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追記 お金のあるなしに関係なく発生する相続の問題点

2016.あきたプラチナ世代博におきまして、住友不動産様のセミナーの内容を一部公開させていただきます。

このセミナーでは、中高齢の年代だけではなく、子どもや孫世代といった年代にも関係することにおもな焦点をおいて構成させていただきまして、お金のあるなしに関係なく発生する相続の問題点についてお話させていただきました。

セミナー内容 女優Aから学ぶ、相続の落とし穴

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一部、週刊誌によると、女優Aさんの息子で長男のSは、平成28年7月に国家公務員共済組合から訴訟を起こされています。

「医療費等請求事件」

2013年にAさんが大病で病院へ入院し、2014年1月に亡くなっています。

訴訟内容は、この期間に入院した入院費をほとんど支払っていないというものです。部屋は個室で、1日5万円、未払金はなんと829万円もあるようです。

Aさんが亡くなった時点で未払分の医療費は、Aさんの生命保険150万円で支払った分もあったようですが、完済には程遠く、病院側は、長男であるSさんと次男の2人に未払分を請求しています。

病院側からは、Aさんが亡くなった後に病院から未払医療費の催促があったそうですが、Sさんの主張では、Aさんの事務所が入院させたので事務所が支払うべきものであり、すでに入院中の医療費は支払ったと思っていた、とコメントしています。

Aさんの長男であるSさんも俳優ですが、平成28年春に事務所を辞めています。事務所をやめたことで、生活もままならない程に行き詰まっているようで、実際のところ妻と離婚し、現在は犬とアパートで暮らしているそうです。

そのため、アパートの家賃を支払うことも困難で、ときどきアルバイトに出かけては生活しているため、Aさんのお墓も作ることができないといいます。

ところで、大女優といわれたAさんの遺産はどのくらいあったのでしょう?

大女優といわれたAさんの遺産は、なんとたったの200万円しかなかったそうで、葬儀費用に回したことで、お金はまったく残らなかったようです。

また、Aさんの遺品である着物は高価なものが多かったようですが、Aさんの死後において値が付かず、残された絵画や食器類も同じように値が付かないようです。

他人事であるとはいえ、はたして、Aさんの相続人である2人の子どもは、この未払いの医療費829万円を支払わなければならないのでしょうか?現在の法律上の解釈とはいかに?

お金のあるなしに関わらず発生する相続の問題点

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さきほど紹介した事例は、お金のあるなしに関わらず発生する相続の問題点にあたり、Sさんは、親であるAさんが支払うべき多額の医療費を負いたくないといったことが伺えます。

これは、私たちが同じような立場に立たされた時に誰もが当然に思うことでありますが、この相続の問題を解決するためには、後述する3つの相続方法についてざっくりでもよいので知っておく必要があります。

 

1つ目の相続方法 単純承認(たんじゅんしょうにん)

 

単純承認とは、亡くなった人の財産をすべて引き継ぐ相続方法です。

Sさんの例でいきますと、Aさんの葬式費用に使った200万円の預貯金も829万円の未払い医療費もどちらも引き継ぐ相続方法になります。

 

2つ目の相続方法 限定承認(げんていしょうにん)

 

限定承認とは、亡くなった人のプラスの財産とマイナスの財産を差引し、プラスの財産が多かった場合は、差し引いたプラスの分を相続し、マイナスの方が多かった場合はプラスの分も含めて相続しないといった相続方法です。

Sさんが仮に限定承認という相続方法を選んでいた場合、Aさんのプラスの財産は200万円、マイナスの財産は829万円であることから、マイナスの財産が多いためプラスの財産である200万円も含めて相続しないといったイメージになります。

 

3つ目の相続方法 相続放棄(そうぞくほうき)

 

相続放棄とは、亡くなった人の財産をすべて相続しない相続方法です。

Sさんの例でいきますと、Aさんのプラスの財産である200万円もマイナスの財産である829万円も相続しないといったイメージになります。

 

相続方法を選ぶ上でルールが法律で定められている

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ケース・バイ・ケースですが、これまで紹介しました内容からSさんは「限定承認」か「相続放棄」をすれば大きな問題にならなくても済むと気が付くことができます。

しかし、これらの相続方法を選択する場合は、実はルールがあり「相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申述しなければならない」ことが民法で規定されています。

Sさんの立場で「相続の開始を知ったとき」とは、Aさんが亡くなった日のことを指します。

そして、民法では、この3ヶ月以内に限定承認または相続放棄の申述がなかった場合は、「単純承認したものとみなす」ことも規定しています。

このようなことから、Sさんは事例のように「事務所が勝手にAさんを1日5万円の個室に入れて、さらにすでに病院代を事務所が支払っていると思った」と言って医療費の支払いを免れようと思っているのかもしれませんが、このような都合の良い言い分が、通じることはないと考えることができます。

「すみませんで済んだら警察はいらない」なんてよく聞く話ですが「わからなかったから払いませんで済んだら法律という名のルールなんていらない」ですよね。

Sさんのコメントを読む限りでは、限定承認および相続放棄の申述をしていないと思われることから、結果として、SさんとAさんの次男の2人は未払い医療費829万円の負担をする必要があると思われます。

相続問題で実際にプランニングを行った事例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お金のあるなしに関わらず相続問題で懸念される問題は、「後に大きな借金が発覚すること」です。

先に解説しましたように、相続する3つの方法の内、限定承認と相続放棄につきましては、期限が定められているため、期限を過ぎてからの相続は、すべて単純承認したものとされます。

したがいまして、期限を過ぎてから故人が大きな借金を抱えていることが判明した場合、その借金についても法定相続人が相続で引き継がなければならないことになります。

多額の借金であれば、当然に自分達だけではなく、一緒にいる家族もその影響を大きく受けることになるため、今後の人生に大きく左右することになるのは言うまでもありません。

このような事例で、当事務所がお引き受けしたものに、総額1億5000万円の負債を単純承認で抱えなければならなくなった相続事例があります。

これは、故人が生前に投資を広げ過ぎたことが原因でしたが、相続をする側としても最低限の確認をしなかったことがこのような事態を招く結果となりました。

では、私たちがいずれは発生する相続問題に対応するためには、どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか?

相続が発生したら、早急に故人の「個人信用情報を確認」しましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親が亡くなってしまった場合など、相続が発生した場合は、早急に故人の「個人信用情報」を取得することを強くおすすめ致します。

これを取得することによって、故人がどこから、どの程度の借入金を抱えているのか確認することができるため、最悪な場合、相続放棄を行うことで多額の借金を抱えることを避けられます。

個人信用情報は、個人信用情報機関とされる「CIC」「JICC」のほか「全銀協」の3つから取得すれば問題ありませんが、CICとJICCは、双方で情報を共有する仕組みとなっているため、いずれか一方から取得することで足ります。

もしも、不安な場合は、すべてから取得することが間違いないでしょう。

書類の見方が分からない場合は、専門家等に直接書類を持参し尋ねてみるべきでしょう。

早急かつ確実な対策が、自分と家族を万が一の相続問題から助けることになるのをあらかじめ知っておくべきだと考えます。

決して、うちの親父は大丈夫、うちのおふくろは大丈夫といった楽観的な固定観念に縛られないことです。

故人が亡くなって3ヶ月が経過した後の相続は、単純承認となり、すべての相続財産を引き継がなくてはなりません。もしも、多額の借金が発覚したら・・・。後悔は先に立たないのです。

まとめ

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女優Aから学ぶ、相続の落とし穴は、自分にとってお金のあるなしに関わらず重要だと感じられたでしょうか?

仮に自分の両親に多額の借金があったとして、限定承認や相続放棄の申述(書類の届出)をしなければ、単純承認とみなされるため、結果として多額の借金を抱えることになってしまいます。

ともすれば、自分だけでなく配偶者や子どもの人生までもくるわせてしまう危険性が含んでいることを決して忘れてはなりません。

一昔前は、相続はお金持ちだけの問題などといわれる時代でしたが、時代が変化する中で、もうそのようなことをいっている時代ではないことを感じていただきたいと思っております。

あくまでも自分と家族を守っていくための情報と対策は、自分自身で確保する時代になっていると個人的に感じます。

そして、いつか自分が相続人になったときにおいてわからない場合や不安な場合は、弁護士やFPへ迷わず相談してみることをおすすめします。

追記 セミナー受講者様からの質問

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最後にセミナーを受講してくれました若い夫婦の方から、相続における生命保険について「いくらぐらいならば相続税がかからないのか」といった質問がありましたので、女優Aさんの例でご紹介させていただきます。

相続税における生命保険金には、一定の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が設けられており、女優Aさんの場合は、Sさんと次男が法定相続人になると推定できます。

そのため、500万円×2人=1,000万円までの死亡保険金は、少なくとも相続税がかかる対象になりません。相続税について心配な人や贈与が絡んでいるなど特殊な場合は、税理士へ相談してみることをおすすめします。


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