本ページでは、国の教育ローンである日本政策金融公庫の教育ローンを無理なく借入して返済する方法や繰り上げ返済の考え方を紹介します。
はじめに、本ページは、2018年11月3日に初めて公開したものを2022年8月16日に大幅に加筆・修正しております。
また、本ページは、以下、当事務所が公開している関連記事の2ページ目としての位置づけがあります。
そのため、上記ページ(1ページ目)を読んでいない人は、先に関連記事を読み進めてからこちらのページを読み進めてもらうことをおすすめします。
目次
- 1 【あたりまえを再確認】教育ローンを無理なく借入して返済するために必要な考え方
- 2 【借入条件を再確認】日本政策金融公庫の教育ローンにかかる借入条件
- 3 【簡単なシミュレーションから】融資限度額まで最長で借入するとどうなるのか?
- 4 【どのような返済を望んでいるか?】シミュレーション結果から考えなければならないこと
- 5 【ここまでのまとめ】借入条件によって返済金額は大きく変化する
- 6 【対策方法】日本政策金融公庫の教育ローンを無理なく借入して返済する方法
- 7 【キャッシュフローが重要】教育ローンの返済計画を立てるために大切なこと
- 8 【おわりに】教育ローンを無理なく借入して返済する方法とファイナンシャルプランニングを考える
【あたりまえを再確認】教育ローンを無理なく借入して返済するために必要な考え方
まずは、あたりまえのことを再確認しておきましょう。
教育ローンを無理なく借入して返済するためには、「家計の収入と支出のバランス」をあらかじめ知っておかなければなりません。
これは、毎月の教育ローンにかかる返済が、日常生活に支障をきたすような返済金額になってはならないことを意味します。
また、そのような返済金額になるような借入をしてはならないともいえます。
とはいえ、多少無理をしてでも多くの教育ローンを借入しなければならない人もいるでしょう。
このような場合、教育ローンの元金返済据置制度を使いながら無理のない返済ができるように、あらかじめ返済計画や対策をとっておかなければなりません。
【借入条件を再確認】日本政策金融公庫の教育ローンにかかる借入条件
日本政策金融公庫の教育ローンを無理なく借入して返済する方法を知るためには、借入条件を必ず確認しなければなりません。
この内容は、冒頭でお伝えした1ページ目の関連記事にて紹介をしています。
しかし、都度1ページ目を確認するのは面倒ですので、返済シミュレーションに必要な日本政策金融公庫の教育ローンにかかる借入条件を簡単に紹介しておきます。
・融資限度額:子ども1人あたり350万円まで(条件を満たすことで450万円まで)
・金利:固定金利1.80%
・保証:保証料がかかるものと保証料がかからないものを選ぶことができる
・返済期間:最長18年間(自分で返済期間を自由に設定できる)
・返済方法:元利均等返済(毎月の返済金額が同じ)
・ボーナス払い:行うことができる
・元金返済措置:使うことができる(子どもの在学中は、支払利息のみを支払う)
・繰り上げ返済:行うことができる
上記の借入条件を基に日本政策金融公庫の教育ローンを無理なく借入して返済する方法を考えてみましょう。
【簡単なシミュレーションから】融資限度額まで最長で借入するとどうなるのか?
まずは、日本政策金融公庫の教育ローンを融資限度額である350万円まで借入し、最長返済期間である18年間で返済するシミュレーションを紹介します。
ボーナス払いやその他の項目を一切考慮せずにシミュレーションした結果は、以下の通りです。
毎月の返済金額は「19,100円」で、1年間で返済する合計金額は「228,700円」となりました。
なお、保証料について、教育資金融資保証基金による保証を利用した場合、保証料194,120円は350万円の借入資金から一括して差し引かれます。
保証料は、無駄なロスとなるお金ですから、連帯保証人を立てる方法を選択し保証料がかからないようにする方が無駄なお金を負担せずに済みます。
【どのような返済を望んでいるか?】シミュレーション結果から考えなければならないこと
満額の借入を最長返済期間で行ったシミュレーションを紹介しました。
まず、この結果を見て、自分自身はどのような返済を望んでいるのか?再確認しなければなりません。
たとえば、毎月19,100円の返済を18年間に渡って行うことに対してどのように感じたのか?
毎月の返済をもう少し減らしたいのか?
もっと早く完済するようにしたいのか?
人によって、感じ方・考え方は異なります。
【毎月の返済金額を少なくしたい】借入金額を減らすかボーナス払いを活用する
満額の借入を最長返済期間で行ったシミュレーションを見て、毎月の返済金額を少なくしたいと感じた人もおられると思います。
このニーズを満たすためには、借入金額を減らすかボーナス払いを活用しなければなりません。
ちなみに、シミュレーションと同じ借入条件で、借入金額を200万円に変更した場合の結果は、以下の通りです。
借入金額を減らすことによって、毎月の返済金額が少なくなっていることを確認できます。
なお、350万円(満額)を借入し18年間(最長)で返済する条件を変えず、ボーナス払い(ボーナス返済割合は30%)ありを活用した場合の結果は、以下の通りです。
本来、毎月の返済金額19,100円だったものが、ボーナス払いを活用したことによって、毎月の返済金額が13,400円と少なくなっていることを確認できます。
しかし、ボーナス月(夏季・冬季)の返済額は47,500円と多く返済をしなければなりません。
したがって、ボーナス払いを活用する場合、ボーナス払いをしたとしても家計に大きな影響を与えないことをあらかじめ確認しておく必要があります。
【もっと早く完済したい】毎月の返済金額は増加するため無理ではないか再確認
満額の借入を最長返済期間で行ったシミュレーションを見て、もっと早く返済を終わらせたいと感じた人もおられると思います。
このニーズを満たすためには、返済期間を短く設定します。
ただし、毎月の返済金額は増加するため、無理のない返済金額になっているかどうか再確認することが大切です。
ちなみに、シミュレーションと同じ借入条件で、返済期間を10年に変更した場合の結果は、以下の通りです。
借入金額350万円、返済期間を10年間とした場合、毎月の返済金額は32,200円となりました。
この金額を10年に渡って返済していくことに対して、家計に問題がないかどうか?を再確認しておかなければなりません。
【ここまでのまとめ】借入条件によって返済金額は大きく変化する
対策方法を紹介する前にここまでをまとめます。
まず、さまざまなシミュレーション結果を紹介し、借入条件を変更することで毎月の返済金額は大きく変化することを確認できました。
無理のない返済というのは、自分自身にとって毎月の返済が苦しくない返済金額でなければなりません。
その返済金額を満たすためには、どのような借入条件にする必要があるのか?さまざまなシミュレーションを実行して探すことが大切です。
【対策方法】日本政策金融公庫の教育ローンを無理なく借入して返済する方法
ここからは、日本政策金融公庫の教育ローンを無理なく借入して返済する方法を紹介します。
まず、シンプルで簡単な方法として「元金措置」があげられます。
在学期間中は、元金を据え置いて利息のみのお支払いとすることもできますので、ゆとりを持ったご返済が可能です。
出典:日本政策金融公庫 金利・ご返済方法 返済方法より引用
たとえば、4年生大学へ進学している子どもがいるとします。
このとき、借入金額350万円、返済期間18年間で、元金措置をした場合のシミュレーション結果は以下の通りです。
元金措置を利用すると、在学期間中の4年間は、毎月5,300円の利息の支払いのみで済みます。
ただし、4年間が経過して卒業した後の返済は、毎月23,600円の返済を14年間(18年-4年)でしなければなりません。
4年間の猶予がある分、無理のない返済がしやすいといえます。
その一方、4年が経過した後の返済金額が多くなるため、猶予期間中に家計の余ったお金を寄せておくことが大切になります。
【繰り上げ返済も考慮】投資信託を活用した積立投資でまとまったお金を準備する
元金措置によって、在学中の毎月返済が少ない優位性を活かすには、投資信託を活用した積立投資をしてみるのも良いでしょう。
たとえば、借入した教育ローンを後々一括で繰り上げ返済することを目標として、毎月1万円ずつ投資信託を積立で買付するものとします。
このとき、12年後に期待できる概算資産形成金額は、以下のようになります。(想定利回り5%で計算)
毎月1万円ずつ投資信託を積立した結果、12年後の概算資産形成金額は約196万円です。
仮に、元金措置を利用したとき、措置期間4年間、返済経過期間8年後のローン残債は、約160万円です。(シミュレーターによって多少のばらつきがあります)
2つの画像を見比べると、12年後に概算資産形成金額が教育ローンの残債を上回る結果となります。
つまり、今回の例では、本来ならば猶予期間も含めて18年間で完済しなければならない教育ローンを結果として12年間ですべて完済できることになります。
繰り上げ返済を実行することによって、支払利息の軽減効果も得られ、かつ、家計の支出も抑えられる二重のメリットが得られます。
日本政策金融公庫の教育ローンにかかる繰り上げ返済について
日本政策金融公庫のWEBサイトでは、教育ローンの繰り上げ返済の質問に対して、以下のように回答しています。
Q6-7 返済期間中にお金の余裕ができた場合は、繰上返済をすることはできますか。
繰上返済していただくことは可能です。振込手数料につきましてはお客さまにご負担していただくことになりますが、繰上返済に伴う手数料などは一切かかりません。
出典:日本政策金融公庫 よくあるご質問 6. ご返済に関すること Q6-7 返済期間中にお金の余裕ができた場合は、繰上返済をすることはできますか。より引用
日本政策金融公庫の教育ローンは、繰り上げ返済にかかる手数料がかかりません。
そのため、民間の金融機関が取り扱っている教育ローンに比べて、無駄な手数料を支払わなくてよいメリットがあります。
【キャッシュフローが重要】教育ローンの返済計画を立てるために大切なこと
すでにお伝えしたことを改めてお伝えします。
これは、家計の収入と支出(お金の流れ)である「キャッシュフロー」を知っていなければならないことを意味します。
ざっくりでも結構ですので、手取収入から毎月の支出を差し引いたとき、毎月どのくらいのお金が手元に余るのか?明確にしてください。
そして、その余ったお金を賢く運用したり貯蓄したりすることで、より、教育ローンの返済を無理なく行うことができます。
貯蓄も大切ですが長い時間をかけて大きな資産を築くためには資産運用もバランスよく行うことがとても大切です。
【おわりに】教育ローンを無理なく借入して返済する方法とファイナンシャルプランニングを考える
教育ローンは、借入条件によって返済金額が大きく変わります。
そのため、無理のない借入と返済を実現するためには、家計のキャッシュフローを再確認し、繰り上げ返済も考慮したマネープランが必要になります。
また、すべての世帯によって、収入と支出のバランスが異なるため、その人に合った返済計画やマネープランが異なることはいうまでもありません。
このことから、本ページで紹介した無理のない借入と返済方法は、すべての人に合致しているとはいえない部分も確かにあります。
しかしながら、家計のお金を再確認し、貯蓄と投資をバランスよく考慮したマネープランは、教育ローンを早く完済する結果を得られることも確かです。
長い期間に渡って教育ローンの債務を抱えることは、金額の多少に関わらずゆとりを持った生活にはほど遠いと思います。
さまざまなシミュレーターや情報を基にご自身でマネープランを考えてみることも大切です。
ただし、より確実なマネープランと無理のない教育ローンの返済を実行していきたい場合は、当事務所も含め、専門家のアドバイスや提案を参考にしてみることも一策と言えるのではないでしょうか?
なお、子どもの進学において、教育ローンの利用だけでなく、奨学金の申し込みを検討している人もおられると思います。
奨学金の返還は、子どもに返還義務があるものの、奨学金の申し込み前にあらかじめ親子で話し合っておくべきことがあります。
そのため、奨学金を申し込みする予定がある人は、上記関連記事も合わせて読み進めてみることを強くおすすめします。(具体的な金額を知れるきっかけになります)
内容がよかったと思った人は、SNSでのシェアや当事務所フェイスブックのフォローをいただければ励みになります。
ご相談も随時受付しておりますので、ご検討をよろしくお願いいたします。