令和4年6月19日に石川県能登地方で大きな地震が発生しました。
これによって、多大な被害を受けてしまった人も多くおられると思います。
地震に限らず、日本は自然災害をはじめとしたさまざまな災害が世界全体に比べて多い印象を受けます。
そこで、今回の「1500文字くらいのFPブログ」では、「個人を対象」に自然災害やその他の災害を受けたときの所得税の取り扱いについて要点をまとめます。
目次
自然災害やその他の災害を受けたときの所得税の取り扱い
はじめに、地震による震災、風水害といった自然災害のほか、火災などの災害によって住宅や家財に損害を受けたときは、災害減免法により所得税の軽減免除を受けることができます。
ただし、自然災害やその他の災害を受けたすべての人が対象になるわけではありません。
具体的に、災害減免法により所得税の軽減免除を受けるためには、以下、3つの要件をすべて満たしていなければならないことに留意してください。
1.災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下の人
2.震災、風水害、火災等の災害によって受けた損害額が住宅または家財の価額の2分の1以上
3.雑損控除の適用を受けないこと
参考:国税庁 No.8004 災害を受けたときの所得税の取扱い 概要

【災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下の人】とは
災害減免法により所得税の軽減免除を受けるためには、災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下でなければなりません。
「災害のあった年分」とは、たとえば、令和4年に自然災害などで被害にあった場合、令和4年のことを指します。
なお、所得金額の判定は、源泉徴収票や確定申告書で確認することができ、確認イメージは以下の通りです。
給与所得者の人(収入が給与のみの人)
源泉徴収票の書式は古いものですが、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額=所得金額」になります。
現在の源泉徴収票の書式にも必ず「給与所得控除後の金額」が記載されているため、そちらから確認してみてください。
確定申告している人
確定申告書で所得金額を確認する場合、所得金額欄の合計⑧の金額で確認できます。
【震災、風水害、火災等の災害によって受けた損害額が住宅または家財の価額の2分の1以上】とは
こちらの判定につきましては、自己判断ではなく、税理士をはじめとした専門家にあらかじめ相談することを強く推奨しますと前置きして内容を紹介していきます。
まず、損害額を計算するためには、国税庁が定める「合理的な計算方法」で計算する必要があります。
この合理的な計算方法とは、以下の通りです。
1.住宅に対する損失額の計算
①住宅の取得価額が明らかな場合
損失額 =(住宅の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合
②住宅の取得価額が明らかでない場合
損失額 =〔(1m2当たりの工事費用 × 総床面積)- 減価償却費〕 × 被害割合
2.家財に対する損失額の計算
①家財の取得価額が明らかな場合
損失額 = (家財の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合
②家財の取得価額が明らかでない場合
損失額 = 家族構成別家庭用財産評価額 × 被害割合
出典:国税庁 Ⅰ‐2 雑損控除の適用における「損失額の合理的な計算方法」より引用

【雑損控除の適用を受けないこと】とは
実のところ、自然災害やその他の災害を受けた場合、「災害減免法による所得税の軽減免除」もしくは「雑損控除」のいずれか得策になる方を選択して適用をすることができます。
この軽減免除に代えて雑損控除の適用を受けることもできます。
出典:国税庁 No.8004 災害を受けたときの所得税の取扱い 概要(内容)より引用
雑損控除とは別に、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は、災害減免法による所得税の軽減免除があり、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べます。
出典:国税庁 No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除) 手続きより引用
つまり、自然災害やその他の災害を受けた場合、災害減免法による所得税の軽減免除と雑損控除の両方を比較し、得策になる制度を活用することが望ましいことを意味します。
なお、比較検討をした結果、雑損控除の適用を受けない場合に災害減免法による所得税の軽減免除を受けるための要件を満たしていることになります。
ちなみに、雑損控除についてポイントをわかりやすく紹介した記事がありますので、一通り本記事を読み終えた後に、合わせて読み進めていただくと良いでしょう。
災害減免法による所得税の軽減免除割合
災害減免法による所得税の軽減免除割合は以下の通り。
・所得金額が500万円以下の人:所得税の全額が免除
・所得金額が500万円を超え750万円以下の人:所得税額の2分の1が軽減
・所得金額が750万円を超え1,000万円以下の人:所得税額の4分の1が軽減
特殊事情が絡んでいるからこそ専門家へ相談するべき【独立系FPとして感じること】
災害減免法による所得税の軽減免除や雑損控除の適用は、普段とは異なり、特殊事情が絡んでいるからこそ適用できる場合があります。
その一方で、特殊事情が絡んでいるからこそ、税金の申告や手続きに対して慎重、かつ、正確に行うことが求められます。
加えて、特殊事情が絡んでいるからこそ、専門家の協力を得ながら有利に物事を進めることが結果として望ましいともいえるでしょう。
今回のブログでは、税金にかかる内容でしたが、特殊事情が絡んでいる場合、税法に限らず、その他の法令や制度で活用できるものもあります。
これらを有効活用し、災害による苦難を乗り越えることは、再建がスムーズに行えるきっかけになることは確かだと私は感じています。