本ページは、2019年5月に一般社団法人金融財政事情研究会が実施したファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)の税金について、問題・解答・解説を紹介するものになります。
解答にあたっての注意事項
1.試験問題については、特に指示のない限り、2018年10月1日現在施行の法令等に基づいて解答してください。なお、東日本大震災の被災者等に対する各種特例については考慮しないものとします。
2.問題は、第1問から第5問までありますが、本ページは、第3問の問7から問9のみの問題・解答・解説となります。
3.各問の問題番号は、通し番号になっており、「問1」から「問15」までとなっておりますが、本ページは、税金の分野として、問7から問9までの問題・解答・解説となります。
4.解答にあたっては、各設例および各問に記載された条件・指示に従うものとし、それ以外については考慮しないものとします。
5.本解説は、おもに独学者を対象に、当事務所が推奨しているキーワード学習によるシンプルなものとしております。必ず、テキストで再度復習されることをおすすめします。
6. 画像は、クリックまたはタップをすることで拡大して見ることが可能ですが、金財WEBサイトより印刷した試験問題を見ながら読み進めてみる方が、学習効率のアップが見込まれるものと思われます。
第3問 問7
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問7の解答および解説
①「ニ」②「イ」③「ハ」が、正しい解答です。
損益通算をすることができる所得は、市販されている様々なFPのテキストを見ると「富士山譲」などと書かれており、語呂で覚えましょうといった解説をよく見かけます。
富=不動産所得、士=事業所得、山=山林所得、譲=譲渡所得といったイメージです。
問題文より、①は、事業所得か山林所得があてはまることになりますが、損益通算の第一次通算では、不動産所得または事業所得の損失を給与所得などの経常所得の金額から控除します。
したがって、①は事業所得、②は山林所得があてはまると推測できます。
③は、一時所得があてはまりますが、損益通算には、損失と利益を相殺する順番がありますので、曖昧な方は、テキストに戻ってもう一度復習されてみることをおすすめします。
第3問 問8
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問8の解答および解説
①「〇」、②「×」、③「×」が、正しい解答です。
①は設問の通りですが、以下、参考までに妻Bさんが配偶者控除の対象となる判定を紹介しておきます。
Bさんの給与所得=35万円(100万円-65万円(給与所得控除)
Bさんの雑所得=0円(30万円-70万円(資料にある公的年金等控除額より)=▲40万円 → 0円
Bさんの総所得金額(本問では、合計所得金額も同額)=35万円(35万円+0円)
合計所得金額が38万円以下であるため、AさんはBさんを配偶者控除の対象とすることができます。
②は、Aさんと母Cさんの関係およびCさんの年齢や所得が大きなポイントになります。
Cさんの雑所得=0円(50万円-120万円(設例や資料にはありません)=▲70万円 → 0円
上記より、Aさんは、Cさんを扶養控除の対象とすることができます。
この時、Cさんの年齢が88歳であるため、老人扶養親族となりますが、設例より生計同一関係で同居していることがわかります。
Cさんは、Aさんと血の繋がった母親であり義母ではないことに加え、かつ、同居しているため、直系尊属同居老親としての取り扱いとなり、扶養控除の金額は、48万円ではなく58万円となるため誤りです。
③は、誤りとなりますが、純損失の繰越控除とは、損益通算の対象となる損失のうち、損益通算を行っても、なお控除しきれない金額がある場合は、「純損失の金額」として翌年以後3年間に渡って損失を繰越することができ、翌年以後の所得から控除することができる制度のことを言います。
本問における設例の場合、純損失とはならないため誤りです。
第3問 問9
出典 一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定2級実技試験(個人資産相談業務)
平成31年3月許諾番号1903K000001
問9の解答および解説
①「80(万円)」、②「172(万円)」が、正しい解答です。
①の答えを導き出すには、Aさんの収入の内、雑所得となる主な公的年金はどれなのか判定をする必要があります。
結論から申し上げますと、(3)と(4)が該当するため、これらを合算して雑所得となる公的年金の金額を求めます。
(3)=80万円
(4)=30万円
合計=110万円
110万円を資料の公的年金等控除額にあてはめて総所得金額に算入される雑所得の金額を計算します。
110万円-70万円=40万円
(5)=40万円(100万円-60万円)
総所得に算入される雑所得の金額=80万円(40万円+40万円)
②は、総所得金額を求める計算ですが、解答は以下の通りです。
1.給与所得=192万円(設例より)
2.不動産所得=▲100万円(▲120万円+20万円)土地等にかかる負債の利子は損失に含めません。こちらは出題頻度が非常に高いポイントであり、過去問題を何度も繰り返し解いていれば、確実に求められるはずです。
3.雑所得=80万円(①の計算結果より)
総所得金額=172万円(1+2+3)
当事務所の勝手な見解
FP2級の実技試験における税金の問題では、個々に所得金額を計算させ、税金額を求めさせるといった問題が定番化しておりますが、今回の問題にも共通している点は、税金の計算をするための一連の流れを確実に押さえておくことがポイントと言えます。
1つ間違えてしまいますと、ドミノ形式で減点されやすい分野であるため、とにかく繰り返し過去問題を解いて慣れることが合格への近道になると言えます。
税金に携わっていない人にとっては、いつもより少々難易度が高い問題だったかもしれません。(扶養控除の判定や公的年金における雑所得の判定など細かい部分は、初学者には難しかったかもしれません)