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終身保険の解約返戻金を活用した資産運用がおすすめできない理由とは?シミュレーションと共にFPが解説
生命保険・損害保険

本ページでは、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用は、本当におすすめできるものなのかについて、将来のファイナンシャルプランニングを踏まえて独立系ファイナンシャルプランナー(FP)が様々な視点から考えたものを紹介していきます。

はじめに、終身保険は、保障の対象となる人(被保険者)が死亡した場合や高度障害になった場合に保険金が支払われる生命保険ですが、保険契約を解約した際に解約返戻金を受け取れる特徴も併せ持っています。

終身保険の解約返戻金は、加入する生命保険会社や保険契約の仕方によって金額が異なるのですが、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用を行うこともでき、いわば、これまで支払ってきた保険料よりも多くの解約返戻金を受け取れることがあります。

つまり、保険差益を得ることによって、多くのお金を受け取ることができるわけですが、本ページでは、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用は、本当におすすめできるものなのか、保険を売らない独立系ファイナンシャルプランナー(FP)が様々な視点から考えたものを紹介していきます。

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終身保険の解約返戻金とは

終身保険の解約返戻金とは、現在加入している終身保険の保険契約を解約した場合に、終身保険を加入していた保険会社から支払われるお金のことを言います。

終身保険の解約返戻金は、解約する時期や保険契約の内容によって金額が異なるため、実際の金額は、保険会社に問い合わせて正式な金額を尋ねる必要があります。

ただし、終身保険の解約返戻金は、基本的にこれまで支払ってきた保険料に比べて少ない場合がほとんどであり、いわゆる元本割れをしてしまう可能性が高くなっています。

一方で、当初、終身保険に加入する際の保険契約や保険契約の解約時期によっては、本ページの冒頭でもお伝えしましたように、これまで支払ってきた保険料よりも多くの解約返戻金を受け取れることがあります。

いわゆる、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用にあたりますが、次項では、この終身保険の解約返戻金を活用した資産運用の仕組みについてわかりやすく解説をしていきます。

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用とは

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用とは、これまで支払ってきた保険料よりも多くの解約返戻金を受け取ることによって保険差益を得ることを言います。

具体的なイメージについて、以下、オリックス生命が販売している「終身保険ライズ」を例として、同社WEBサイトのシミュレーションをしたものを基に解説を進めていきます。

なお、シミュレーション条件は、以下の通りです。

・31歳男性

・保険金額:300万円

・保険料払込期間:65歳まで

・保険料払込方法:月払い(1ヶ月あたりの保険料6,003円)

出典 オリックス生命 終身保険RISE[ライズ]保険料シミュレーションより筆者試算

シミュレーション条件より、31歳から65歳までの34年間で払込する終身保険の保険料は、総額で2,449,224円(6,003円×12ヶ月×34年)となります。

これに対して、保険料の払込が終了する65歳時に加入している終身保険を解約した場合、解約返戻金は2,649,960円です。

この結果、解約返戻金から払込保険料の総額を差し引いた200,736円が保険差益にあたり、これが、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用のイメージとなります。

ちなみに、一時払い終身保険を活用した資産運用方法もあるのですが、100万円単位のまとまったお金がなければならないことや主に、富裕層の相続税対策で活用される場合も多いため、本ページの紹介におきましては割愛をさせていただきます。

終身保険の解約返戻金は、保険契約によって金額が変化する

前項の解説より、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用のイメージはご理解できたと思います。

本ページの冒頭では、終身保険の解約返戻金は、加入する生命保険会社や保険契約の仕方によって金額が異なることをお伝えしておりますが、ここでは、前項のシミュレーション条件を基に、保険料の払込期間を変えた場合における保険料や解約返戻金、および保険差益の関係性について表にまとめて紹介しておきます。(31歳男性で保険金額300万円の場合)

保険料払込期間50歳まで60歳まで65歳まで70歳まで80歳まで
月額保険料10,392円6,933円6,003円5,337円4,506円
総支払保険料2,369,3762,412,6842,449,2242,497,7162,649,528
解約返戻金2,440,8602,581,1102,649,9602,717,4902,839,590
保険差益71,484円168,426円200,736円219,774円190,062円
返礼率103.0%106.9%108.1%108.7%107.1%

出典 オリックス生命 終身保険RISE[ライズ]保険料シミュレーションより筆者試算作成(令和元年12月現在)

上記表の結果を比較するとおわかりのように、保険契約がほんの少し違うだけで、拠出することになる保険料や解約返戻金も異なることが確認できます。

なお、解約返戻金は、保険料払込期間が満了した時に解約したものとしておりますが、保険料の払込期間が終了してから時間が経つほど解約返戻金の金額が増加していくのも大きなポイントです。

こちらにつきましては、保険会社や保険代理店から終身保険の保険設計書を作成してもらい、合わせて、解約返戻金の推移表も出してもらって確認するとよいでしょう。

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用の主なメリット

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用とは、どのようなことなのかご理解いただけたと思いますが、ここでは、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用の主なメリットについて解説をしていきます。

保険料払込期間まで保険契約を継続することで保険差益が得られる

終身保険の契約をする際、「保険料払込期間を終身払い以外」にして、保険料払込期間まで保険契約を継続することで保険差益を得られるメリットがあります。

たとえば、保険料払込期間を「65歳まで」で保険契約をした場合、65歳まで継続して保険料を拠出すれば保険差益が得られるといったイメージになります。

ちなみに、得られる保険差益は、保険会社や保険契約の内容によって変わることになりますが、たとえば、老後生活資金の一部として活用したり、介護費用やその他の費用に充てる資金として活用することもできます。

生命保険料控除を適用することができる

終身保険に加入しますと、その年の1月1日から12月31日までの1年間に支払った生命保険料は、生命保険料控除として所得税や住民税を少なくさせられるメリットが得られます。

ただし、終身保険のほかに、定期保険、収入保障保険、学資保険などの生命保険にも加入している場合、生命保険料控除の適用上限があることから、前述したメリットが必ずしも得られるわけではない点に注意が必要です。

なお、生命保険料控除の適用上限や詳しい解説につきましては、以下、当事務所が公開している記事から確認することができます。

年末調整や確定申告で適用できる生命保険料控除と一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の控除の違いについて

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用の主なデメリット

終身保険の解約返戻金を活用した主なデメリットは、以下の通りです。

保険料払込期間を終身払いにした場合、保険差益を得ることができない

終身保険の保険契約をする際、保険料払込期間を「終身払い」にした場合、保険差益を得ることができないデメリットが生じます。

そのため、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用を行えないことになりますので、保険契約をする際は確実に注意が必要なポイントと言えます。

保険料払込期間まで継続して保険料を拠出する必要がある

終身保険の解約返戻金で保険差益を得るためには、保険料払込期間まで継続して保険料を拠出する必要があります。

この時、たとえば、年齢が30歳で保険料払込期間が65歳までとした場合、35年間という長い期間に渡って保険料を継続して払い込まなければ保険差益を得られないことを意味します。

つまり、保険差益が生じるまでの時間が長くなる場合があり、資産運用として時間効率が非常に悪いデメリットがあります。

また、前述した保険契約において、途中で保険契約を解約した場合は、確実に元本割れ(損失)が生じてしまうほか、保険料の支払いが継続して滞ってしまいますと、最悪な場合、保険契約が解除されることになる点にも注意が必要です。

縛りが厳しいだけでなく、得られる保険差益も時間や多くの保険料を拠出した割に少ない点には細心の注意が必要だと言えるでしょう。

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用は、おすすめできるものなのか

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用の主なメリットとデメリットについて解説をしましたが、そもそも、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用はおすすめできるものであるのかどうか気になるユーザーの皆さまも多いと思います。

こちらはあくまでも筆者個人の主観によるものとなりますが、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用は残念ながらおすすめできるものではありません。

以下、おすすめできない筆者の理由をお伝えさせていただきます。

保険差益が生じるまでの時間が長くなる場合があり、資産運用として時間効率が非常に悪いため

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用をおすすめできない1つ目の理由は、すでに解説をさせていただきましたが、保険差益が生じるまでの時間が長くなる場合があり、資産運用として時間効率が非常に悪いためです。

たとえば、先に紹介したシミュレーションの例で考えてみましょう。

仮に、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用が目的で、31歳男性が保険金300万円の終身保険へ65歳まで保険料を払い込む保険契約を交わしたとします。

この時、31歳から65歳までの34年間は、長期の資産運用と考えることもできるわけですが、34年という長い期間に渡って「含み益」が発生しないことになります。

含み益とは、仮に、解約をした時に実際に利益が生じる概算金額のことを言い、このような長期の資産運用は、時間効率が悪すぎてとてもおすすめできるものではありません。

また、34年という長い年月をかけたのにも関わらず、保険差益は200,736円ですと、さすがに利益が小さすぎやしないでしょうか?

投資信託を積立して資産運用をした方が期待値が高いため

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用をおすすめできない2つ目の理由は、投資信託を積立して資産運用をした方が期待値が高いためです。

たとえば、毎月6,000円ずつ投資信託を積立投資して、30年間に渡ってローリスク・ローリターンで資産運用を継続したものとします。

出典 金融庁 資産運用シミュレーションを基に筆者試算

仮に、特定口座と呼ばれる税金が課税される証券口座で資産運用をしたとしても、実質の手取金額は税金を差し引きしても概算で3,225,021円です。

・終身保険の解約返戻金を活用した資産運用:34年間で手取金額が2,649,960

・投資信託を毎月6,000円ずつ30年間、ローリスク・ローリターンで積立投資した場合の資産運用:30年間で手取金額が3,225,021円(税引き後)

投資信託を積立投資した方が、より多くの資産形成ができていることがわかります。

加えて、投資信託は、いつでも保有している投資信託を解約して換価することができるため、いわば、含み益が生じた時に解約することも可能です。

つまり、その時々に応じて柔軟に対応できるため、終身保険の解約返戻金を活用した資産運用のように、含み損が長く発生する縛りがなく、かつ、得られる保険差益も小さいといったことを避けられる部分も大きなポイントと言えます。

ほぼ同じ金額を拠出しているだけなのですが、資産運用の仕方1つで最終的に得られるお金が大きく異なることがご理解いただけたと思います。

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おわりに

終身保険の解約返戻金を活用した資産運用は、子供の学資保険の代わりや将来の老後資金の足しといった意味で活用される時があったのは確かです。

しかしながら、令和の時代に入り、ますます、生命保険を活用した資産運用は、時代にそぐわないものとなっていると筆者は強く感じます。

終身保険をはじめとした生命保険は、そもそも本来の保障目的があるはずなのですが、その目的から外れた活用方法が目立っている現状もあります。

トラブルの多い外貨建て終身保険なども販売され、置かれている状況が、非常に厳しいのがあからさまにわかる保険業界ですが、私たちは自己の資産をしっかりと守るために知っておくべき保険知識というものがあります。

現状、終身保険をはじめとした生命保険を活用した資産運用は、本当におすすめすることはできませんので、そのような営業や勧誘に注意いただき、大切なお金をしっかりと守っていただくように、多くのユーザーの皆さまには努めていただきたいものと筆者は感じています。


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