本ページでは、所得税の確定申告で医療費控除を受けた場合に還付金額を簡単に知る計算方法を紹介しています。
なお、本ページは、2019年1月25日に初めて公開したものを大幅に改編・修正・加筆し、令和4年度の確定申告に対応した内容となっています。
はじめに、医療費控除の適用を受けるためには、適用要件を満たした上で所得税の確定申告をしなければなりません。
このとき、医療費控除の適用を受けることによって、いくら還付されるのか?気になる人も多いと思います。
実のところ、これを知るにはとても簡単で、実際、国税庁のWEBサイトでも計算方法や具体例を公開しています。
そこで本ページでは、この国税庁のWEBサイトを一部改編引用し、所得税の確定申告で医療費控除を受けた場合に還付金額を簡単に知る計算方法をわかりやすく紹介していきます。
目次
【重要】所得税の還付を受けられるかどうかをまずは確認
まずは、そもそも所得税の還付を受けられるかどうかを確認する必要があります。
この方法はとても簡単で、勤務先などから交付を受けた源泉徴収票を見るとすぐにわかります。
上記、源泉徴収票の書式は古いですが、全く関係ありません。
重要なのは、源泉徴収票に記載されている「源泉徴収税額」です。
この「源泉徴収税額」に記載されている金額が「0円以外」であれば、所得税の還付が受けられます。
所得税の確定申告で医療費控除を受けた場合に還付金額を知る計算方法
ここから、所得税の確定申告で医療費控除を受けた場合に還付金額を知る計算方法を紹介します。
なお、具体例と計算方法は、国税庁のWEBサイトで公開している具体例と計算方法を一部改編引用しながら解説していきます。
具体例(前提条件)の確認
私は、会社員であり、令和4年1月1日から12月31日までの収入金額は650万円でした。
勤務先で年末調整がされており、交付された源泉徴収票に記載されている給与所得控除後の金額は466万円、所得控除の額の合計額は173.5万円、源泉徴収税額は199,000円です。
そのほか、医療費控除の適用を受けようと考えており、計算した医療費の支払額は50万円でした。
なお、支払った医療費について、生命保険などにより6万円の補てんを受けています。
出典:国税庁 No.1000 所得税のしくみ 具体例2を一部改編引用
上記の具体例(前提条件)を源泉徴収票に表すと、以下のようになります。
具体例にある「収入金額」は、源泉徴収票に記載されている「支払金額」のことです。
「給与所得控除後の金額」は、いわゆる「給与所得」にあたり、これは後で解説する計算過程でとても大切になる金額です。(現時点で赤枠を気にする必要はありません)
では、上記を踏まえ、計算過程を紹介していきます。
還付金額を知るまでの税金計算方法と流れ
還付金額を知るまでの税金計算方法と流れは、以下の通りです。
番号を付して解説しますので、順番の通りに計算することで、所得税の還付金がいくらになるのか知ることができます。
1.所得金額を確認します
所得金額とは、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額=給与所得」となります。
そのため、具体例における所得金額は、4,660,000円です。
2.医療費控除の金額を計算する
次に、医療費控除の金額を計算します。
実のところ、医療費控除の金額には計算式が設けられており、この計算式がわからなければ還付される税金を計算することができません。
まずは、具体例の場合における医療費控除の金額を紹介しておきます。
医療費控除の金額は、実際に支払った医療費の総額50万円から支払った医療費のうち補填されたものを差し引く必要があります。
具体例では、保険金を受け取っているため、この受け取った保険金6万円を差し引かなければなりません。
なお、注意点100,000円の解説は、以下の通りです。
総所得金額等が「200万円超え」なのか「200万円未満」なのかで計算式が異なる
医療費控除の計算式は、大きく2つあります。
そして、2つの計算式のうち、どちらの計算式をあてはめるのか?は、総所得金額等が「200万円超え」なのか「200万円未満」なのかで判断しなければなりません。
具体例の場合における総所得金額等は、所得金額である4,660,000円です。
なお、2つの計算式は以下の通りです。
1.総所得金額等が「200万円超え」の場合
実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円
2.総所得金額等が「200万円未満」の場合
実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-(総所得金額等×5%)
上記より、具体例では「1」の計算式によって、医療費控除の金額を計算しなければならないわけです。
ちなみに、仮に、給与所得が190万円だった場合における医療費控除は以下のように計算されます。
3.所得控除の合計金額を計算する
医療費控除の金額を計算した後は、この医療費控除の金額と源泉徴収票に記載されている「所得控除の額の合計額」を合算します。
具体例の場合は、以下のように計算されます。
4.課税所得金額を計算する
課税所得金額は、2で求めた所得金額から3で求めた所得控除額を差し引いて計算します。
具体例の場合は、以下のように計算されます。
5.所得税と復興特別所得税の税額を計算する
4で計算した課税所得金額に対して所得税および復興特別所得税がかかります。
所得税の計算は、課税所得金額2,585,000円に所得税率を掛けて計算します。
出典:国税庁 No.2260 所得税の税率 計算方法・計算式より引用
課税所得金額が2,585,000円ですので、上記、所得税の速算表を基に該当する箇所にあてはめて計算します。
復興特別所得税は、納めるべき所得税161,000円に2.1%を掛けた金額です。
これら2つを合算した金額が、1年間で納めなければならない所得税・復興特別所得税となります。
6.医療費控除の適用によって還付される税金
ここまでの税金計算によって、具体例の人は、1年間で164,381円の所得税等を納めなければならないことがわかりました。
しかしながら、源泉徴収票に記載されている「源泉徴収税額」を見ると199,000円となっています。
つまり、本来ならば164,381円の税金を納めればよいものを199,000円の税金を納めていることを意味します。
これは、いうまでもなく税金を多く納めすぎているわけです。
したがって、所得税の確定申告を行い、医療費控除の適用を行うことは、納めすぎた税金を戻してもらうことにつながります。
なお、還付される税金は以下のように計算されます。
給与だけでなくほかの収入(所得)がある場合は注意
今回の具体例では、給与所得のみの人を対象に医療費控除の計算例や還付される金額を紹介しました。
このとき、すべての人が給与所得だけとは限らず、たとえば、以下のような人もおられます。
・給与だけでなく副業による収入もある
・事業を営んでおり事業所得がある
・土地や建物を貸付しており不動産所得がある
・給与だけでなく年金収入もある
・給与だけでなく投資を行って利益を得た
・土地や建物を売却して利益を得た など
上記のように、給与所得以外のほかの所得がある場合、総所得金額を計算する関係で注意が必要になります。
具体的には、どのような収入がいくらあって、その収入は何の所得に分類されるのか?判定し所得の計算を個別に行わなければなりません。
なぜならば、すでに紹介したように、総所得金額がいくらなのか?によって、医療費控除の計算式が異なるからです。
したがって、複数の収入(所得)がある人で、医療費控除の適用を受ける場合は注意が必要になります。
FP相談の対応事例から当事務所が伝えたいこと
本ページの最後に、これまでのFP相談の対応事例から当事務所が伝えたいことを3つ記載します。
1つ目は、夫婦共働き世帯で医療費控除の適用がもれている場合があることです。
一例として、夫は医療費控除の適用を受けられないが、妻は医療費控除の適用が受けられるといったパターンが結構あります。
上記のパターンにあてはまりますと、世帯全体において、納める必要のない税金を多く納めていることを意味します。
医療費控除は、所得税だけでなく住民税も減らすことができる効果があります。
そのため、世帯全体のキャッシュフロー(お金の出入り)を考えたとき、ロスが多くなっていると言い切れるわけです。
2つ目は、医療費の領収書を保管していない場合があるということです。
医療費控除の適用を受けるためには、病院や薬局から交付された領収書などを基に医療費控除の明細書を作成する必要があります。
また、医療費のお知らせを活用して医療費控除を適用することもできます。
ただし、医療費のお知らせを活用して医療費控除を行う場合、節税対策としては不十分です。
なぜならば、医療費のお知らせには、1年間にかかったすべての医療費が記載されているわけではないからです。
そのため、医療費の領収書を破棄や紛失せず、しっかりと管理・保管した上で、医療費控除の明細書を作成して所得税の確定申告をするのが望ましいといえます。
3つ目は、過去の医療費控除を適用していない場合があることです。
一例となりますが、当事務所が行ったFP相談において、過去に子どもの歯の矯正によって多額の医療費を支払ったものの医療費控除の適用をしていなかったというものがあります。
中高齢者の場合におけるインプラントもあります。
所得税の申告において、過去に納めすぎた税金があった場合、申告をやり直して納めすぎた税金を戻してもらうことができます。
この手続きには、「還付申告」と呼ばれる方法と「更正の請求」と呼ばれる2つの方法があります。
FP相談によって、相談者様の現況確認をしていきますと、今回の医療費控除に限らず、もれている節税対策はまだまだあると感じています。
ただし、これは実際に相談されるお客様の現況を確認しなければわかりません。
しかしながら、当事務所へ相談報酬として支払った金額以上に得になる場合があることもまた事実。
仮に、所得税の還付を多く受けられた場合、相談報酬が浮くだけでなく、それ以上のプラスになる情報をお客様が得られるところは大きなメリットです。