本ページでは、デジタル遺品にかかる相続対策について独立系FPの立場で改めて感じたことを綴っています。
ちなみに、本ページは、当事務所がデジタル遺品にかかる記事執筆を請け負って感じたことを令和4年1月15日に綴って公開しておりました。
しかし、令和4年7月8日に、安倍晋三元首相が予期せぬ出来事によってお亡くなりになりました。
私は、この訃報を見聞きしたとき、人生において突然の相続開始を経験してしまう可能性があることを改めて感じました。
そして、改めてデジタル遺品にかかる相続対策について、自分の場合はどうなのか?独立系FPとして考えてみてもらいたいとも思いました。
このような理由から、改めて本ページを加筆・修正し公開しております。
目次
そもそも【デジタル遺品】とは何?
まず、「デジタル遺品」には明確な定義がありません。
これを前置きした上で、デジタル遺品とは、死亡した人のスマートフォン・パソコン・タブレット端末などに保存されている情報のことをいいます。
また、死亡した人のネット銀行やネット証券会社を通じて取引している資産をはじめ、FX口座の預託証拠金など、インターネットを通じてデジタル化されている資産やSNSアカウントなども「デジタル遺品」に含まれます。
これらのことから、デジタル遺品というのは、広い分野でさまざまなあることがわかります。
便利なデジタル機器だからこその問題点
本ブログの冒頭でもお伝えしましたように、ブログ作成時現在においてスマートフォン・パソコン・タブレット端末などのデジタル機器があたりまえのように活用され、ありふれています。
そして、若年者から高齢者まで、年代を問わず何かしらのデジタル機器を個人単位で所有していることも決して少なくありません
ただ、これらのデジタル機器を使用するためには、最初に入力を求められるパスワードやパスコードを正しく入力しなければなりません。
ごくあたりまえのことを赤字で記述させていただきましたが、みなさんは家族それぞれが所有するデジタル機器に関するパスワードやパスコードを知っているでしょうか?
また、自分以外の家族が所有するデジタル機器に関するパスワードやパスコードを知る術や備えはしておられるでしょうか?
もしも、突然の事故や予想しえない突然の病気などで、家族と死に別れてしまうことになり、その死亡した家族が所有するデジタル機器を開くことができなかった場合どうでしょう?
家族が知らない「デジタル遺品」にかかる情報が、デジタル機器に保存されていたら?
プラスの財産であればまだしも、巨額のマイナス財産(借金をはじめとした負債)がデジタル遺品で、かつ、デジタル機器を開かないと知ることができなかったとしたら?
不倫して隠し子がいたことをデジタル機器で知ってしまったら?(かなり薄い確率だと思いますが、絶対ないとはいえないですよね?)
デジタル機器の中には、パスワードやパスコードを何度も間違えると「強制的に内部のデータが初期化される(iPhoneは、10回で初期化)」ものもあるため、下手に手をかけることは、時として取り返しのつかないことになり兼ねません。
参考:ニッセイビジネスインサイト デジタル遺品とは? 安全に生前整理をしてトラブル回避する方法
このような事情があるからこそ、デジタル遺品の所在を明確にしておくことは、現代人にとって極めて重要なことになるのではないか?と感じたわけです。
デジタル遺品にかかる相続対策についてシンプルに考えてみる
家族のデジタル機器にかかるパスワードやパスコードを把握できないことは相続の際、とても面倒な問題になることがあります。
そのため、デジタル遺品にかかる相続対策についてシンプルに考えることがとても大切だと私は思います。
たとえば、以下のような対策方法が考えられます。
1.デジタル機器にかかるパスワードやパスコードを記したメモを保管しておく
2.家族間(推定相続人)でデジタル機器にかかるパスワードやパスコードの情報を共有する
3.エンディングノートにデジタル機器にかかるパスワードやパスコードを記しておく
4.作成した遺言書にデジタル機器にかかるパスワードやパスコードを記しておく など
上記4つのシンプルな対策方法は、その人や家族環境によって望ましい方法が全く異なるはずです。
そのため、自分たちにとって最も望ましい方法を選択して対策をしておくことがとても大切なのではないでしょうか?
ちなみに、私の場合、上記1の方法で別途重要書類があるところへ保管しており、かつ、その情報を家族へ伝えております。
相続発生時にデジタル遺品の所在を知ってもらうことが重要
上記の吹き出しにも記載させていただきましたが、やましいことや家族に知られたくない情報がある場合は、別の対策方法を考える必要があると思います。
その一方で、私のようにそのような問題がない場合は、家族間で情報共有し、かつ、デジタル遺品の所在がわかりやすい状態にしておくことがとても大切です。
実際、私の場合ですと、デジタル遺品について、ネット銀行やネット証券に口座を開設しているほか、FX口座も開設しており、それぞれすべてに資産があります。
ただし、これらについて家族が知っているだけでなく、自身の事業にかかる会計帳簿で管理もしているため、デジタル遺品の把握にかかるもれはまずもってないと思っています。
加えて日常会話においても話をしているため、いざ相続が発生したときに気が付くことができなかったということはまずもってないでしょう。
相続方法の選択は【3ヶ月以内】が極めて重要になるからこそ
民法では、相続の方法について「単純承認」「限定承認」「相続放棄」があるとしており、相続人は、この3つの方法から相続方法を選択しなければなりません。
このとき、限定承認および相続放棄は、「相続開始を知ったときから3ヶ月以内に行わなければならない」とされています。
つまり、3ヶ月以内に必要な手続きを取らなかった場合、相続人は死亡した人のプラスの財産およびマイナスの財産をいずれも引き継ぐ「単純承認」をしたものとみなされます。
デジタル遺品を把握することができず、時間や手間がかかり、3ヶ月を過ぎてからデジタル遺品に相続をしたくないマイナスの財産があった場合、それを引き継がなくてはなりません。
決して不安をあおったり脅しをかけているわけではなく、これが現実であり、法律に則ったルールであるからこそ、デジタル遺品にかかる把握や相続対策というのは重要だといえるのではないでしょうか?
ちなみに、相続放棄について、過去に当方が作成した記事が当事務所内にありますので、相続放棄について気になる人は合わせて読み進めてみるのも良いと思います。
おわりに
デジタル機器がありふれているからこそ、デジタル遺品にかかる相続対策は、広く多くの人にとってとても重要なことだと私は改めて感じます。
本ブログを最後まで読み進めていただきましたユーザーの皆さんにとって、適した対策方法というのはそれぞれ異なるものと思います。
とはいえ、本ブログを読み進めた後に、自分たち家族の問題でもあり何かしらの対策をしておこうと感じていただけたらとも思っています。