日本政府は、少子化対策を行うための対策案として、住宅金融支援機構などが取り扱っている「フラット35」の金利を軽減する検討を1つの案としているようです。
また、民間金融機関の中には、子どもの数に応じて住宅ローンの金利を優遇する取り組みが行われるところもあります。
ここだけを見ますと、これから住宅ローンの申し込みを検討している子育て世帯にとって、とても興味深い内容だと思います。
しかし、実際に金利優遇される住宅ローンの金利を考慮しますと、はたして、子どもの数に応じた金利優遇は本当に子育て支援につながるのか?疑問に感じるのは私だけではないでしょう。
そこで、このページでは、簡単な住宅ローンシミュレーションを紹介しながら、独立系FPである私が疑問に感じた理由を綴っていきます。
目次
取り組みはすばらしいが・・・。わずかの金利優遇が与える効果は?
子育て世帯に対する住宅ローンの金利優遇をする取り組みはすばらしいことだと感じています。
ただし、住宅ローンの金利優遇が与える影響は、家計の支出を抑え、手元に残るお金が多く残るプラスの影響を与えなければ、本当の意味で子育て支援につながっていくとはいえません。
また、金利優遇がどの程度なされるのか?そもそも金利優遇前の住宅ローンの金利はどのくらいなのか?によっても効果や人の感じ方は異なります。
本当に子育て支援につながる?シミュレーションで金利優遇前と後を確認
とある民間金融機関が、子どもの数に応じて住宅ローンの金利を優遇する取り組みを見ますと、子ども1人につき「0.05%」の金利を引き下げるようです。
ちなみに、金利優遇は最大で「0.3%」となっており、金利優遇前の住宅ローン金利が固定金利2.2%のとき、はたしてどのくらいの効果があるのか?シミュレーションで確認してみましょう。
なお、子どもが3人いる世帯を例に、住宅ローンの借入条件は以下の通りとします。
・借入金額:3,000万円
・金利:固定金利2.2%
・返済期間:35年間
・返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし)
金利優遇効果を比較するため、上記以外の事情は考慮しないものとします。
金利優遇前(金利2.2%)の返済金額
参考:金融広報中央委員会 知るぽると しっかりシミュレーションより佐藤元宣FP事務所で試算
シミュレーション結果より、毎月の返済金額は「102,485円」であることが確認できます。
金利優遇後(金利2.05%)の返済金額
子どもが3人で、1人あたりの金利優遇が「0.05%」ですと、優遇金利は0.15%となります。
この金利優遇を受けた場合の返済金額は以下の通り。
参考:金融広報中央委員会 知るぽると しっかりシミュレーションより佐藤元宣FP事務所で試算
シミュレーション結果より、毎月の返済金額は「100,150円」であることが確認できます。
子どもの数に応じた金利優遇は本当に子育て支援につながるのか
先のシミュレーション結果より、金利優遇前と後での差額は「1ヶ月あたり2,335円」でした。
単純計算で、年間約28,000円の優遇効果となるのですが、子ども3人で、この金額ですとみなさんはどのように感じるでしょう?
私も含め、ほぼすべての人が子育て支援になるとはいえない答えを出すのではないでしょうか?
ちなみに、仮にシミュレーションの金利が低かったとしても得られる金利優遇効果はわずかです。
「子どもの数に応じた金利優遇」や「子育て支援」といった言葉は見え方や聞こえ方はとても良いものです。しかし、形式だけに捉われていて本当の子育て支援になるのか?実態で考えたとき疑問に感じた私はおかしいでしょうか?
家計の基本から考える簡単な子育て支援
家計のお金がより多く手元に残るためには、収入を多くし支出を少なくすることが求められます。
このように考えますと、本当の意味での子育て支援というのは、子育て世帯に対してお金を給付したり、支出にかかる負担を減らすことですよね?
たったそれだけの簡単なことですが、世帯収入(所得制限)や子どもの数などによって、支援が受けられたり受けられなかったり。
やっぱりおかしな世の中です。
住宅ローンは比較検討・シミュレーション・返済計画につきる
子どもの数に応じた住宅ローンの金利優遇は、金利が優遇される幅と実際に適用される金利が大きく関係します。
そのため、本当に子育て支援につながるのかどうかについては、人それぞれの感じ方が異なるところです。
また、住宅ローンにかかる各種諸費用も考慮しますと、実質の負担金額を精査・確認するためには、やはり住宅ローンの比較検討・シミュレーション・返済計画につきると私は考えます。
物価の上昇をはじめ、物やサービスの価格が全体的に増加し、生活がしにくいと感じたり不安を抱く人も少なくないでしょう。
このような不安を軽減したり取り除くために、いま、何をしたらよいのか?
最適解は、人それぞれですが、目に見える部分よりも「実態」で考え、先々を見据えて行動することが基本に沿った解決策になるような気がしてなりません。