本ページでは、老後資金対策でiDeCoを始める前に毎月かかるiDeCoの手数料を確認しなければならない理由を紹介します。
なお、本ページは、2019年9月29日に初めて公開したものを2022年8月11日に大幅に加筆・修正しております。
はじめに、将来の老後資金対策のためにiDeCoを使う方法はとても効果的です。
しかし、ただiDeCoを始めれば良いといったことはなく、iDeCoの節税効果やiDeCoの手数料など、さまざまなことをあらかじめ確認しておかなければなりません。
そこで本ページでは、iDeCoの手数料に焦点をあて、なぜ、老後資金対策でiDeCoを始める前に毎月かかる手数料を確認しなければならないのか?その理由について紹介します。
目次
【まずは結論】iDeCoを始める前に毎月かかる手数料を確認しなければならない理由
iDeCoを始める前に毎月かかる手数料を確認しなければならない理由は、無駄に支出するお金を減らす必要があるためです。
毎月かかるiDeCoの手数料は、金額が少額であることは確かです。
しかし、長い期間で手数料負担を考えますと、まとまった大きな金額になってしまいます。
つまり、この長い期間に渡って負担したiDeCoの手数料は、私たちにとって無駄なお金にあたり「ロス」につながるわけです。
【どのくらい違う?】毎月かかるiDeCoの手数料を長期間で比較
iDeCoの手数料は、iDeCoを始める金融機関によって異なる特徴があります。
ここでは、毎月かかるiDeCoの手数料が「安いところ」と「高いところ」ではどのくらい違うものなのかを紹介します。
なお、比較する前提条件は、以下の通りとします。
・iDeCoの運用は、毎月継続して積立を行うものとします。
・iDeCoの運用期間は、30年で手数料を比較します。
・手数料の安い金融機関をA社、高い金融機関をB社とします。
ちなみに、手数料の比較にあたって参考にサイトは、特定非営利活動法人確定拠出年金教育協会が運営しているiDeCoナビ(個人型確定拠出年金ナビ)です。
【30年で約15万円の違い】A社とB社の手数料比較結果
手数料の安い金融機関A社と手数料の高い金融機関B社を比較した結果は以下の通りです。
A社:171円×12ヶ月×30年=61,560円(30年間で支払う手数料)
B社:589円×12ヶ月×30年=212,040円(30年間で支払う手数料)
差額:150,480円
毎月かかるiDeCoの手数料は少額であっても、30年という長い期間で比較すると大きな差が生じています。
この比較結果を見ると、iDeCoを始める前に毎月かかる手数料を確認しなければならない理由をご理解いただけるものと思います。
【手数料の種類】iDeCoにかかる手数料の種類と特徴
iDeCoにかかる手数料には、毎月かかるものから、iDeCoに加入するときだけかかるものなどさまざまなものがあります。
iDeCoにかかる主な手数料は以下の通りです。
1.加入時手数料
2.口座管理手数料
3.運用管理費用(信託報酬)
4.給付事務手数料
5.移換時手数料
6.還付手数料
iDeCoの主な手数料は、上記6つの種類があります。
次項では、これらの手数料がどのようなものなのか?特徴を紹介します。
【1回だけかかる手数料】加入時手数料
加入時手数料は、iDeCoへ加入するときに1回だけかかる手数料のことをいいます。
加入時手数料の金額は、2,829円となっており、金融機関による違いはありません。
なお、加入時手数料は、iDeCoへ加入し初めて掛金を支出したものから差し引かれます。
【毎月かかる手数料】口座管理手数料
口座管理手数料は、毎月かかるiDeCoの手数料のことをいいます。
この口座管理手数料は、以下、3つの支払先に毎月支払うことになります。
・国民年金基金連合会:毎月105円(金融機関による違いはありません)
・信託銀行:毎月66円(金融機関による違いはありません)
・金融機関:毎月無料のところもあれば有料のところもある(金融機関による違いあり)
先に紹介した手数料の比較は、この口座管理手数料のことです。
【投資信託にかかる手数料】運用管理費用(信託報酬)
運用管理費用(信託報酬)は、投資信託にかかる手数料のことをいいます。
iDeCoで選ぶことができる金融商品は、大きく「定期預金」「保険」「投資信託」の3種類があります。
このうち「元本変動型」と呼ばれる投資信託を選んだ場合、運用管理費用(信託報酬)がかかります。
ただし、iDeCoで大きな老後資金を準備するためには、投資信託を賢く使って資産運用することが極めて重要です。
そのため、単に手数料がかかるからといって投資信託を敬遠することは大きな誤りです。
【お金を受け取るときの手数料】給付事務手数料
給付事務手数料は、iDeCoで積立したお金を受け取るときにかかる手数料のことをいいます。
iDeCoで積立したお金は、60歳になると受け取ることができます。
このとき、分割(年金)で受け取ることもできますし、一括(一時金)でまとめて受け取ることもできます。
また、年金と一時金を併用して受け取ることも可能です。
どのような受取方法であったとしても、給付事務手数料は、1回あたりにかかる手数料となります。
仮に、iDeCoで積立したお金を年金(分割)で受け取る場合、受け取り回数が多くなることによって給付事務手数料がかさんでしまう点に注意が必要です。
なお、iDeCoで積立したお金を年金(分割)で受け取った場合、雑所得(公的年金扱い)として所得税および住民税の課税対象になります。
そのため、年金(分割)で受け取る場合は、給付事務手数料のことだけでなく、税金がかかるのかどうか?も合わせて確認しておくことが望ましいといえます。
【金融機関を変更した場合など】移換時手数料
移換時手数料は、iDeCoを行っている金融機関を変更する場合にかかる手数料のことをいいます。
また、企業型確定拠出年金や企業型確定給付年金へ移換するときも移換時手数料がかかります。
移換時手数料は、金融機関によってかからない(無料)のところもあれば、4,400円かかるところもあります。
なお、移換時手数料は、iDeCoで積み立ててきた資産から間接的に差し引かれます。
【諸事情で掛金が戻される場合】還付手数料
還付手数料は、iDeCoへ加入している人の諸事情によって掛金が戻される場合にかかる手数料のことをいいます。
ここでいう諸事情とは、以下のような場合です。
・iDeCoの掛金が法律で定められた限度額を超えて支出された場合
・iDeCoの加入資格がない月に掛金が支出された場合
特に、国民年金の第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者やフリーランスなど)は注意が必要です。
なぜならば、iDeCoは、国民年金の第1号被保険者で国民年金の未納や免除の年金履歴があった場合、iDeCoに加入することはできないからです。
よほどの諸事情がない限り、還付手数料を負担することはないと思われます。
なお、還付手数料は、国民年金基金連合会に対して1,048円、信託銀行(金融機関)に対して440円がかかります。
【手数料対策】iDeCoで老後資金対策を成功しやすくするためのポイント
ここまでの紹介で、iDeCoにかかるさまざまな手数料を考えることは重要だと感じていただけたと思います。
その一方で、具体的にどのようにしたらiDeCoで老後資金対策を成功させやすくなるのか?知りたい人も多いのではないでしょうか?
そこで、ここでは、iDeCoで老後資金対策する上で考えるべきポイントを4つ紹介します。
【1つ目のポイント】口座管理手数料が安い金融機関を選ぶ
老後資金対策が成功しやすくなる1つ目のポイントは、iDeCoの口座管理手数料が安い金融機関を選ぶことです。
こちらは、すでに紹介している内容であり、実際の金額を見てご理解いただけていると思います。
iDeCoは、長い期間をかけて積立しながら資産運用をする長期投資です。
だからこそ、月単位で見たときに少額の手数料であったとしても、無駄に多くのお金を失うリスクを避けなければなりません。
【2つ目のポイント】iDeCoの運用開始時は投資信託で積極的な資産運用を行う
老後資金対策が成功しやすくなる2つ目のポイントは、投資信託を使った積極的な資産運用です。
具体的に、iDeCoを始めた最初のうちは、定期預金や保険ではなく、投資信託への投資を行います。
これは、長い時間をかけて資産運用をする場合、投資信託を毎月積立投資する方が、より多くのリターンが期待できるからです。
逆に、最初から定期預金や保険といったリターンが小さなものへ投資してしまいますと、毎月の手数料の方がリターンよりも多くなる懸念が生じます。
つまり、手数料負けしてしまうということです。
これでは、老後資金対策を行うためにiDeCoを始めている意味が無くなってしまいます。
このようなことを防ぐ意味でも、投資信託を積立投資して多くの資産を形成するための運用を心掛けてください。
【3つ目のポイント】運用管理費用(信託報酬)ができる限り小さな投資信託を選ぶ
老後資金対策が成功しやすくなる3つ目のポイントは、運用管理費用(信託報酬)ができる限り小さな投資信託を選ぶことです。
2つ目のポイントに関係する内容ですが、本当にとても大切です。
具体的には、iDeCoで選択する投資信託の中には、インデックスファンドと呼ばれる投資信託があります。
このインデックスファンドは、運用管理費用(信託報酬)が基本的に小さなものが多い特徴があります。
このインデックスファンドを比較し、できる限り信託報酬が小さなものへ投資することを心掛けてください。
【4つ目のポイント】iDeCoの毎月掛金はできる限り多めにする
老後資金対策が成功しやすくなる4つ目のポイントは、iDeCoの毎月掛金はできる限り多めにすることです。
iDeCoの掛金は、最低5,000円からとなっています。
決して毎月5,000円をiDeCoに積立することは悪いとはいいません。
ただし、長い時間をかけて大きな老後資金を準備できるからこそ、毎月の掛金はできる限り多めにしたいものです。
また、iDeCoの掛金は、節税効果を得られるメリットもあります。
つまり、老後資金対策をしながら節税もできるわけです。
掛金が多いほど、大きな老後資金を準備できる期待が高まるだけでなく、節税効果も大きくなります。
【おわりに】iDeCoの手数料とファイナンシャルプランニングを考える
私たちが日常生活を送る中で手数料がかかるものは実にさまざまです。
たとえば、ATM手数料、振込手数料、クレジットカードで分割払いしたときの手数料などはイメージがわきやすいでしょう。
これらの手数料は、金額に多少の差があるものの、長い期間に渡って支出すれば、それなりのコストになります。
細かいことではありますが、これらのコストは無駄なお金でありますから、できる限り抑えるように努める必要があるはずです。
このように考えたとき、今回紹介したiDeCoの手数料も同じことがいえるのではないでしょうか?
実際、本ページで紹介した毎月の手数料を比較した内容を見ると一目瞭然です。
iDeCoの手数料は、私たちが直接支払う手数料ではなく、掛金や積立した資産から間接的に支出されるものです。
つまり、目で見て気づきにくい特徴があります。
だからこそ、iDeCoを始める時点で、手数料に細かく目配りすることが、iDeCoで老後資金対策を成功させるためのきっかけになるわけです。
これからiDeCoを始める人は、この点に注意をするようにしてください。
すでにiDeCoを始めている人は、改めて自分の場合はどうなのか?再確認してみてください。
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