平成28年8月に行われた「2016.AKITAライフサークル」の上半期では、秋田県出身の学生さんに対して「就職」から「結婚・出産・子育て」までのライフプランについてざっくりとお話をさせていただきました。
ところで、初めて出産を経験される女性の皆さんにとってみますと、さまざまな面で不安を抱えていると思いますが、その不安の1つに「お金」の問題も含まれていると思います。
中には、ある程度まとまったお金がないと出産するのが難しいと感じておられる方も決して少なくありません。
このようなことを踏まえまして本記事では、出産に関わる保険と制度について幅広く紹介することで、初めて出産をされる方が出産にかかるお金の不安を少しでも払拭してもらう目的の下、作成・公開していきます。
目次
出産に関わる保険について
一般に「保険」というと、健康保険や国民健康保険のような「公的保険」と保険会社が取り扱っている医療保険のような「民間保険」をイメージされる方が多いと思います。
出産におきましては、厳密に考えると「病気ではない」といったことから、原則として公的保険や民間保険の保障対象外という取り扱いになっています(例外あり)。
つまり、出産にかかる費用は「すべて自費」と考えることができますが、これでは毎日の生活をしながら子どもを出産し育てていくのに大きな弊害が生じてしまいます。
そこで、国や地方自治体では妊娠している世帯に対してさまざまな助成や制度で援助する仕組みが構築されています。
出産に関わる助成や制度について
ここからは、出産に関わる助成や制度について紹介していきますが、妊娠から出産までという一連の流れに沿ってざっくりと紹介していきます。
助成や制度の詳細についてより深いところまで確認したい場合は、お住いの市区町村の役所をはじめ、各種専門家へお問い合わせください。
妊娠健康診査
妊娠健康診査とは、一般に「妊婦健診」とも呼ばれ、妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために行う健診になります。
妊婦健診も健康保険や国民健康保険のような公的保険の対象外となるため、原則として「全額が自費」という取り扱いになりますが、お住いの役所へ「妊娠届」を提出することによって、妊婦健診を受ける費用が助成される仕組みになっています。
具体的には、妊娠届を提出すると「母子手帳」と共に「14回分の妊婦健診が無料になる受診券」が配布されます。
お住いの自治体によっては、他の方法で助成される仕組みもあるようですが、ほとんどの自治体では「14回分の無料受診券を配布」する方法が最も多く採用されています。
出産育児一時金および直接支払制度
子どもを出産する時にかかる、いわゆる「分娩費用」も残念ながら公的保険の保障対象外になっておりますが、この分娩費用を助成するための制度として「出産育児一時金」というお金が健康保険や国民健康保険といった公的保険から支給されることになっています。
出産育児一時金は、子ども1人につき42万円が支給され、双子以上の場合におきましては、その人数分の出産育児一時金が支給されます。
おもに上場企業などに勤めている方で健康保険組合に加入している場合は、「付加給付金」という上乗せ支給もあり、これはそれぞれの健康保険組合によって異なります。
なお、出産育児一時金を受け取るための手続きにおきましては、後述する「直接支払制度」の利用を強くおすすめ致します。
出産育児一時金の直接支払制度とは、実際にかかった分娩費用と出産育児一時金(42万円)を差し引いた残りの分を病院へ支払えばお金の支払いが完了するといった仕組みです。
たとえば、病院から分娩費用やその他として「45万円」の請求をされる予定だったと仮定します。
この時、出産育児一時金の直接支払制度を利用することで、45万円から42万円を差し引いた3万円を病院へ支払えばお金の支払いが完了するといったイメージになります。
この制度のメリットは、何と言っても「まとまったお金を用意する必要がないこと」「後で出産育児一時金の請求をしなくともよいこと」があげられます。
つまり、妊娠から出産までという流れを助成制度を考慮してみていくと、あまりお金の心配ってする必要がないと感じていただけるのではないでしょうか?
ただしこれは、あくまでも「正常分娩」の場合であり、たとえば出産の途中で急遽、帝王切開などの術式に切り替えて医療処置が施される場合も十分あり得ます。
このような場合は、公的保険の保障対象となるものの、分娩費用が大幅に膨れ上がることになるため、実際に負担する医療費も高額になってしまいます。
高額療養費制度および医療費控除
出産が帝王切開などの異常分娩によって行われた場合は、負担する医療費が正常分娩に比べて大きくなりますが、「高額療養費制度」によって実際に支払う医療費を圧縮できる効果が期待できます。
子どもを出産するまでどのような分娩になるかはわかりませんので、少なからず帝王切開などの異常分娩になった場合でも対応できる資力は備えておきたいものです。
高額療養費制度の計算上、個々の所得などによってその計算方法が異なるため、一概に「〇万円必要」と申し上げることはできませんが、気になる方は、本記事を最後まで読み終えた後に専門家である社会保険労務士やFPへ相談してみることをおすすめします。
また、高額療養費制度の対象となる医療費は、「医療費控除」といった所得税や住民税の負担を軽減させられる所得控除の対象となります。
あくまでも収入や所得によって医療費控除の適用の可否は異なるものの、1月1日から12月31日までの1年間において家族の医療費が「10万円を超えた場合」は、医療費控除の対象となる可能性がありますので、併せて専門家である税理士やFPへ相談してみることをおすすめします。
医療保険に早めに加入するのも一策
ちまたでは、高額療養費制度があるから医療保険がいらないといった情報も出回っておりますが、あくまでもこれは自分自身の立場をよく踏まえた上で決定するべきものだと思います。
たとえば、帝王切開で出産することになって実際の医療費負担が10万円かかったとします。これを貯蓄から支出するのか、医療保険の保険金で支払うのかといった考え方がまずできることになります。
また、先々のことを考えますと、歳を重ねたことによって大病で入院することもあるでしょう。この時も貯蓄から支出するのか、医療保険の保険金から支出するのかといった選択肢が問われます。
年金生活だとしたら、貯蓄から出せる資力があるかどうか、毎月の高額医療費に耐えられるのか、などなど広い視野で考える必要性があると私は思います。
まとめ
妊娠から出産までの助成や制度についてざっくりと紹介させていただきました。
お金の話でいきますと「出産手当金」や「育児休業給付金」「児童手当」など、初めて出産を経験される皆さまへお伝えしたいことが山ほどあるのですが、こちらにつきましては、記事ができあがりましたら、できるだけ速やかにわかりやすく紹介したいと思っております。
少子高齢化といわれる時代ですが、専門家FPと致しましては、お金の心配をしてもらう必要がない情報を発信し、少子高齢化に歯止めをかけるような取り組みをこれからもしていかなければならないと改めて感じております。