先日、当事務所が登録しているファイナンシャルプランナーjpというポータルサイトに親の住宅ローン問題にかかる相談に対して回答をして欲しいとのメールが届きましたが、こちらの相談内容が、現在、20代から40代くらいまでの方々にリアルに関係してくる大きな問題になるのではないかと感じ、今回のブログのネタにさせていただきました。
独立系FPという立場で考えた時、この問題は、決して他人事ではない問題であると私は感じたため、参考までに読み進めていただきまして、皆さま1人ひとりが自分は大丈夫なのか考えていただくきっかけになっていただければ幸いです。
相談内容を紹介
私は35歳、勤続2年4ヶ月正社員、年収400万の男です。
現在、親は定年退職して簡単な仕事をしておりますが親名義の住宅ローンが信託銀行で1400万程残っております。
親の体調も良くなく月々の支払いが難しい状況となっているため、私が援助をして月々の返済をしているのですが、私も家庭を持っており長期間、今の金額を肩代わりをすることが難しく、月々の返済額を下げる為、私が他の金融機関等でローンを組むことは可能でしょうか。
また、親子間売買は出来ますでしょうか。
私は10年ほど前に任意整理をしておりますが現在は、ローンを組んだり借金はしておりません。
宜しくお願い致します。
出典 ファイナンシャルプランナーjp 親の住宅ローン より引用
両親が定年退職を迎えたのにも関わらず、住宅ローンの残債が多く残っており、子どもが金銭負担をするといったケースは決して珍しいことではありません。
このようなケースに加え、両親が亡くなった後の相続で住宅ローン債務を抱えてしまう場合もあることから、状況は違えど、住宅ローン債務の負担を余儀なくされる部分は共通していることが伺えます。
相談内容を拾って考えてみる
質問内容から、それぞれの質問に対して考えてみたいと思います。
Q1.親の体調も良くなく月々の支払いが難しい状況となっているため、私が援助をして月々の返済をしているのですが、私も家庭を持っており長期間、今の金額を肩代わりをすることが難しく、月々の返済額を下げる為、私が他の金融機関等でローンを組むことは可能でしょうか。
仮に、ローンの種類を問わないとするならば、ローンを組むことが可能だと推測される一方で、自分の家庭と両親をどちらも支えるのには限界があるのは質問者さんが承知の通りです。
将来的に共倒れになってしまうことも考えられるほか、親子間であったとしても、今回の質問内容は援助が「贈与」にあたると考えられることから、この辺も注意しておかなければならないことは言うまでもありません。
兄弟姉妹がいるのであれば、話し合うことで負担を分散させることをはじめ、専門家であるFPなどへ相談して最適な方法を模索してみることも一策と考えます。
Q2.親子間売買は出来ますでしょうか。
親子間売買は可能です。
ただし、親子間売買にあたって金融機関から住宅ローンの融資を受けることは、審査がかなり難しくなることも視野に入れておかなければならず、実際に融資が受けられる可能性は低いと考えておく必要もあります。
この理由として、住宅ローンは住宅購入などといった目的に応じて借入するお金ではあるものの、あえて親族間での住宅を売買することを逆手にとって利用し、お金を不正に借りることも実際には可能だからです。
このような不正がされてしまいますと、本来の融資目的から外れてしまうだけでなく、時として犯罪やその他の特殊事情に融資金が利用されてしまう恐れがあり大変危険です。
このような理由から親子間売買で住宅ローンの融資を受けることは難しいと考えられるわけです。
Q3.私は10年ほど前に任意整理をしておりますが現在は、ローンを組んだり借金はしておりません。
あくまでも個人信用情報を取得し確認することが確実と前置きさせていただいた上で、10年前の任意整理で、かつ、ローンや借金がないという状態であれば、信用取引にかかる支払いが大きく遅延していないという前提で考えますと「問題ない」と考えられます。
総括 ~私たちがあえて考えておかなくてはならないこと~
両親が抱えた借金を抱えてしまう可能性や援助しなければならない状況を迎えることは、今後、誰にでも十分おとずれる可能性がある問題なことは確かです。
それをどのような形で知るのかは、人それぞれであると思いますが、最低限行っておくべき行動として、この相談事例を超えて、「両親が亡くなってしまった後の債務状況の確認」です。
こちらをあえてしっかりとやっておかなくては、後々、取り返しのつかないことになってしまうため本当に注意が必要です。
参考 佐藤元宣FP事務所 追記 お金のあるなしに関係なく発生する相続の問題点
結果論であるとはいえ、住宅ローンを抱えている両親としては、そもそも定年退職や年金支給前といった大きなライフイベントを迎えるまでに住宅ローンの完済をさせるための計画を立てられないだけでなく実行できなかったことに一番の問題があるわけですが、これは、今の若年者の皆さんをはじめ、住宅ローンの返済中であるすべての人に言えることも確かです。
明日は我が身にならないようにするためには、言うまでもなく何が起こったとしても住宅ローンの完済が確実にできる対策を取っておかなければならないのです。
そして、その行動を起こすのは私たち1人ひとりであることを決して忘れてはならないはずであり、後世に影響を与えることを十分に理解できなければ住宅ローンを組むべきではないとさえ私は思います。
そのくらいの覚悟と責任をもって、あこがれの住宅購入を実現していただきたいものです。