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住宅ローン控除で住民税が少なくなるための条件とは?具体的な例をあげて独立系FPが解説します

本ページでは、住宅ローン控除で住民税が少なくなるための条件とは、どのような場合なのか、具体的な例をあげて独立系ファイナンシャルプランナー(FP)が解説していきます。

はじめに、住宅ローン控除は、一定の適用条件を満たすことによって1年間に納めるべき所得税を大幅に少なくする効果や多くの所得税還付金が受けられる税制度です。

ただし、住宅ローン控除は、前述した税効果だけではなく、場合によっては、翌年度から納めることになる住民税の軽減効果をもたらすことがあります。

そこで本ページでは、住宅ローン控除で住民税が少なくなるための条件について、具体的な例をあげながら解説を進めていきます。

なお、本ページは、令和元年11月現在の各種法令に準じた解説であることに留意いただくことを注意事項として申し添えておきます。

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住宅ローン控除で住民税が少なくなるとは?

はじめに、住宅ローン控除で住民税が少なくなるとは、そもそもどのようなことなのか、総務省のWEBサイトを基にポイントを解説します。

平成21年度税制改正において、住宅ローン減税制度について、所得税から控除しきれなかった額を個人住民税で税額控除することとされました。

平成21年から平成33年12月31日までの間に居住し、所得税の住宅ローン減税制度(住宅借入金等特別控除)を受けた方で、所得税において控除しきれなかった金額がある場合は、翌年度の個人住民税において住宅ローン控除が適用されます。

出典 総務省 新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。より引用

上記、総務省の解説をまとめますと、住宅ローン控除で住民税が少なくなるためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

1.平成21年から令和3年12月31日までに購入した住宅に住んでいること

2.住宅ローン控除(正式名称は、住宅借入金等特別控除)の適用を受けていること

3.所得税において、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があること

これら3つの条件とは、具体的にどのようなことなのか、次項で解説を進めていきます。

住宅ローン控除で住民税が少なくなるための3つの条件とは

住宅ローン控除で住民税が少なくなるためには、「平成21年から令和3年12月31日までに購入した住宅に住んでいること」、「住宅ローン控除(正式名称は、住宅借入金等特別控除)の適用を受けていること」、「所得税において、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があること」の3つをいずれも満たしている必要があります。

上記3つの条件とは、どのようなことなのか、以下、それぞれ個別に解説を進めます。

平成21年から令和3年12月31日までに購入した住宅に住んでいること

住宅ローン控除で住民税が少なくなるためには、平成21年から令和3年12月31日までに購入した住宅に住んでいることが必要です。

なお、ここで言う「購入した住宅」というのは、不動産業者などと売買契約を締結した日ではなく、金融機関などから住宅ローンの融資を受けて代金決済が完了し、不動産業者などから引き渡しを受けた住宅に12月31日(年末)まで住んでいる場合となります。

住宅ローン控除(正式名称は、住宅借入金等特別控除)の適用を受けていること

住宅ローン控除の適用を受けるためには、初めて住宅ローン控除の適用を受ける際、確定申告を必ずしなければなりません。

これに加え、住宅ローン控除の適用が受けられる条件をすべて満たしている必要があり、すでに、住宅ローン控除の適用を受けている人は、特殊な事情があった場合を除き、前項の条件および本項の条件について特別な問題がないと考えられます。

一方、これから住宅購入をする人で、住宅ローン控除の適用を受けたことがない人や、住宅購入をすでに行い、初めて住宅ローン控除の適用を受ける予定がある人は、本ページを引き続き読み進める前に、以下、当事務所が公開している住宅ローン控除の記事内容を確認されることを強くおすすめ致します。

この理由として、そもそも住宅ローン控除の概要や仕組みがわからないと、本ページで解説をする住宅ローン控除で住民税が少なくなるための条件を、そもそも満たせていないことも場合によっては考えられるためです。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは?制度の概要と適用条件をFPが解説

所得税において、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があること

本ページのメインであり、住宅ローン控除で住民税が少なくなるための答えにもあたりますが、所得税において、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額がなければ、住宅ローン控除で住民税を少なくすることはできません。

ここだけを見ますと、何が何だかさっぱり意味がわかりませんので、以下、具体例を紹介しながら住宅ローン控除で住民税を少なくさせる仕組みについて解説をします。

住宅ローン控除と住民税を少なくさせる仕組み

出典 総務省 新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。<参考>住宅ローン控除適用のイメージより引用

上記図の「控除を受ける方」とは、住宅ローン控除の適用を受ける私たち個人を指しています。

すでに解説をしておりますように、住宅ローン控除の適用を受けるためには、最初の年は必ず確定申告をしなければなりません。

その上で、会社員や公務員などの給与所得者の人は、住宅ローン控除の適用を受ける2年目以降、勤務先にあたる「年末調整を行う源泉徴収義務者」に対して「①年末調整で住宅ローン減税制度の適用を申告」します。

一方、自営業者やフリーランスなど、年末調整ではなく確定申告で1年間の税金精算手続きが終了する人は、住宅ローン控除の適用を受ける2年目以降も「①確定申告で住宅ローン減税制度の適用を申告」します。

つまり、人によって、住宅ローン控除の適用の仕方は2年目以降、異なることになります。

ただし、いずれの方法であったとしましても、申告をした住宅ローン控除の情報は、②の給与支払報告書または確定申告書を通じてお住いの市区町村に伝達されることになり、この情報を基に、市区町村は、所得税において、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があった場合、③翌年度の個人住民税から住宅ローン控除を適用するといった仕組みになっています。

では、住宅ローン控除で住民税が少なる場合とは、どのような場合なのでしょう?

住宅ローン控除で住民税を少なくさせる具体例

出典 総務省 新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。<参考>年末調整を行った方の住宅ローン控除額の算出例より引用

上記図(給与支払報告書)を見ますと、居住開始年月日が、平成21年5月12日、住宅ローン控除可能額が225,000円、住宅ローン控除適用前の前年の所得税額が190,000円であることがわかります。

すでに解説をしておりますが、再度、住宅ローン控除で住民税が少なくなるための条件を確認します。

1.平成21年から令和3年12月31日までに購入した住宅に住んでいること

2.住宅ローン控除(正式名称は、住宅借入金等特別控除)の適用を受けていること

3.所得税において、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があること

居住開始年月日が、平成21年5月12日でありますから「1」の条件は満たしており、給与支払報告書に住宅ローン控除の情報が記載されているということは、少なくとも初年度に確定申告を行い住宅ローン控除の適用を受けていることがわかるため、「2」の条件も満たしていることが確認できます。

後は、「3」の条件を満たすことで、住宅ローン控除で住民税を少なくさせることができるわけですが、住宅ローン控除適用前の前年の所得税額が190,000円です。

住宅ローン控除適用前の前年の所得税額が190,000円ということは、この人が、1月1日から12月31日までの1年間で給与や賞与から源泉徴収された所得税が合計で190,000円あるということを意味しています。

この時、住宅ローン控除可能額が225,000円あるため、まずは、1年間で源泉徴収された所得税190,000円から直接差し引きします。

この結果、この人は、1年間で納めた所得税190,000円がすべて還付される形となり、合わせて、35,000円(225,000円-190,000円)が、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額となります。

つまり、今回の具体例では、35,000円が翌年度の個人住民税から住宅ローン控除を適用して直接控除されることになります。(所得税が還付され、納めるべき住民税も少なくなる)

ちなみに、今回の具体例のように、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があったとしても、住民税が控除される金額には上限が設けられています。

そのため、次項では、住宅ローン控除で住民税を少なくさせることができる上限金額について触れておきます。

住宅ローン控除で住民税を少なくさせることができる金額には上限が設けられている

住宅ローン控除で住民税を少なくさせることができる金額には上限が設けられており、まずは、総務省のWEBサイトから解説を一部引用して紹介します。

前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円を限度)を超えた場合には、控除額は97,500円になります。
ただし、居住年が平成26年から令和3年12月31日までであって、当該住宅の取得等が特定取得(※)である場合には、上記の式で算出された控除額が、「前年分の所得税の課税総所得金額等の7%(136,500円を限度)」を超えた場合には、控除額は136,500円になります。
※ 特定取得とは、住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等(消費税額及び地方消費税額の合計額)が、8%又は10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます。

出典 総務省 新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。の解説を基に筆者修正加筆

ポイントを解説しますと、住宅ローン控除で住民税を少なくさせることができる金額の上限は、原則として97,500円です。

ただし、住宅の引き渡しを受けて居住している年が、平成26年から令和3年12月31日までの場合、136,500円が住宅ローン控除で住民税を少なくさせることができる金額の上限となります。

ちなみに、これから住宅ローンを組んで住宅を購入される人は、消費税率が10%となり、特定取得に該当するため、上限金額を押さえておくことで足りるでしょう。

住宅ローン控除の適用を受けた場合、住民税を少なくさせるための他の手続きは必要ない

住宅ローン控除は、初めて適用を受ける場合に確定申告を行い、2年目以降に住宅ローン控除の適用を受ける場合は、人によって適用の仕方が異なることをすでに解説しております。

この時、仮に、住宅ローン控除で控除しきれなかった金額があったとしても、別途、何かしらの手続きは必要なく、お住いの市区町村が、給与支払報告書や確定申告書の情報を基に翌年度の個人住民税を賦課決定する際、控除しきれなかった住宅ローン控除を差し引いて住民税額が計算されることになります。

ちなみに、賦課決定された住民税の金額が、控除しきれなかった住宅ローン控除をしっかりと反映されているかどうかを確認するには、「住民税課税決定通知書(特別徴収税額の通知書)」で確認することができます。

会社員や公務員などの給与所得者の場合、住民税課税決定通知書(特別徴収税額の通知書)は、毎年6月になりますと、勤務先を通じて交付されることになりますが、筆者個人の実務経験上、事務手続きにだらしがない会社や担当者の知識が乏しい場合、本来、従業員に渡されるべき住民税課税決定通知書(特別徴収税額の通知書)が渡されていないことも多く見受けられます。

そのため、仮に、同書類が交付されない場合、6月や7月などに勤務先の担当者へ住民税課税決定通知書(特別徴収税額の通知書)がないかどうか確認してみるのが望ましいでしょう。

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おわりに

住宅ローン控除で住民税が少なくなるための条件について、具体的な例をあげて解説をさせていただきました。

住宅ローン控除は、1年間に納めるべき所得税を大幅に少なくする効果や多くの所得税還付金が受けられる税制度であり、場合によっては、住民税まで少なくすることができる効果も期待できます。

ただし、住宅ローン控除がそもそも適用できなければ本ページの情報は無意味なものとなってしまうほか、住宅ローンの組み方や借入条件などによっても、住宅ローン控除の金額に直接影響を及ぼすことは言うまでもありません。

住宅購入や住宅ローンを考える上で、それらの部分だけを解決できれば良いといったことではなく、税制度や将来に及ぼすお金の影響について考えることができれば、本ページを読み進めてくれたユーザーの皆さんにとって、さらに得策になることは確かと言えるでしょう。

お金のことを考えるファイナンシャルプランニングというのは、ご自身が抱えている目の前にある課題だけを解決するのではなく、他の分野のお金のことも考えながら総合的に解決策を見つけることでより効果をもたらします。

中々、気が付きにくいことではありますが、お金のことについて考え、賢い人と残念な人の差には、このような考え方をもっているかどうかも関係しているものと筆者は感じています。


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