本ページでは、iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、どのような制度なのか、その特徴と独立系ファイナンシャルプランナー(FP)ならではの、おすすめしたいお金の考え方も合わせて紹介していきます。
はじめに、iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、長い時間をかけて将来の老後資金を積立しながら貯められる制度であり、これに毎年の税金が少なくなるというプラスアルファーのメリットも付いてくる大きな特典があります。
こちらは、本ページ内でわかりやすく紹介していきますが、特に、結婚前や結婚後の若年者をはじめ、小さな子供を育てている子育て世帯の皆さんは、これからの教育資金や老後資金など悩みや不安は付きものだと思います。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、そのような悩みや不安の内、将来の老後生活を無理なく長い時間をかけて準備することができる制度にあたりますが、本ページは、iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度の特徴とおすすめしたい考え方について、できる限りわかりやすく紹介していきます。
目次
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、将来の老後資金を自分自身で準備するための「私的年金制度」のことを言い、大まかなイメージとしては、生命保険にある個人年金保険のように毎月掛金を拠出して、一定年齢(原則として60歳)になった時に、これまで積立したお金と運用益を合わせて受け取る仕組みになっています。
ここで大きなポイントになるのは、「運用益」であり、iDeCo(個人型確定拠出年金)には、元本確保型と呼ばれる「定期預金」および「保険」と元本変動型と呼ばれる「投資信託」があり、これらの投資配分を自ら決定することによって、将来の老後資金を資産運用しながら準備する特徴があります。
大まかなイメージとなりますが、たとえば、毎月20,000円ずつiDeCo(個人型確定拠出年金)に掛金を拠出するとして、以下のような投資配分にしたとします。
1.定期預金:20,000円
2.定期預金:10,000円、保険:5,000円、投資信託:5,000円
3.投資信託:20,000円
まず、ユーザーの皆さんにご理解いただきたいことは、上記3つの投資配分のように、投資配分は、自らの考えで自由に決定できるところにあります。
この時、1のように、掛金のすべてを元本確保型に投資しますと、毎月積立したお金は減ることはありません(厳密には注意が必要です)が、大きな老後資金を長い時間をかけながら準備をすることができません。
一方、3のように、掛金のすべてを元本変動型に投資しますと、毎月積立したお金のほかに、大きな運用益を得ることができる場合があるものの、これまで積立したお金よりも減ってしまうリスクが生じることもあります。(下図の※印部分)
出典 iDeCo公式サイト iDeCoってなに?iDeCoの仕組みより引用
このように、自らの考えで決定した投資配分によって、将来受け取ることになる老後資金は、すべて異なることになるわけです。
ここまで読み進めますと、iDeCo(個人型確定拠出年金)を始める上で、どのような投資配分にすれば良いの?といった疑問の声が聞こえてきそうですが、こちらは、後程、筆者個人のおすすめの考え方を紹介していきます。
まずは、順を追って、iDeCo(個人型確定拠出年金)の基本的な部分を押さえていきましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できる人は、20歳以上60歳未満
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、誰でも加入できるわけではなく、ざっくり説明しますと、年齢が20歳以上60歳未満の方になっています。
この年齢層というのは、実のところ、国民年金の加入義務者の年齢と一致しており、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、国民年金の加入義務がある20歳から60歳までの人に限られていると考えることができるわけです。
ちなみに、国民年金には、第1号被保険者から第3号被保険者まで、3つの種別があり、iDeCo(個人型確定拠出年金)で掛金を拠出する場合、国民年金の種別やその他の条件によって、拠出することができる上限が決められています。
なお、詳細は、以下の通りです。
出典 iDeCo公式サイト iDeCoってなに?掛金の上限より引用
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できない人とは
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できる人は、年齢が20歳以上60歳未満の方であることを説明しましたが、この年齢条件を満たしていたとしてもiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することができない場合があり、具体的には、以下の内容にあてはまる方は残念ながらiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することができないため、別の方法で老後資金対策を行う必要があります。
なお、第3号被保険者である専業主婦(主夫)には、加入できない条件がありませんので、あらかじめお伝えしておきます。
国民年金の種別が第1号被保険者の方で、国民年金保険料の未納や免除がある人
国民年金の種別が第1号被保険者の方で、国民年金保険料の未納や免除がある人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することはできません。
ポイントは、「国民年金の種別が第1号被保険者」の部分にあり、仮に、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入する際、第2号および第3号被保険者の場合で、過去に国民年金保険料の未納や免除履歴があったとしても、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することはできますので、この部分は確実に押さえておきたいポイントと言えます。
あくまでも、国民年金の種別が第1号被保険者の方で、国民年金保険料の未納や免除がある人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することができません。
国民年金の種別が第1号被保険者の方で、農業者年金の被保険者の人
国民年金の種別が第1号被保険者の方で、農業者年金の被保険者の人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することはできません。
農業者年金とは、農業に従事する60歳未満の方で、国民年金第1号被保険者の方であれば、原則として誰でも加入できる制度であり、ざっくり説明してしまいますと、農業に従事している方のiDeCo(個人型確定拠出年金)とイメージするとわかりやすいでしょう。
ただし、農業者年金は、iDeCo(個人型確定拠出年金)とは異なり、自分自身で商品を選んで資産運用をするのではなく、独立行政法人農業者年金基金が、法令の規定に則って、本人の代わりに資産運用を行うことになります。
ちなみに、農業者年金に加入している人が、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することができるとしますと、後で説明する税金のメリットを農業者年金とiDeCo(個人型確定拠出年金)で二重に受けられるなど、他の人と比較した時、公平性に欠けてしまうため、農業者年金に加入している人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できない措置が取られている理由の1つと考えられます。
国民年金の種別が第2号被保険者の方で企業型確定拠出年金に加入している人(例外あり)
国民年金の種別が第2号被保険者の方で企業型確定拠出年金に加入している人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することはできません。
ただし、企業型確定拠出年金の規約の中で、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することを認めている場合は、自ら掛金を拠出してiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することができるため、こちらが例外にあたります。
年齢が20歳未満および60歳以上の人・海外に住んでいる人(例外あり)
年齢が20歳未満および60歳以上の人や海外に住んでいる人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することはできません。
実のところ、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することができる人の条件の中には、「日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生など国民年金の第1号被保険者」という加入条件もあり、このことから、年齢が20歳未満および60歳以上の人のほか、海外に住んでいる人は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入することはできないことになります。
ただし、会社員などで国民年金の第2号被保険者になっている人で、海外への転勤や勤務になっている人は、例外にあたりますので注意が必要です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金について
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金上限は、すでに説明をしましたように、国民年金の第1号被保険者から第3号被保険者といった3つの種別によってそれぞれ異なっていることがわかりました。
こちらは、上記3つの種別に属している方のすべてに共通している掛金のルールとなりますが、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、月々の掛金が5,000円から始めることができ、この掛金は1,000円単位で自由に決めることができます。
たとえば、毎月の掛金を6,000円や35,000円など、あくまでもご自身の懐具合や家計の状況に合わせて無理なく積立していけるメリットがあるものの、現在置かれている加入区分の掛金上限を超えて拠出することはできない点に注意が必要です。
なお、本ページを作成・公開している令和元年9月現在において、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、毎月掛金を拠出する方法のほか、年単位でまとめて拠出することもできるようになっています。
つまり、会社員や公務員などの給与所得者の方で、賞与(ボーナス)の一部を拠出したいと考えている方をはじめ、年に数回まとめて拠出したいといった考えがある方にとってみますと、活用がしやすい特徴もあることになります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入すると受けられる税金のメリットとは
本ページの冒頭では、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入すると毎年の税金が少なくなるプラスアルファーのメリットが付いてくることをお伝えしております。
出典 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCoのイイコトより引用
具体的には、上記図にありますように、iDeCo(個人型確定拠出年金)に拠出した掛金は全額所得控除になる、iDeCoで資産運用をして得た運用益に税金がかからない、iDeCoで資産形成したお金を実際に受け取る時も各種税金の控除が受けられるといった3つのメリットがあります。
これらのメリットをざっくりまとめますと、まず現役中は、毎年の年末調整や確定申告でiDeCo(個人型確定拠出年金)に拠出した掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になるため、納めるべき所得税や住民税を毎年少なくすることができます。
次いで、資産運用をしている最中は、時間をかけて積立したお金が徐々に大きくなっていくわけですが、この時、資産運用をして生じた運用益があったとしても運用期間中に税金が課されて目減りすることがありません。
つまり、積立したお金と運用益が再度、資産運用されることにつながり、福利効果によって、時間が経過すればするほど、資産が大きくなる好影響を及ぼすわけです。
最後に、iDeCo(個人型確定拠出年金)の運用が終了する60歳になってから受け取るお金は、お金の受け取り方によって、退職所得控除または公的年金等控除が適用され、受け取ったお金に税金がかかりにくい仕組みが構築されています。
このように、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入しますと、拠出している期間、資産運用をしている期間、お金を受け取る期間といった各種期間で、税金のメリットが得られ、老後資金を貯めながら増やし、かつ、税金のメリットも受けられる魅力的な制度であることがご理解できるのではないでしょうか?
iDeCo(個人型確定拠出年金)でおすすめしたいお金の考え方
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、長い時間をかけて将来の老後資金を積立しながら貯められる制度であり、これに毎年の税金が少なくなるというプラスアルファーのメリットも付いてくることがご理解できたと思います。
実際に、iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めるためには、加入条件を満たしていることが必要なほか、証券会社や銀行をはじめ、インターネット証券会社などの金融機関を通じてiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めるための申し込み手続きを行う必要があるのですが、本ページの最後に、金融機関の選び方も含めたiDeCo(個人型確定拠出年金)でおすすめしたいお金の考え方を紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で成功するためには、金融機関選びと商品選びが極めて重要
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、申し込みを行う金融機関によって、iDeCo(個人型確定拠出年金)で資産運用することができる金融商品のラインナップが全く異なっています。
特に、対面型の証券会社や銀行とインターネット証券会社では、商品の取り扱い本数が大きく異なり、これは、将来受け取ることになるiDeCo(個人型確定拠出年金)のお金に直接影響を及ぼす大きな原因になります。
なぜならば、元本変動型である投資信託を上手に活用しなければ、iDeCo(個人型確定拠出年金)の資産形成を成功させるのが難しく、かつ、投資信託の手数料は、商品の種類によって全く異なるからです。
つまり、手数料が高く、かつ、パフォーマンス(運用実績)の悪い投資信託に掛金を拠出したとしても、希望に沿った資産形成が行いにくくなるため、iDeCo(個人型確定拠出年金)で成功するためには、金融機関選びと商品選びが極めて重要となるわけです。
あえて名指しはしませんが、正直なところ、ここの金融機関でiDeCo(個人型確定拠出年金)なんかできないってところ、筆者個人としてはかなりあるのは確かであり、インターネット証券会社から選ぶのが無難なのではないかと感じています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で資産運用する場合、初めは投資信託(元本変動型)で大きなリターンを得ることを意識する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、長い時間をかけて積立しながらお金を育てる長期投資にあたるため、運用終了となる60歳になるまでに与えられている長い時間をいかに有効活用することができるのかが、大きなポイントになります。
そのためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入した当初から元本確保型で資産運用をするのは、時間をうまく使えずに、大きなお金を形成するためのチャンスを逃してしまうため、まずは、長い期間に渡って投資信託で大きなリターンを得ることを意識するように心がけることを強くおすすめします。
なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)では、後から配分変更(投資信託100%での運用を投資信託50%、定期預金50%へ変更といったイメージ)やスイッチング(商品の入れ替え)ができる特徴があるため、いわば、途中で投資信託の投資割合を少なくしたり、これまで積み上げてきた投資信託と運用益をまとめて利益確定させて元本確保型の商品に入れ替えすることも可能です。
そのため、これらの方法と長い時間を有効活用することによって、大きな資産が形成しやすくなるため、運用当初から小さなリターンしか得られない資産運用は避けるようにするべきでしょう。
長い時間をかけて気長に待つのが成功の秘訣
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、長い時間をかけて気長に待つのが成功の秘訣にあたるため、たとえば、当初、投資をした投資信託の運用成績が良くないからといって、すぐに配分変更やスイッチングすることは好ましくありません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(積立nisa)のような長期投資というのは、長い時間をかけて少しずつお金が大きくなっていく投資であり、株式投資やFXのように短期間で大きなお金を得るようなものではないことをまずもって理解しておく必要があります。
たとえば、30歳からiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めて、60歳になるまでの運用期間が30年間ある場合、10年、15年、20年など節目の年に、世帯状況や将来の考え方と合わせて、今後の資産運用の仕方を改めて考えるくらいの余裕を持っておきたいものだと筆者は考えます。
おわりに
iDeCo(個人型確定拠出年金)の特徴やおすすめしたいお金の考え方を紹介させていただきましたが、多くの書籍などでは、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するのに最強の制度などと謳われていることがあります。
筆者個人としても、老後資金が不安な方や長い時間やお金を無理なく賢く使いたいと考えている方であれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用してみるのは大いに賛成です。
ただし、iDeCo(個人型確定拠出年金)を始める場合、最初と最後がとても肝心でありますから、iDeCo(個人型確定拠出年金)の始め方やお金の受け取り方や注意点についてもあらかじめしっかりと知っておくことが望ましいと言えます。
年齢が若ければ若い程、運用期間が長く、より多くの老後資金と税金のメリットが得られることになりますので、時間とお金をできる限り上手に活用したい方は、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用することも選択肢に入れて、自分や家族のために新たな一歩を歩み始めるのが得策だと筆者は感じます。