課税を活用した相続税対策のイメージ」でわかりやすく紹介します。
2つ目の理由は、祭祀財産を購入した債務は、相続税の計算をする上で債務控除の対象にならない理由があげられます。
実のところ、相続税を計算する上で、死亡した人の財産に住宅ローンや借入金といった債務(マイナスの財産)がある場合、現金や預金をはじめとしたプラスの財産と相殺することができ、これを債務控除と言います。
ちなみに、国税庁のWEBサイトでは、相続税の計算をする上で控除をすることができる債務控除について、以下のように解説をしています。
(1) 債務
差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないもの(相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除きます。)であっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。ただし、相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。(2) 葬式費用
葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。
出典 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務 1 遺産総額から差し引くことができる債務より引用
死亡した人(被相続人)に債務があれば債務控除をすることができ、かかった葬式費用も債務控除することができるとわかります。
この時、祭祀財産を購入する注意点として、債務控除をすることができない債務があることも知っておく必要があります。
被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。
出典 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務 2 遺産総額から差し引くことができない債務より引用
上記、国税庁の解説におけるポイントは、祭祀財産をローンなどを活用して生前中に購入した場合において、そのローンが残っている状態で死亡した場合、祭祀財産を購入するために残っているローンは債務控除の対象にならないということです。
つまり、たとえば、相続税対策として生前中に祭祀財産を購入したとしても、祭祀財産を購入した代金を一括で支払わず、ローンを組んで分割で支払っている場合、時として、相続税対策の効果が薄まってしまう可能性が生じることを意味します。
こちらにつきましては、次項でわかりやすいイメージを紹介します。
祭祀財産の非課税を活用した相続税対策のイメージ
本項では、祭祀財産の非課税を活用した相続税対策のイメージを比較表で解説していきますが、まずは、これまでの解説におけるポイントをまとめます。
・墓地や墓石などの祭祀財産は、基本的に相続税の非課税財産となる
・祭祀財産は、生前中に購入するのが相続税対策につながる
・祭祀財産を生前中にローンなどで購入した場合で、債務が残っている状態で死亡した場合、残っている債務は相続税を計算する上での債務控除の対象にならない
上記のポイントを踏まえまして、以下、祭祀財産の非課税を活用した相続税対策のイメージを解説します。
なお、前提条件は以下の通りとします。
・遺産総額:5,000万円(現金預金のみとします)
・祭祀財産の購入費用:500万円
・生前中に分割で祭祀財産を購入した後に死亡した場合における残債:300万円
・相続税の計算は、単純計算とし、相続税の計算対象となる財産金額に税率20%を乗じ控除額200万円を差し引いた金額とします
・あくまでも祭祀財産の非課税を活用した相続税対策のイメージを紹介するものであり、細かい相続税の計算は度外視するものとします
祭祀財産を購入するタイミング | 生前中に一括で購入 | 生前中に分割で購入 | 相続後(死亡後)に購入 |
遺産総額と内訳 | 5,000万円(現金預金4,500万円・祭祀財産500万円) | 5,000万円(現金預金4,500万円・祭祀財産500万円) | 5,000万円(現金預金5,000万円) |
相続税の計算対象となる財産金額 | 4,500万円 | 4,800万円 | 5,000万円 |
相続税(単純計算) | 700万円 | 760万円 | 800万円 |
祭祀財産を生前中に一括で購入した場合
祭祀財産を生前中に一括で購入した場合、遺産総額が5,000万円であるものの、相続税の計算対象となる財産の内、祭祀財産は含まれないことから現金預金4,500万円が相続税の課税対象となります。
この4,500万円に20%の税率を乗じ、200万円を差し引きしますと単純計算で相続税が700万円(4,500万円×20%-200万円)となります。
祭祀財産を生前中に分割で購入した場合
祭祀財産を生前中に分割で購入した場合、遺産総額が5,000万円であるものの、生前中に分割で祭祀財産を購入した後に死亡した場合における残債300万円は、債務控除の対象になりません。
したがいまして、祭祀財産の購入金額500万円の内、相続税の計算対象となる財産金額から控除される金額は、生前中にローン債務を支払った200万円分のみとなり、すでに紹介をしましたように相続税対策の効果が薄まっていることがわかります。
祭祀財産を相続後(死亡後)に購入した場合
祭祀財産を相続した後に購入した場合、祭祀財産が非課税であるメリットを活かすことができていないため、生前中に祭祀財産を購入した場合に比べて相続税が高くなってしまっていることがわかります。
このことから、いずれにしても祭祀財産を購入するのであれば、生前中に購入した方が得策であることがまずはわかります。
加えて、相続税が仮に発生する予定であれば、できる限り、生前中に一括で祭祀財産を購入する方が相続税対策を考慮する上で効果的であることもわかります。
おわりに
本ページでは、祭祀財産とはどのような財産であるのかを解説し、合わせて相続税対策として活用する上でのポイントと注意点も紹介させていただきました。
筆者は、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)としてお客様の相談に応じておりますと、お墓の購入について相談を受けることもあるのですが、どのみち祭祀財産を購入するのであれば、やはり生前中に購入するのが望ましいと考えます。
この理由は、相続税対策としての側面もありつつ、ご自身がいつかは入ることになる墓を自ら意思決定することは決しておかしなことではないと思っているからです。
人それぞれ考え方は様々ですが、祭祀財産を購入する機会があるのであれば、先のことも考えた上で購入するタイミングを考えておきたいものです。